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ほっとひと息、こころにビタミン vol.14

精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者の大野裕先生が「こころ」の健康についてわかりやすく解説します。

【コラム執筆】
日本認知療法・認知行動療法学会理事長
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表
精神科医 大野 裕

思い切って動いてみよう

年度が替わってしばらく経ち、新しい仕事にも慣れてきたころだと思います。そのことで少しホッとする反面、思ったように仕事が進まず、どうにも気力が出ないという人もいます。新しい仕事が期待したような内容でなかったためにガッカリしている人もいるでしょう。

このように気持ちが落ち込むと、何をするにもおっくうになります。休日も、何をするでもなく家の中で過ごすことが多くなります。疲れたときに外に出ないで身体を休めるのは悪くありませんが、家の中で何もしないで時間を過ごしていると、ますます気力が無くなってきます。

このようなときには、思い切ってそのときの気分とまったく違う服装をしたり、行動をしたりしてみてはどうでしょうか。専門的には、アウトサイドインというのですが、外見や行動を変えることで、こころの状態は変わってきます。態度や行動といった外面、つまりアウトサイドから、こころという内面、インサイドを変えようというのです。

私たちは「こころが元気だから明るい気持ちになって活動的になる」と考える傾向があります。これがインサイドアウトの発想です。しかし、気力がないときには待っていても出てきません。

気力が出ないときには、外面から内面を変えるアウトサイドインのアプローチが役に立ちます。そうしたときに何かをするのはおっくうかもしれません。しかし、そうしたときにこそ、以前楽しんだ趣味に手を付けてみましょう。家の外に出て、背筋を伸ばして微笑みながら歩いてみても良いでしょう。そうすると自然に気持ちが晴れてくるものです。

大野 裕(ゆたか)

ストレスマネジメントネットワーク(株)代表。精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者で、日本認知療法・認知行動療法学会理事長。著書に『マンガでわかる心の不安・モヤモヤを解消する方法』(池田書店)など。

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