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長く、元気に、
イキイキと働くために

女性の健康問題について考える

女性の健康問題について考える

左から、厚生労働省健康局健康課 課長補佐・宮腰 恵さん、
同女性の健康推進室室長・田邉 和孝さん、同課長補佐・山本 直子さん

厚生労働省 健康局健康課 女性の健康推進室

エビデンスを構築し女性の健康課題解決へ信頼できる情報発信

女性の社会進出や定年年齢の延長といった社会情勢の変化により、健保組合加入者の構成やターゲットとすべき疾患も変わってくる。保健事業では、従来のメタボ対策のみならず、女性のライフステージに応じた健康づくりやロコモティブシンドロームを意識した取り組みも求められている。

そこで今回は、厚生労働省健康局健康課女性の健康推進室の田邉和孝室長、山本直子課長補佐、宮腰恵課長補佐に、厚生労働省として取り組んでいる女性の健康づくり施策について伺った。田邉室長は、「科学的なエビデンスに基づく情報提供が重要」と述べ、厚生労働科学研究や大規模実証事業を通じて得られた知見をホームページ等で分かりやすく伝える取り組みを紹介した。

ホルモンの変動で心身に不調が現れることも

――女性の年代別健康課題の認識についてお聞かせください。

厚生労働省健康局健康課 女性の健康推進室室長 田邉 和孝 さん
厚生労働省健康局健康課
女性の健康推進室室長
田邉 和孝 さん

田邉さん ▶

「人生100年時代」を踏まえますと、これまでのライフステージごとの観点に加えて、ライフコースを通じた俯瞰的な観点も重要となってきます。女性の場合、子育ての期間であったり、仕事で活躍する期間があったりと各ライフステージに応じたサポートが必要ですが、男性と違って女性ホルモンはかなり変動が大きく、思春期に増加した後、出産、更年期を経て大きく減少していく。その影響について、どうしても本人ではコントロールできない部分があります。

人生100年時代と言いましたが、更年期が終わってもまだ半分の50年、そこから先があります。これまではどちらかというと、人生前半の妊娠・出産に係る部分が着目されていましたが、20代ではやせの問題、40〜50代では更年期への対応、70代以上ではフレイル対策など、それぞれの年代に応じたサポートが必要になってくると考えています。

――女性の健康推進室で特に力を入れている施策は何ですか。

田邉さん ▶

最も力を入れているのは、健康リテラシーの向上です。例えば更年期でいいますと、40代くらいになって年齢とともに疲れやすくなってくる。そのようなときに、「年のせいかな」で終わってしまうとおそらく何もしない。確かに加齢に伴って体力が落ちてくる部分はありますが、その裏にはさまざまな病気の可能性もあります。

「年のせい」であれば治療は難しくなりますが、ホルモンの影響によって起きている更年期障害や、それ以外にも甲状腺の病気の可能性もあります。40代女性に多い橋本病では、更年期症状と同じように、体がだるいなど似たような症状が出ます。目まいがひどいというときは、メニエール病という耳鼻科の病気の可能性もあります。また、純粋に何か気分が落ち込むときにはうつ病などメンタル面の病気の可能性もあります。

そこでまずは「知る」ことからですが、知るだけでは駄目で、「正しい情報」を知ることが必要です。今はインターネットの時代ですから探そうと思えば山ほど情報は出てきますが、その中から自分に必要な情報をうまく集める能力が重要になります。

次にそれをうまく活用していただくことが大事で、症状から産婦人科がよいのか、メンタル面だから精神科がよいのか、それとも総合的に相談できる内科がよいのかといった情報分析をして、最も適切な医療機関への受診につなげていく。その前提としてリテラシーの向上があり、そのためのサポートになるような情報提供を、われわれとしてメインに進めています。

