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企業・健保訪問シリーズ
~健康経営 事例紹介~

昨今、「従業員の健康=企業の重要な資本」との考え方のもと、健康経営を実践する企業が増えています。「企業・健保訪問シリーズ ~健康経営 事例紹介~」では、さまざまな工夫で健康経営に成功している企業をご紹介していきます。

企業・健保訪問シリーズ
~健康経営 事例紹介~

株式会社ファンケル

美しく健やかな従業員であるために 健康第一の風土づくりを

「美」と「健康」の領域を中心に、化粧品、サプリメント事業等を展開する株式会社ファンケルは、従業員の健康を全ての基盤と位置付け、従業員がいきいきと笑顔で働けるよう、健康施策に積極的に取り組み、7年連続で「健康経営優良法人」(大規模法人部門、ホワイト500)の認定を受けている。「健康経営優良法人2023」の認定では、生活習慣病対策、メンタルヘルス対策、女性の健康課題への対応など、プレゼンティーズム低減、アブセンティーズム低減、ワークエンゲージメント向上を最終的な目標とした積極的な健康経営の推進が評価された。同社の取り組みについて、株式会社ファンケル管理本部人事部部長兼健康支援室副室長の河内達也さん、同健康支援室課長の石井真奈美さん、同健康支援室リーダー保健師の根矢美鈴さん、同社が加入する神奈川県食品製造健保組合総務課長の大島明さんに話を聞いた。

【株式会社ファンケル】
設 立:1981年8月
本 社:神奈川県横浜市中区山下町89−1
代表取締役社長執行役員 CEO:島田和幸
従業員数:896人(正社員数)(2023年3月31日現在)
2017年8月にファンケルグループ「健康経営宣言」

──健康管理システムで従業員と直接相談対応


株式会社ファンケル管理本部
人事部部長兼健康支援室副室長
河内 達也 さん

河内さん ▶

 ファンケルグループは、「美」と「健康」領域を事業の柱としていることもあり、従業員の健康が全ての基盤だと考えています。2017年に制定した「健康経営宣言」のスローガンでは、「私たちが美しく健やかであること それが何よりの証明です」を掲げ、健康第一の風土づくりと、健全な経営を推進しています。

石井さん ▶

 ファンケルグループでは、世の中の「不」の解消に挑み続けてきました。「不」の解消とは、例えば、「不安」を「安心」に、「不満」を「満足」に、「不快」を「快適」にしていくということです。健康経営に関しても、従業員の「不」の解消に挑み、従業員がいきいきと働けるよう、明るく活力ある職場づくり、従業員の心身の健康を第一と考え、病気や不調の発生を防ぐ取り組みを進めています。

 健康経営の取り組みを加速させるため、2018年に健康支援室を設置しました。現在は、正規雇用の保健師6人が所属し、産業医とともに、従業員の健康を支援しています。また、2018年に健康管理システムを導入し、健診結果やストレスチェックの結果を一元管理できるようにしました。従業員個人の数値を確認できるほか、従業員と保健師が、直接メールで対話、相談できる仕組みとしても活用しています。

──2030年を見据え 健康経営戦略マップを作成

河内さん ▶

 当社では、科学的根拠のある健康食品を提供し、健康寿命をのばし、医療費削減に貢献をしたいと考えています。そうした中で健康経営宣言では、従業員の行動姿勢として、健康食品を積極的に摂取し自らの健康づくりに取り組むこと、1人ひとりが美しく健やかであるように努めること、美と健康の専門家として、社内外の健康増進活動に積極的に参加することを求めています。

根矢さん ▶

 会社は健康経営を推進していくことで、従業員を大切にして健康に元気で働いてもらえるよう、さまざまな施策を講じる一方で、従業員もただ受け身でいるのではなく、1人ひとりが主体的に健康的な行動をして元気に働いていくという、会社と従業員が両輪となって取り組むことを目指しています。

河内さん ▶

 創業50周年を迎える2030年に目指す姿として「VISION2030」を策定、それを見据えた「健康経営戦略マップ」を作成し、プレゼンティーズムの低減、アブセンティーズムの低減、ワークエンゲージメントの向上を図り、従業員が美しく健やかに、そのパフォーマンスを最大限発揮できる会社となることを目指し、さまざまな健康施策を実施しています。

 健康経営戦略マップで示した取り組みのうち、健康支援室では、①生活習慣病対策、②メンタルヘルス対策、③がん対策、④女性の健康対策、⑤禁煙対策、⑥感染症対策――を担っています。それぞれ2030年度までの目標値を設定し(表)、取り組みを進めています。

──血圧測定習慣化、ウォーキング推進で血圧リスクを低減

根矢さん ▶

 生活習慣病対策として、血圧、血糖、脂質の3点に絞り、生活習慣病リスクが高い者の割合を減らしていくことを目標としています。


株式会社ファンケル管理本部
健康支援室課長
石井 真奈美 さん

石井さん ▶

 特に高血圧のリスクを減らしていくため、2022年度には血圧測定の習慣化を図ることに取り組みました。当初は本社1階のエレベーター前にブースを設けて測定器を置いたのですが、なかなか利用が進まなかったため、測定器を1週間ごとに各フロアに設置して、気軽に測定してもらえるようにしました。

