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ほっとひと息、こころにビタミン vol.63

精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者の大野裕先生が「こころ」の健康についてわかりやすく解説します。

【コラム執筆】
日本認知療法・認知行動療法学会理事長
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表
精神科医 大野 裕

受診を決める3つの基準

国の労働安全衛生調査では、働く人の5~6割がストレスを感じています。そのうちの約9割以上の方に相談できる人がいて、7割の方が実際に相談したと答えています。その一方で、医師や看護師などの医療職に相談したという人は約3%で、専門職への相談の敷居が高いことが分かります。

その状況を改善するために、最近はデジタルツールを活用したストレスケアの仕組みづくりが進んでいて、私たちもAIチャットボット「こころコンディショナー」を使って専門職への相談を促す取り組みを行っています。それでも、専門職に相談するのには勇気がいるようです。専門家からつまらない個人的な悩み相談をしていると思われるのではないかと心配なのかもしれません。

しかし、うつ病や不安症などの精神的不調の場合には、専門的な治療が役に立ちます。そのために良い医療機関を受診することが大事ですが、その基準は3つあると私は考えています。

まず医師との相性が合うことです。過去の研究でも、相性が合う医師に治療を受けた方が治療効果が高くなることが分かっています。次に、最初から薬を出し過ぎず、一緒に効果を確かめ合ってもらえることです。薬の効果は人によって違うので、それを確認しながら薬を決めることが大切です。診療時間は短くても、分かりやすく納得のできる説明をしてもらえることも大事です。

もし不安であればいくつかの医療機関を受診して、その中で最も良いと思えるところを決めても良いでしょう。ただし、いったん主治医を決めた後は、そこでの診療を継続していくようにしてください。

大野 裕(ゆたか)

ストレスマネジメントネットワーク(株)代表。精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者で、日本認知療法・認知行動療法学会理事長。著書に『マンガでわかる心の不安・モヤモヤを解消する方法』(池田書店)など。

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