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企業・健保訪問シリーズ
~健康経営 事例紹介~

昨今、「従業員の健康=企業の重要な資本」との考え方のもと、健康経営を実践する企業が増えています。「企業・健保訪問シリーズ ~健康経営 事例紹介~」では、さまざまな工夫で健康経営に成功している企業をご紹介していきます。

企業・健保訪問シリーズ
~健康経営 事例紹介~

株式会社デンソーエレクトロニクス

従業員が元気にいきいきと働ける健康重視の企業風土醸成

自動車の車載電装品の設計開発・製造を行う株式会社デンソーエレクトロニクスは、2023年度まで5年連続で健康経営優良法人(大規模法人部門)の「ホワイト500」の認定を受けている。「健康意識の向上」「心身の健康づくりの推進」「ワークライフバランスの促進」という健康方針を掲げ、特定保健指導の実施率向上、がん対策(人間ドックの全額相当費用補助、女性がん検診の社内実施)、メンタルヘルスケア(復職支援プログラム導入)等の各種施策を推進している。同社の取り組みについて、株式会社デンソーエレクトロニクス取締役社長の鶴田真徳さん、同常務取締役の小林幹志さん、同人事総務部部長の石川智光さん、同部総務室室長の細井正孝さん、同部健康推進課係長の渡辺陸絵さん、デンソー健康保険組合常務理事の永井立美さん、同健保組合健康支援室健康増進グループ保健師の奥村成子さんに話を聞いた。

【株式会社デンソーエレクトロニクス】
設 立:1950年10月
本 社:愛知県安城市篠目町1-10
取締役社長:鶴田真徳
従業員数:2,445人(2023年5月現在)
2018年10月に「アンデン健康宣言」を策定、社名変更により2020年10月より「デンソーエレクトロニクス健康宣言」

──組織風土改革を土台に健康経営施策を推進


株式会社デンソーエレクトロニクス
取締役社長
鶴田 真徳 さん

鶴田さん ▶

 当社は、基本理念として、①時代を先取り未来を創る、②変化を恐れず挑戦する、③自己を磨き、仲間の成長に繋げる――を挙げています。これを実現するためには、そもそも従業員が健康であることが必要です。「デンソーエレクトロニクス健康宣言」では、健康と安全を最優先として、従業員が心身ともに健康でいきいきと働くことができる、デンソーエレクトロニクスで働くことで喜びと達成感が得られる企業づくりに努めることを宣言しています。

 従業員がいきいきと働ける職場環境の構築に向けて、組織風土改革を推進しており、「風通しの良い会社」を実現できるよう、「コミュニケーション強化」「挑戦の促進」「働き方の大改革」の3つの課題に対して各種対策を実行しています。組織風土改革により、しっかりとした土台をつくりながら、並行して健康経営の各種取り組みを進めているところです。


株式会社デンソーエレクトロニクス
常務取締役
小林 幹志 さん

小林さん ▶

 「デンソーエレクトロニクス健康方針」として、「健康意識の向上」「心身の健康づくりの推進」「ワークライフバランスの促進」を掲げています。「健康意識の向上」では、「従業員の健康がすべての基盤」という認識のもと、従業員が自主的に健康維持・増進するという企業風土を醸成していくこととしています。「心身の健康づくりの推進」では、安全で快適な職場環境づくりを推進しています。「ワークライフバランスの促進」では、従業員が個々の能力を最大限に発揮できるような環境づくりに取り組むこととしています。

石川さん ▶

 健康経営の推進体制としては、人事総務部総務室の健康推進課を中心に施策を展開しています。株式会社デンソー健康推進部ならびにデンソー健保組合の支援を受けながら、国内外の子会社へのサポートも行っています。


株式会社デンソーエレクトロニクス
人事総務部部長
石川 智光 さん

鶴田さん ▶

 当社において健康経営で解決したい課題、具体的な取り組みについて、戦略マップを作成して可視化しています。この中で健康関連の目標としては、アブセンティーイズムおよびプレゼンティーイズムの低減とともに、ワークエンゲージメントの向上を掲げています。この目標は、仕事と自分自身の健康を両立しながら、楽しく生活していくことにつながるものと理解しています。

細井さん ▶

 健康づくり施策では、健康保持・増進に向け、メタボ対策、がん対策、禁煙対策、メンタル疾患対策といった事項について、毎年度の実績・課題を確認・評価し、次年度の重点取組事項を設定しています。

 メタボ対策に関しては、2021年度の特定保健指導実施率は、目標80%に対し実績は57%に止まっていたため、2022年度から実施事業者を1社から2社に増やし、指導対象者について、原則正社員は全員実施することとしました。この結果、2022年度の実施率は83.8%となる見込みです。2023年度も実施率80%以上を目標に取り組んでいます。

渡辺さん ▶

 がん対策では、検診の受診率向上に向けて、人間ドック受診を推奨しています。2020年10月から40歳以上の受診者に対し、健保組合の補助に加え、会社独自の受診費用の補助を開始しました。2022年度からはさらに補助額を増額し、全額相当費用補助(4年に1回)を開始しています。


株式会社デンソーエレクトロニクス
人事総務部総務室室長
細井 正孝 さん

細井さん ▶

 2021年度から社内女性がん検診を実施しています。同年度には例年の2倍近くに受診率が向上しました。2年に1回の実施ということで、2023年度も5〜7月の間で実施しました。

渡辺さん ▶

 検診は女性スタッフで対応するなど受診者目線の配慮や、受診者の費用負担は無料とし、会社敷地内で平日の業務の合間に受診可にするなど、より受診しやすい環境づくりを心掛けています。従業員からも好評を得ており、今後も、積極的に取り組んでいきたいと考えています。