根矢さん ▶

 測定値は、健康管理システムに入力してもらいます。保健師が従業員の測定値を把握し、必要な場合には、従業員に個別にアプローチしていく予定です。

石井さん ▶

 当社では、運動習慣のある者が少ないことが課題となっています。2022年度の血圧測定習慣化の取り組みに続き、2023年度はウォーキングを推奨して高血圧リスクを減らしていく取り組みを推進します。ウォーキングは、血糖、脂質のリスクの低減にもつながると考えています。


株式会社ファンケル管理本部
健康支援室リーダー保健師
根矢 美鈴 さん

根矢さん ▶

 健保組合のウォーキング大会を2019年度より活用させていただいています。回数を重ねるごとに参加者が増えてきました。

大島さん ▶

 神奈川県食品製造健保組合では、毎年5月と10月にウォーキング大会を実施しています。当健保組合の被保険者の皆さまを対象として、運動習慣の定着や運動不足の解消、職場内のコミュニケーションの促進の機会として、活用していただいています。

 大会期間中は、1日平均8000歩を目標として設定しています。継続的にウォーキングを行っていただけるように、スマートフォンや歩数計と連動したアプリを使用しています。大会は年2回の実施ですが、大会期間外の歩数もカウントされますので、年間を通じて取り組んでいただけるようにしています。

 2022年度は、5月の大会で32事業所、598人が参加、10月の大会で33事業所、613人が参加されました。


表:主な健康施策の実績と目標

──従業員1人ひとりのヘルスリテラシー向上

石井さん ▶

 食習慣の改善について、社員食堂は「ファンケル学べる健康レストラン」という位置付けで、2017年8月から、総カロリー、塩分量を表示した「ファンケル健康メニュー」の提供を開始しました。また、2022年度には、朝食をしっかりとってもらえるよう社員食堂で朝食を試行的に提供しました。従業員からは好評で、2023年度の本格運用に向けて、試行実施の結果検証をしているところです。

根矢さん ▶

 メンタルヘルス対策では、ストレスチェックの集団分析結果、総合健康リスクが120以上と、リスクの高い職場を減らしていくことを目標としています。2022年度は、集団分析結果を踏まえ、役職者を対象としたセミナーを開催し、役職者が職場の課題を把握して、アクションプランを立てて実行していくという取り組みを推進しました。個別の対応としては、高ストレス者には保健師が直接アプローチして、フォローを行っています。

 がん対策では、健康診断内容の充実を図り、胃がん、大腸がん、乳がん、子宮頸がん検診等が可能となっています。乳がん検診や子宮頸がん検診は対象年齢を拡大してきているところです。精密検査が必要な従業員には保健師から直接受診勧奨し、検査結果を確認するといったフォローを行っています。

 女性の健康に関する取り組みも強化しています。ファンケルグループは、従業員の男女比率が、おおむね女性8対男性2と、女性従業員が非常に多いことが特徴です。女性特有の健康課題が経営に大きく影響することから、月経周期や更年期に関する体調変化について、まずは情報提供と相談体制の強化をすることとしました。2022年度は男女問わず役職者全員に女性の健康に関するセミナーを受講してもらい、職場での理解促進につながったと考えています。今後、全従業員を対象としたセミナーを継続実施していく予定です。

石井さん ▶

 健康づくりに自分事として取り組むことができれば、生活習慣病のリスクにつながる数値は改善すると考えます。自分事として捉えるために、測定値など数値として「見える化」していくことで、従業員を巻き込んだ取り組みを推進していきたいと思っています。

根矢さん ▶

 健康支援室では、日々従業員との個別の対応も大事にしています。より多くの従業員と面談、対話をすること、つまり健康問題が顕在化する前の段階で保健師に相談してもらうことで、病気の予防につながると思っています。ちょっとしたことでも、自身の心と身体の状態に応じて保健師に相談してみようという意識が浸透し、また、それに応えられる体制にしていきたいと考えています。

 健診に関しては、健保組合の補助金制度を活用し、法定項目以上の項目を追加して受診できるようにしています。健診データをもとに健保組合の特定保健指導への参加と達成をサポートしており、その意味でも健保組合との連携は非常に重要と考えています。

河内さん ▶

 生活習慣病対策に関して、徐々に数値が悪化していく従業員が増えていくことを心配しています。2次検査の受診の徹底等、健保組合とも連携しながら進めていきたいと考えています。


神奈川県食品製造健保組合
総務課長 大島 明 さん

大島さん ▶

 健保組合には、加入者の皆さまが病気にならないための健康づくりや生活習慣を身に付けていただくための取り組みが求められていると思います。保健事業を充実させて、それを活用していただくことで、加入者の皆さまの健康の保持増進につながるように積極的に支援することが、健保組合の役割だと思いますので、事業所さまと協力しながら進めていきたいと考えています。

河内さん ▶

 会社として、健康経営戦略マップに沿って取り組みを進めていきますが、従業員1人ひとりのヘルスリテラシーをどうやって上げていくのかも重要だと思っています。これについても、健保組合と密にコミュニケーションをとって、さまざまな施策を連携して実施できれば非常にありがたいと思っています。

健康コラム
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