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ほっとひと息、こころにビタミン vol.4

精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者の大野裕先生が「こころ」の健康についてわかりやすく解説します。

【コラム執筆】
日本認知療法・認知行動療法学会理事長
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表
精神科医 大野 裕

悩んでいる家族への声かけ

1人で悩んでこころが苦しくなっているときには、信頼できる人に相談するのが一番です。しかし、悩みを人に打ち明けるのは勇気がいります。悩みを抱えるような弱い人間だと思われるのではないかという心配や、相談をした人に負担をかけたくないという気遣いのために、なかなか悩みを打ち明けることができません。そのために1人で悩みを抱えて悶々としてしまうのです。

一方、悩みを打ち明けられなくても、親しい人、とくに家族には、本人が悩んでいるのが手に取るように分かります。いつもと違って元気がなかったり、口数が少なくなったり、わけもなくイライラして周囲の人に当たるようになったり、さまざまな様子から悩みを抱えていることに気づきます。そうしたときには、周囲の人が、何か困っていることがあるのではないかと声をかけてみてはどうでしょうか。

悩んでいるときに声をかけると傷つけることになるのではないかと心配する人もいますが、何も聞かないで腫れ物に触るように接する方が、本人は傷つく可能性が高くなります。また、声をかけるときには、どのようなことを気にしているのかを具体的に言葉にしながら尋ねるようにしてください。ただ「変だ」「おかしい」と言われると、悩んでいる人は、一方的に否定されたと感じて反発したり、傷ついたりしやすくなります。「どうして」と原因を探るような言葉も相手を傷つける可能性があります。

ですから、心配していることを具体的に伝えて、その問題を解決していく手伝いをしたいといった言い方をすると、悩んでいる人は心を開いて話をしやすくなります。

大野 裕(ゆたか)

ストレスマネジメントネットワーク(株)代表。精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者で、日本認知療法・認知行動療法学会理事長。著書に『マンガでわかる心の不安・モヤモヤを解消する方法』(池田書店)など。

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