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離れて暮らす親のケア vol.170

介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子さんが、親と離れて暮らす子の介護に関する悩みや不安について、事例を交えながら親のケアを考えていきます。

「育ててもらった恩」だから離職?

親の介護をしている人から、「育ててもらった恩がある。できる限りのことをしたい」という言葉を聞くことがあります。気持ちは理解できますが、そこにとらわれ過ぎると、人生の幅を狭めてしまうことがあります。

Tさん(50代)の母親は数年前に病気で亡くなり、父親(80代)は実家で1人暮らしをしています。認知症の症状が出ており、介護保険では要介護1と認定されています。居宅サービスを利用していますが、外出して自宅に戻れなくなるなど、1人暮らしが徐々に難しくなってきました。「父には育ててもらった恩があります。東京の大学に行かせてもらい、そのまま地元に戻ることはありませんでした。それに、母が亡くなったとき、私は、子どもの受験で、あまり介護に関われず、父には母を看取(み と)ってもらった恩もあります」とTさん。今、Tさんは悩んでいます。「やりがいのある仕事をしていますが、離職して、父の介護をするべきか」と……。

家族のことや介護のことに正解はありませんが、冷静になるために、自分の立場を置き換えて考えてみてはどうでしょう。子どもがいる方は、将来その子から、「育ててもらった恩がある。仕事を辞めて介護するよ」と言われたら、お願いするでしょうか。ほとんどの人は一蹴するのではないでしょうか。

親のことが心配でも、「仕事を辞めたくない」とか、「辞めれば、経済的に困る」と思うなら、一気に離職に突き進まないことをお勧めします。親にとっても、子が自分のために何かを諦めることが喜ばしいこととは思えません。ケアマネジャーや主治医とも相談し、サービスや、場合によっては施設の利用も検討してみませんか。

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