――厚労省のホームページがかなり充実していますね。

田邉さん ▶

厚生労働科学研究の一環で運営している「女性の健康推進室ヘルスケアラボ」(https://w-health.jp/)は、専門の医師に監修してもらっています。「ライフステージ別女性の健康ガイド」では、「月経のトラブル」、「デリケートな悩み」などのカテゴリーで情報提供していますし、「病気のセルフチェック」という形で、ウェブ上でチェックできるコーナーもあります。

こうしたアプローチで大事なのはエビデンスの部分であり、諸外国の知見や日本での特徴などの背景を調べた上で、根拠に基づいた情報提供を心掛けています。

「やせ」と「月経困難症」で大規模実証事業を展開

――大規模実証事業の中では、女性の健康づくりに対しどのようにアプローチしているのでしょうか。

田邉さん ▶

大規模実証はまだ途中の事業になります。2019年度の骨太方針に実施が盛り込まれ、2020年から事業を開始していますが、3年計画で進めていてちょうど今年が3年目であり、エビデンスを構築している段階です。

具体的には、「やせと低栄養」、「月経困難症」の2つをテーマにしていますが、「やせ」の問題はエビデンスが少なくて非常に難しい。海外では基本的に肥満が社会問題であり、肥満を何とかしようという流れです。世界中でやせが問題になっているのは東アジアの限定した地域だけで、日本と韓国、台湾辺りでしか若い女性のやせは問題になっていないようです。このため、データ収集の段階から苦労しています。

やせが進行すると月経や妊娠に関する問題が出てきたり、骨粗しょう症を引き起こしたり、年を取った後に生活習慣病になりやすいといった問題が生じるため重要なアプローチではあるのですが、海外のエビデンスを調べて「こういう取り組みがよかった」という事例があまりないというのが実情です。

一方、月経困難症のほうは、例えば子宮内膜症では若いうちに介入せず、分かったときには妊娠しづらくなっていたといったこともあるため、若年期からの介入が重要です。そのため、女性に利用者の多いアプリを使った受診勧奨などに力を入れ、検証事業を行っている段階です。

――女性ではメタボ対策を第一優先にするよりも、子宮頸がんや乳がん対策、あるいはやせへの対策を第一優先にすべきではないでしょうか。

田邉さん ▶

乳がんについては確かに昔に比べて増えており、食事の欧米化等も原因だといわれています。乳がん検診については、例えば乳がんで亡くなる女性をヒロインにした映画がヒットしたり、著名人が乳がんで亡くなった直後などは瞬間的に受診者が増える傾向にあるようですが、なかなか継続的な受診につながらない。これをいかに持続させ、習慣的な検診受診につなげていくのかが課題です。

――更年期障害にはどう対応していますか。

田邉さん ▶

実は、日本の更年期障害の有病率はよく分かっていません。論文を調べても、「40、50代に多い」という記述はありますが、何%なのかといった数字は意外と見つかりませんでした。「更年期症状」なのか「更年期障害」なのかというのも難しい。更年期障害は、症状があることによって日常生活に支障を来している状態です。ただ「疲れやすい」だけであれば症状なのですが、それによって「朝起きられない」、「ごはんが作れない」となると支障が出てきます。

しかし、これを病院で診断しようとすると非常に難しく、さまざまな病気を除外した上で「この人はホルモンの変動の影響を受けています」と推定できますが、それが何人中何人なのかというデータがあまりないため、現在、それをきちんと調べようと研究が始まっているところです。

山本さん ▶

女性ホルモンは、年齢を重ねるにつれてだんだんと動きながら下がっていきます。ある程度下がると月経がこなくなっていき、閉経となりますが、その前後でいろいろな症状が出るので、個人差も大きく臨床的な数値のみで評価していくことが難しい症状・障害ではあります。

男性を巻き込み女性の健康に関心を

――企業の中で男性、特に経営層に、女性の健康に関心を持ってもらうためにどのような対策を打っていこうとお考えでしょうか。

田邉さん ▶

経済産業省の健康経営度調査では、これまで女性の健康づくりに関して、「講演やセミナーを開いていますか」というような質問でしたが、これに加えて、参加率も問う形になったと伺っています。そのような方向からも男性陣に少しずつ切り込み、意識付けを行っていこうと試みられています。

