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ほっとひと息、こころにビタミン vol.7

精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者の大野裕先生が「こころ」の健康についてわかりやすく解説します。

【コラム執筆】
日本認知療法・認知行動療法学会理事長
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表
精神科医 大野 裕

運動はこころのビタミン

今年の夏も暑かったですね。その暑さも収まってきました。いよいよ食欲の秋、運動の秋です。そこで今回は、身体を動かすことをテーマに書くことにします。

聞くところによると、最近、ハイキングや登山をする中高年の人が増えてきているようです。毎日の忙しさから離れて自然の中で身体を動かすことは、体の健康にとってはもちろん、こころの健康にとっても良いことが分かっています。毎日の仕事や家事に追われていると、いつの間にか自分を見失ってしまいます。目の前の問題に心を奪われてしまったり、過去のことをクヨクヨ考えて後悔したり、将来のことをあれこれ心配して不安になったりと、こころが休まりません。

そうしたときに日常を離れて自然の中にいると、いわゆる五感が刺激されます。木々の葉の緑が目に入り、ひんやりとした空気を肌で感じ、鳥の鳴き声が耳に入ってきます。それだけで毎日の雑念から解放されます。自分感覚を取り戻すことができます。思いがけないときに、仕事の新しいアイデアが浮かんでくることさえあります。

それに、運動自体がこころのビタミンです。最近の研究から、定期的に運動をしている人はうつ病にかかりにくいことが知られてきています。精神的に不調になったとき、運動に一定の治療効果があることも分かっています。運動には、ストレスを和らげる効果があるのです。もし海や山に出かける余裕がない場合でも、毎日の生活に自分を取り戻す時間や運動する時間を取り入れて、自分らしい生活を送るようにすると良いでしょう。

大野 裕(ゆたか)

ストレスマネジメントネットワーク(株)代表。精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者で、日本認知療法・認知行動療法学会理事長。著書に『マンガでわかる心の不安・モヤモヤを解消する方法』(池田書店)など。

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