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企業・健保訪問シリーズ

昨今、「従業員の健康=企業の重要な資本」との考え方のもと、健康経営を実践する企業が増えています。「企業・健保訪問シリーズ」では、さまざまな工夫で健康経営に成功している企業をご紹介していきます。

企業・健保訪問シリーズ

オムロン株式会社

5つの重点テーマに定量目標を設定し健康経営を推進

最先端の制御機器、電子部品、ヘルスケアなど多岐にわたる商品・サービスを提供するオムロン株式会社。2017年7月に「健康経営宣言」を行い、5つの重点テーマ(運動・睡眠・メンタルヘルス・食事・タバコ)を「Boost5」と設定し、テーマごとの定量目標の達成に向けた活動を推進している。今年は「健康経営銘柄2019」に初選定された。同社の健康経営の取り組みについて、国内オムロングループの人事・総務・経理業務を統括するオムロンエキスパートリンク株式会社総務センタ全社総務部長・中山浩之さん、同部健康管理課・今川かおるさん(保健師)、同・岩村加奈子さん、オムロン健康保険組合常務理事・谷口敏文さん、同事務長・佐藤佐利さんに話を聞いた。

【オムロン株式会社】
設 立:1948年5月19日
本 社:京都府京都市下京区塩小路通堀川東入
代表取締役社長CEO:山田 義仁
従業員数(連結):本社4,741人、国内子会社6,624人(2019年3月末現在)

──健康経営推進の経緯と考え方


オムロンエキスパートリンク株式会社
総務センタ全社総務部長
中山 浩之 さん

中山さん ▶

 オムロングループでは、健康関連事業に携わる会社として、また、同事業を長く経験した社長の「健康を大切にしたい」という思いもあり、2016年12月から健康経営の取り組みの検討をスタートさせました。

 ソーシャルニーズの創造、絶えざるチャレンジ、人間性の尊重というオムロンの企業理念を実践するためには、社員の健康が最も重要な要素になると考え、健康経営の軸として①イノベーションを起こす人と組織を作る(ポジティブ)②心身が健康で、自分の人生(仕事も含めた生活)を楽しんでいる社員を作る③オムロンを卒業しても社会で活躍し続ける社員を作る(生涯現役)――を挙げました。


オムロンエキスパートリンク株式会社
総務センタ全社総務部健康管理課
今川 かおる さん

今川さん ▶

 それまでの健康管理の取り組みは、法令遵守をベースとして、当然果たすべき責任のレベルでの取り組みだったと思います。また、グループ各社、各事業所での健康管理について、全体としての共通施策が講じられておらず、施策による改善・成果を評価するための共通の物差しもありませんでした。

 17年7月に、社長の山田が「健康経営宣言」を行い、国内の全グループ社員に対しメールで配信しました。これにより経営層として本気で健康経営に取り組んでいくことが伝わり、会社で活動を推進していく土台ができたと思います。

中山さん ▶

 20年までの人財戦略としても、ワークプレイス革新(就労環境整備)、ワークスタイル革新(働き方改革)と三位一体のものとして、健康の維持・増進(健康経営の推進)を重点テーマに位置付けています。また、中長期経営計画と連動したサステナビリティ(持続可能性)目標として、「健康経営の浸透度の向上」を掲げています。

──評価指標「Boost5」の策定

今川さん ▶

 健康づくりのための具体的な取り組みとして、全社共通の物差し、つまり共通の評価指標となる「Boost5」を策定しました。「運動」「睡眠」「メンタルヘルス」「食事」「タバコ」のそれぞれについて定量的な目標を設定し、それが達成できている社員を1人でも増やしていく取り組みを展開しています(図)。Boost5 は、ロケットのブースターになぞらえて、健康管理の取り組みを加速させようという意味で、統括産業医が命名しました。具体的な目標として「運動」は週2日以上、「睡眠」は1日平均6時間以上8時間未満、「メンタルヘルス」はメンタルタフネス度の偏差値55以上(ストレスチェック指標)、「食事」はBMI18・5以上25未満、「タバコ」は「吸わないorやめた率」を挙げています。


健康づくりを応援する5つの指標「Boost5」


オムロンエキスパートリンク株式会社
総務センタ全社総務部健康管理課
岩村 加奈子 さん

岩村さん ▶

 これまでの労働衛生施策は、例えば、病気になってしまった人が元気に働くことができる状態になるように支援したり、病気を予防したりするという、マイナスをゼロにする、マイナスにならないように予防する活動が主でした。Boost5では、さらに元気で生き生きと働き、生産性を高め、イノベーションを生み出すことに寄与する施策として取り組んでいます。ただ、「生産性」という言葉を使うと、誤解を受けることもあると考え、「集中力」という言葉を前面に打ち出して、例えば、集中力をアップさせる食事や睡眠といった形で、社員のパフォーマンスアップをライフスタイルの面から提案することにしました。

 取り組みの成果を評価し、社内外に発信していくため、オムロン健保組合とのコラボで「オムロン健康白書」を作成しています。これまでに17年版、18年版を作成し、Boost5の取り組み状況、達成項目と健康状態の相関関係などを「見える化」しています。


