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ほっとひと息、こころにビタミン vol.10

精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者の大野裕先生が「こころ」の健康についてわかりやすく解説します。

【コラム執筆】
日本認知療法・認知行動療法学会理事長
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表
精神科医 大野 裕

自分を取り戻し先を見据える

新年を迎えました。気持ちを新たに仕事や勉強など、自分が大事にしていることに取り組もうと考えている人は多いでしょう。新年は、気持ちを切り替えて新しい自分として再出発する良い機会です。

私たちは、忙しくしていると、毎日の生活に追われて自分のしていることを振り返る余裕がなくなってしまうことがよくあります。普通に生活していても次々と問題に直面します。それは仕事、学校、家庭、友人関係、そして地域のことなど実にさまざまです。

それも、すぐに解決できることばかりではありません。なかなか解決できない問題に取り組んでいると、そこに関心が集中してしまいます。何とかしなくては、と考えていると全体が見えなくなります。そうすると、目の前の問題にとらわれてしまって、自分にとって大切なものを見失ってしまいます。

そうしたときに何日かまとまった休みがあると自分を取り戻すことができます。冷静に自分の抱えている問題に目を向けて、対応を考えることもできるようになります。正月休みは、このように自分を取り戻すだけでなく、自分にとって何が大事かを再確認できる貴重な機会でもあります。

「一年の計は元旦にあり」と言われますが、その言葉に象徴されるような年が改まるという雰囲気が、私たちを自然とそのような気持ちにさせるのでしょう。いつもとは違った自分の目で次の一年を考えようという気持ちになります。それがまた先の自分の生き方を考える機会になるのです。このように先に目を向けることができれば、現実の問題に冷静に対処できるようになります。

大野 裕(ゆたか)

ストレスマネジメントネットワーク(株)代表。精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者で、日本認知療法・認知行動療法学会理事長。著書に『マンガでわかる心の不安・モヤモヤを解消する方法』(池田書店)など。

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