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ほっとひと息、こころにビタミン vol.12

精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者の大野裕先生が「こころ」の健康についてわかりやすく解説します。

【コラム執筆】
日本認知療法・認知行動療法学会理事長
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表
精神科医 大野 裕

不安を味方にする

年度替わりはどこか落ち着きません。すでに新年度の人事異動の内示を受けた人も、まだの人もいるでしょう。同じ部署にいても、異動のために一緒に働く人が代わります。このように変化が多い時期には、いつも以上に不安を感じやすいものです。

どのような部署に配属になるのだろう。配属された部署で新しい仕事をきちんとこなせるだろうか。今度一緒に働くことになった人たちとうまくやっていけるだろうか。いろいろな心配が頭に浮かびます。

このように心配になるのは人のこころの自然な防御反応です。心配することで、悪い状況にならないように、事前に手を打つことができるからです。その一方で、悪い可能性が頭から離れなくなると困ります。良くないことばかり考えてつらくなりますし、必要な準備ができなくなります。

そうしたときには、何が問題か、具体的に考えていくようにすることが大事です。心配や不安が強くなっているときには、危険性を大きく考えすぎていることがよくあります。「幽霊の正体見たり枯れ尾花」という表現がありますが、不安になっていると枯れた花が幽霊に見えてしまうことさえあります。

ですから、不安なときには冷静になって、何が問題なのかを具体的に考えることが役に立ちます。もちろん良くないことが起きる可能性があるかもしれないので、その場合に自分に何ができるか、対応の手立てを具体的に考えるようにします。また、自分だけで頑張りすぎるのではなく、信頼できる人に手助けしてもらうようにすることも大事です。こうしたことがきちんとできれば、不安が逆に自分の役に立つようになります。

大野 裕(ゆたか)

ストレスマネジメントネットワーク(株)代表。精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者で、日本認知療法・認知行動療法学会理事長。著書に『マンガでわかる心の不安・モヤモヤを解消する方法』(池田書店)など。

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