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働き盛りのメンタルヘルス vol.25

職場の中の「困った人たち」とは誰なのか

職場で接し方や対応に悩む、「困った人たち」と接した経験はありませんか? 今月から、職場の中の「困った人たち」にスポットをあてて連載を展開していきます。

※このコラムは「健康保険」2012年4月号に掲載されたものです。

職場の中の「困った人たち」が増えている

職場は、雇用形態、年代、社会経験などが異なる、さまざまな種類・立場の人たちによって、構成されています。職場が同じであること以外に共通点が少ない人たちが、縁あって同じ環境で仕事をしている――。この視点に立つと、職場内においては何も問題がない状態よりも、むしろ、なんらかの問題がある状態のほうが自然であるといえるでしょう。

最近、コミュニケーションスキルや職場環境の健康度を高めるだけでは、対応が難しい社員について、「どうしたらよいのか・・・」という声を現場で耳にすることが増えています。このような、上司や同僚など周囲が「どうしていいかわからない」と困ってしまう社員のことを、ひとまず「職場の中の困った人たち」としてみましょう。

それでは、職場で「困った」と感じる状況にはどんなケースがあるでしょうか。

A・Bは、困っている原因を絞り込めるため、また、具体的な対応方法が考えられることから、好転が期待できます。本当にみなさんが困ってしまうのは、Cの「理由がよくわからないけど困る」、つまり相手の言動が理解できないケースです。よくわからない発言や行動に直面するけど、どうしたらいいのかわからない。これは、一緒に仕事をする人にとってはやっかいな状態であり、また大きなストレスも伴います。この例に限らなくとも、「どうしてこうなっているのかがわからない」状態は、人に大きな不安を感じさせます。

職場で困ってしまう状況とその主要因 (パターン例)

A コミュニケーションがうまくとれず困る
【主要因】コミュニケーション力・環境

B 仕事ができなくて困る
【主要因】業務スキルが低い

C 理由がよくわからないけど困る
【主要因】次回以降、テーマ別に解説

私たちは「困った人たち」のどこに困ってしまうのか

私たちは、「困った人」のどういう点に頭を悩ませているのでしょうか。「サボっていて、まじめに仕事をしない」「注意しても、同じミスを繰り返す」「責任を人になすりつける」・・・具体例を想像してみると、周囲が振り回される、直接・間接のトラブルを増やす、そもそもコミュニケーションが成立しないなど、挙げていけば、いくらでも思いあたることが出てくるでしょう。

おそらく当事者は、「困った人たち」の発言や行動もさることながら、「困った人たち」のふるまいになんらかのズレを感じ取り、付き合っていく上での困難さや扱いにくさを感じているのではないかと思います。「困っている」状態とは、いわば「常識」や「あたりまえ」だと感じている価値観とのズレに、とまどってしまっている状態であるといえるのです。

このような「困った人たち」については、古くは、大人になりきれない青年像を指摘した「モラトリアム人間」、最近では、サボリ得を享受する「フリーライダー」など、これまでさまざまな視点から語られてきており、特段、目新しい存在ではありません。その背景のひとつには、まじめに働かなくても許され、身勝手なふるまいが許容され続ける職場の甘さがあります。そして、「困った人たち」によって、仕事が増えたり、やる気をそがれたりと、まじめに働く大多数の人たちがさまざまな被害を被っているのです。

ここで、注意が必要なのは、一見「困った人たち」に見えるけれども、精神疾患によって、周囲への適応が難しくなり、結果として、「困った人化」している人たちがいる点です。周囲から「困った人」だと思われている人の中には近年、話題になることが増えた、いわゆる「新型うつ」や「大人の発達障害」のような精神疾患であるために、やむを得ず「困った人」になっているケースがあることを留意しなければなりません。

「困った人化」している人たちと分かり合うために

どうやら大まかに考えてみると、「困った人たち」は3つのタイプに分類できそうです。

まずは、いわゆるフリーライダーです。言うなれば、自分の立場が脅かされないのをいいことに、職場でやりたい放題やるような人たちです。このタイプは、ある意味会社を自分の都合のよいように利用しているだけなので、自分勝手な行動を会社がしっかりと管理すれば、問題を減らすことができるでしょう。

2つ目は、性格的な問題で「困った人化」している人たちです。本人は良かれと思っている言動が、周囲からみると余計なお世話のような話はよくあります。このようなタイプへの対応は、前回までのコミュニケーション編で扱ったさまざまな視点が活かせるでしょう。

そして、3つ目は、精神疾患が主な原因となって「困った人に見える人たち」です。このタイプは、その人が罹患している病気によって、接し方や対応が大きく異なります。それゆえ、職場の同僚であるみなさんは、彼・彼女の病気にはどのような特徴があり、どうすればよりよい関係を築けるかについて、知識を得ておく必要があります。来月から、「困った人に見える人たち」の理解を深めるとともに、よりよい関係を築く上で必要な、付き合い方のヒントを提供したいと思います。

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