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ほっとひと息、こころにビタミン vol.22

精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者の大野裕先生が「こころ」の健康についてわかりやすく解説します。

【コラム執筆】
日本認知療法・認知行動療法学会理事長
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表
精神科医 大野 裕

失敗を引きずらないために

新しい年が始まりました。新たな目標を立てて、それに向けて頑張ろうと考えている人も多いと思います。その一方で、昨年の失敗や積み残した課題が気になって、いまひとつ気が晴れない人もいるかもしれません。そのように過去の失敗が気になっている人に対して、私は、反省と後悔の区別をすることと、「原因探し」ではなく「手立て探し」をすることを意識するように伝えています。

まず、反省と後悔の区別についてです。私たちは、過去の失敗や良くないことを思い浮かべて「なぜあんなことをしたのだろう」と後悔することがよくあります。しかし、いくら後悔しても、そのようなことをした自分を責めることになるだけで、過去が変わるわけではありません。起きたことは起きたことで、変えようがないのです。そのようなときには、起きたことは起きたこととして受け入れて、その経験をこれからどのように生かしていくのかを考えることが役に立ちます。

また、私たちはつい原因を探すことで問題を解決しようとします。しかし、いくら考えても原因が分からないことはいくらでもあります。原因が分かっても、その原因に働きかけることができないこともたくさんあります。そのようなときに、「なぜあんなことをしたのだろう」と考えると、結局は自分を責めることになり、つらくなってきます。その結果、先に進もうという気力も失われていきます。

すでに問題があることは分かっているのですから、その問題に対してどのように対処すれば良いか、解決のための手立てを探すことの方がずっと大事です。反省と手立て探しで過去の経験を生かして、今年を良い年にしてください。

大野 裕(ゆたか)

ストレスマネジメントネットワーク(株)代表。精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者で、日本認知療法・認知行動療法学会理事長。著書に『マンガでわかる心の不安・モヤモヤを解消する方法』(池田書店)など。

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