われわれ女性の健康推進室では、3月に「女性の健康週間」を設定し、自治体や関係団体を巻き込んでイベントを開催するなど社会と一体となって女性の健康づくりを進めていこうと問題提起をしています。自治体や関係団体のトップには男性も多いと思いますが、そのような方がたも巻き込んで社会的な注意喚起を行うというのは重要な施策だと考えています。

――産婦人科医である山本さんからみた女性の健康課題は何でしょうか。

山本さん ▶

女性団体の方とお話ししたときに、社内での取り組みを伺ったのですが、男性社員に女性が抱えている健康課題の話をすると、「それは知らなかった。奥さんに早速聞いてみる」など、結構反響が大きかったそうです。そのように、男性も巻き込んで情報発信できる機会が増えてくるといいかなと感じています。

厚労省に女性の健康推進室ができた背景には、やはり日本では今まで女性の社会的立場がずっと弱かったため、わざわざ「女性の〜」と冠して持ち上げる必要があったのではないかと思います。

――精神科がご専門の宮腰さんからみて、女性のメンタル面の危機は年代によって特徴がありますか?

宮腰さん ▶

どの世代にもそれぞれあると思いますが、若いころであればやせから派生して摂食障害を患うとか、労働者世代であれば月経や出産に伴う精神症状、仕事や家庭におけるストレス反応、適応障害でしょうか。中高年になれば更年期障害、その先では認知症が精神変調を来すリスクになってきます。

私自身は、何が問題に感じるかといえば、やはり女性に時間がなさすぎることではないでしょうか。私生活を大事にしようと思ったら、人生において労働や家事育児が占める時間が多すぎる。自由になる時間がもっとあれば休息が取れ、考える時間や周囲の人に相談する時間が生まれたり、自分を大事にする時間が生まれると思います。もう少し余裕があれば生じない苦悩や、人と会話をすることで落ち着く感情って、かなり多いのではないかと感じています。

事業所内の実態調査や医療機関の紹介を

――保険者としては、女性の健康支援で何から始めたらよいでしょう。

田邉さん ▶

例えば、PMS(月経前症候群)に関しては若い年代でも多く、啓発を進めるとともに医療に結びつけることも重要ではないでしょうか。セルフメディケーションでコントロールできる範囲は結構狭く、産婦人科医を気軽に受診して必要な治療を受けることで仕事の効率も上がると思います。

山本さん ▶

実際、内診などもあるため、産婦人科受診はなかなか敷居が高いかもしれません。PMSの場合、痛み止めをきちんと服用すればコントロールできるのに、飲まないで頑張ってしまい、揚げ句に救急車を呼んでしまうといった事態も外来で遭遇します。その意味では、ご自分の身体との付き合い方を知っていただき、やはりリテラシーを上げていくことが重要だと思います。

まずは一度産婦人科で病気などがないか診てもらってから、どうコントロールしていけばよいか相談していただくのがよいと思います。またその際に子宮内膜症性卵巣のう胞などが見つかれば、治療することで将来的なリスクも減らせます。

田邉さん ▶

産業医の先生が産婦人科方面に詳しくない等の事情がある場合には、会社として女性社員が気軽に相談できる産婦人科医と提携しておくとか、近隣の産婦人科リストを情報提供するというのも1つの方策かもしれませんね。

ある企業では、女性の健康に特化した管理職研修を企画し、グループ会社も含めて勉強会を重ね、そこで学んだ人たちが会社に戻って社内で知識を広めるということを行っているそうです。厚労省としても、好事例を発信していきたいと考えています。

女性の健康支援では、周りが課題に気付くことも重要ですが、本人が自分自身の健康課題に気付くことも大事です。その上で、どうすればよいか考える。そのための情報提供を、国としても充実させていきたいと思います。

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