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ほっとひと息、こころにビタミン vol.62

精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者の大野裕先生が「こころ」の健康についてわかりやすく解説します。

【コラム執筆】
日本認知療法・認知行動療法学会理事長
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表
精神科医 大野 裕

力を抜く勇気を持つ

新年度を迎えて1カ月が経ちました。この間、新しい場所で緊張しながら頑張ってきた人、職場や家庭でそうした人を支えてきた人は多いと思います。こうしたときには、適度に力を抜くことをいつも以上に意識するようにしましょう。慣れない環境で頑張りすぎると、それだけ疲れがたまりやすく、本来の力を出せなくなってくるからです。そうなると、まるで自分に力がないかのように思えてきたりもします。

それまで経験がある仕事であれば、自分の力が分かっていますし、力の抜きどころも分かっています。しかし、新しい仕事の場合にはそうしたことが分からないので、全ての原因が自分の能力にあるかのように思い込んでしまいやすいのです。その結果、遅れを取り戻そうとさらに頑張りすぎて疲れがたまってくるという、悪循環に陥ってしまいます。

そうしたことに気付いたときには、無理に頑張るのではなく、意識的に力を抜くようにしましょう。慣れない環境で力を抜くのは勇気がいります。でも、そうすることで体やこころの疲れが取れて、本来の力を発揮できるようになります。

力を抜くことの効用はほかにもあります。自分が置かれている状況から少し距離を取って、冷静に眺めることができるようになります。そうすれば、自分に不足しているところが分かり、力の入れどころが見えてきます。1人で頑張りすぎていたことに気付いて、ほかの人に相談したり力を借りたりするこころの余裕も生まれてきます。

5月の大型連休なども利用して、ちょっと立ち止まって自分を振り返る機会を持つようにしましょう。

大野 裕(ゆたか)

ストレスマネジメントネットワーク(株)代表。精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者で、日本認知療法・認知行動療法学会理事長。著書に『マンガでわかる心の不安・モヤモヤを解消する方法』(池田書店)など。

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