健康コラム
離れて暮らす親のケア vol.171

介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子さんが、親と離れて暮らす子の介護に関する悩みや不安について、事例を交えながら親のケアを考えていきます。
親の「施設入居」にきょうだいが反対
介護の必要度合いが増してくると、親の施設入居を検討することがあるかもしれません。しかし、きょうだいがいる場合、意見が分かれることがあります。
Hさん(女性50代)の母親は、車で1時間ほどの実家で1人暮らしをしており、介護保険の認定は要介護1。頑張れば、身の回りのことは自分でできますが、夜になると「寂しい、すぐに来て」と泣きながら電話をしてくることがあります。「駆け付けられないこともあり心配です」とHさん。担当のケアマネジャーとも相談し、実家の近所にあるケアハウスに入居させることにしました。母親は、「あなた(Hさん)が、その方が良いと思うならそうする」と積極的ではないものの否定もしません。ケアハウスは公的な施設なので、費用は比較的安価です。
見学、面談を終え、入居日がほぼ決まった段階で、Hさんは兄(母親にとって長男)に電話で報告しました。兄は、正月に帰省するくらいで、ほとんど母親の介護にはノータッチ。ところが、受話器の向こうで、「なぜ勝手に決めるんだ? まだ要介護1だろ、母さんがかわいそうだ」と声を荒げたのです。
推測ですが、兄は、普段の母親の状況を知らないため、“施設入居”は唐突過ぎたのでしょう。さらに、「自分抜き」で大事なことを決めたことに、いら立ちを覚えたのかもしれません。
こうしたすれ違いを防ぐために、親の介護、とりわけ施設入居を検討する場合、決めてからではなく、早い段階で、きょうだいに相談を。施設を探す必要性を共有し、一緒にスタート地点に立つことができれば、後々のトラブルの発生を最小限に抑えられると思います。