細井さん ▶

 定期健康診断の結果、要精密検査となった従業員には、医療機関での受診結果の報告を求めています。受診率は2013年度から100%を継続しています。

渡辺さん ▶

 独自の「受診確認書」というフォーマットを使用して、検査結果、次の受診予定日、処方薬、治療状況を確認します。確認の結果、産業医が必要と判断した場合には産業医面談を実施し、しっかりとフォローしています。

──メンタル疾患の再発防止と早期発見・早期予防を

細井さん ▶

 メンタルヘルスケアについて、以前は、4カ月以上休職した社員に対し産業医面談を実施するという内容でしたが、2019年度から、メンタル系疾患で4稼働日以上の休務者を対象とした復職支援プログラムを導入しました。復職時には主治医意見書に加え、産業医許可書が必要となり、業務上のパフォーマンスを確保できるかという観点で復職可否を決定しています。2020年度からは、「休務者状況確認書」の運用を開始しました。月1回、休務中の状況認識を本人・上司が共有し、コミュニケーションを取りながら、スムーズな職場復帰を目指すという取り組みです。


株式会社デンソーエレクトロニクス
人事総務部健康推進課係長
渡辺 陸絵 さん

渡辺さん ▶

 さらに2022年度からは、メンタル不調の再発防止策として、産業医による復職後11カ月面談を実施し、プレゼンティーイズムの予防に努めています。

小林さん ▶

 復職後の対策は講じてきていますが、一番のベースは、本人に過度なストレスをかけない、何か変化があれば周りが気付いてあげられるような、風通しのよい職場づくりだと考えています。もう1つは、メンタル不調の早期発見・早期予防です。非常に難しいと思いますが、メンタル疾患患者の発症分析により、早期発見の手掛かりが得られないか、健康推進課に現状分析をお願いしています。

細井さん ▶

 喫煙対策について、喫煙率は2016年度に全社喫煙率30%以下の目標値を達成し、その後も着実に喫煙率は下がってきています。2022年度の実績は22.6%で、2023年度は21.6%を目標として設定しています。

 受動喫煙対策として、かつては、屋内にも喫煙所がありましたが、現状では屋外喫煙所も工場に1カ所のみとなっています。ここでも紙巻きタバコは全面禁止で、朝の勤務前、昼休み、終業後に電子タバコのみ喫煙可というルールになっています。また、毎週水曜日は禁煙デーとして、屋外喫煙所も使用不可としています。過去には課長級以上の職制による先行した全面禁煙の実施など、試行錯誤しながら対策を進めています。

渡辺さん ▶

 卒煙支援として、喫煙者に対しては健康診断時に、健診機関の保健師による個別の禁煙指導を行っています。同時に健保組合の卒煙プログラムの案内も行っています。

──各種健康施策のさらなるレベルアップを

鶴田さん ▶

 当社の健康施策は、かなり充実したプログラムがそろっていますので、今後は、各施策をブラッシュアップし、それぞれのレベルを上げていきたいと思っています。

小林さん ▶

 施策を担当する健康推進課は、スタッフ数も少ない中で、非常に前向きに取り組んでくれています。まずは、計画している施策を継続して着実に実施していきながら、今後も新しい取り組みにもチャレンジしてほしいと思っています。

石川さん ▶

 メンタル疾患の予兆をつかむということには、職場の風土が大きく影響すると思います。風通しの良い職場で、ワークライフバランスの促進も含め、従業員が働きやすい環境づくりのための施策を講じていくことが重要と認識しています。


デンソー健康保険組合
健康支援室健康増進グループ
保健師
奥村 成子 さん

細井さん ▶

 当社は、従業員数が2500人程度という、何か施策を講じるときは、右にも左にも動くことができる規模で、当社だからできる取り組みがあると感じています。従業員の健康を考える仕事に対して、自分としてもやりがいを持って取り組むことできています。

渡辺さん ▶

 全従業員に健康になってほしいという想いで、人間ドックの全額相当費用補助や、社内女性がん検診の導入等を進めてきました。病気の人は治療と両立しながら働けるように、健康な人はより健康になれるように、今後も健康施策を推進していきたいと考えています。

奥村さん ▶

 長年、労働衛生管理にしっかりと取り組んでいただいています。さらに近年は、健康経営の取り組みを強化されており、今後もデンソーグループの他社の模範となるような取り組みを提供していただきたいと思っています。特定保健指導実施率も非常に高い水準となっていますが、健保組合としては、39歳以下の方へのアプローチの仕組みを検討していますので、引き続きご協力いただければと思います。


デンソー健康保険組合
常務理事
永井 立美 さん

永井さん ▶

 健康方針の中で、健康意識の向上を掲げていただいています。これは健保組合として、全加入事業所に強くお願いをしているところです。会社や健保組合は健康保持・増進のための環境や仕組みを用意していますが、それが生きるかどうかは、1人ひとりの意識にかかっています。健康は、自分のためでもありますが、会社のためでもあるという意識で、自分の健康を自分でマネジメントするという従業員の育成をすることが重要です。それをまさに実践していただいており、引き続き強化していただければと思います。

鶴田さん ▶

 私は2018年に大きな病気を経験しました。その時に実感したことは、従業員の皆さんにはそんな経験はしてほしくない、元気で過ごしてほしいということです。会社の業績目標は、従業員が心も身体も健康で、100%のパフォーマンスを発揮できても届くか届かないかという水準で設定しています。つまり、従業員が元気で健康でなければ、目標を達成することはできないのです。健保組合の支援もいただきながら、今後もさまざまな施策に取り組んでいきたいと考えています。

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