オムロン健康保険組合常務理事
谷口 敏文 さん

谷口さん ▶

 健康白書は、健保組合が保有するレセプトデータと、会社の定期健康診断結果のデータを突合したグラフを示すなど、社員の目標達成に向けた行動変容につながる内容となるよう試行錯誤しています。

──「睡眠」「運動」の取り組み

今川さん ▶

 健康経営を開始するにあたり、まず、社員に健康経営について周知し、これまでの労働安全衛生の取り組みとは違うことを認識してもらうため、イベント型の取り組みを実施して会社の本気度をアピールしています。これと、個別の環境整備を両輪として進めています。

 具体的には、第1弾として17年に「睡眠」に関する取り組みを実施しました。睡眠教育セミナーを受講した社員を対象(希望者1000人)に、ドコモ・ヘルスケア製のウェアラブル活動量計を配布し、自分の睡眠状態を見える化することで、良い睡眠習慣のための改善行動につなげていくというものです。

 また、同年には「食事」に関する取り組みもスタートしました。正しい食事についてのセミナーの開催や、事業所の食堂における低糖質メニューの提供などを実施しています。

 18年は、運動について、計測した活動量や歩数を社員同士で競い合うウォーキングイベントを実施しました。全社イベントとして年1回開催しており、これとは別に事業所ごとでも、いろいろなタイミングで実施しています。グループ会社のオムロンヘルスケアの歩数・活動量計とドコモ・ヘルスケアの健康マイレージというアプリを使って歩数をカウントし、健保組合の「健康ポータル」で歩数に応じた健康ポイントが付与され、さまざまな商品に交換できるインセンティブがあります。全社イベントは今年秋にも開催する予定です。


オムロン健康保険組合事務長
佐藤 佐利 さん

佐藤さん ▶

 健康ポイントは、健保組合の保健事業として18年度から実施していますが、Boost5のカテゴリーで活動メニューを作成しており、運動だけでなく、食事、睡眠などの活動実績に応じてポイントが付与されます。会社と健保組合のコラボにより、社員の健康行動の習慣化を後押しする取り組みといえます。

岩村さん ▶

 これらのほかにも、情報発信、啓発の一環として、社内のトイレ、エレベーター、コピー機周辺など、仕事の合間に手持ち無沙汰になる数秒で読めるような、ミニ健康知識を掲示しています。掲示内容は2週間ごとに更新しています。

──禁煙対策は健保組合とコラボ

中山さん ▶

 改正健康増進法が20年4月に全面施行されますが、国内オムロングループ全体としても、20年4月から「休憩時間を含む就業時間内の全社禁煙化」を実施します。これに向けて、禁煙を会社と健保組合でバックアップしていきます。19年の取り組みの目玉となります。

今川さん ▶

 チームでサポートしながらタバコ卒業を目指すイベント「卒煙マラソン」を実施しています。喫煙者2人に対し非喫煙者1人(サポーター)の3人一組のチームで、協力しながら禁煙に取り組みます。今年7〜9月の第1回卒煙マラソンでは、48チームがエントリーし、100人程度が禁煙にチャレンジしている状況です。11月からは第2回を実施します。

谷口さん ▶

 3カ月の取り組みで卒煙が達成できた場合、達成者に対して卒煙にかかった費用を健保組合から補助します。また、卒煙マラソン達成チームには、1人当たり1万円相当の健康ポイントが付与されます。周囲からのサポートと補助での支援は、これまで〝一歩踏み出せなかった〟人の背中を押すことになるのではないか、と思っています。

──今後の課題と展望

今川さん ▶

 健康経営の取り組みを、国内グループ会社全てに広げていくことが重要です。現状では、会社の規模によって取り組み度合いに濃淡がありますので、隅々まで行き届くサポートを展開していきたいと思います。

岩村さん ▶

 これまでは会社ごとに実施していた労働安全衛生の取り組みについて、18年度からは5つのエリア別体制を構築しました。エリアごとに課題を把握しながら、健康経営の取り組みを加速化させ、浸透させていきたいです。

谷口さん ▶

 健康経営、Boost5 の取り組みは、健保組合のデータヘルス計画、各種保健事業とも連動しています。会社と健保組合等で設置する健康管理事業推進委員会の下に、実務者による「健康経営推進ワーキンググループ」を設置しており、課題認識や施策の整合を図っています。今後も、会社と健保組合が連携し、必要に応じて協働した施策を展開していきたいと考えています。

佐藤さん ▶

 健康への無関心層に対して、どのようにして気付きを促していくか。会社と健保組合それぞれで、また協働して、行動変容を促していく仕掛けをつくっていきたいです。

中山さん ▶

 健康経営の取り組みは、まだ始まったばかりです。Boost5については、3項目以上の達成を目標としていますが、現状は3割程度にとどまっています。達成者をいかに増やしていくかが課題です。

 オムロンは「健康経営銘柄2019」に初選定されました。「健康経営優良法人( ホワイト500)」には、グループ会社のオムロンヘルスケアとともに、3年連続で認定されています。選定に際して評価された取り組みを国内グループ全体に浸透させ、20年までに「健康経営を実践している社員100%」にすることが目標です。