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ほっとひと息、こころにビタミン vol.21

精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者の大野裕先生が「こころ」の健康についてわかりやすく解説します。

【コラム執筆】
日本認知療法・認知行動療法学会理事長
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表
精神科医 大野 裕

一歩引いて話し合う

少し前に、厚生労働省がパワハラの定義を明確にしたというニュースが流れました。そのニュースを耳にして、ずっと前に、知り合いの中学教師が職員会議での出来事についてこぼしていたのを思い出しました。

議論が白熱して予定の時間通りに会議が終わらなかったときの話です。年配のその教師は、「時間が来たので、後は外に出かけて酒を酌み交わしながら議論を続けよう」と提案しました。すると、若い教師たちが、「飲みに行きたいときには若い仲間と行くから、議論はここで続けたい」と発言したそうです。そのような発言が出たことに、その教師は驚いたと言っていました。

時代が変わると、考え方も変わります。そうしたときに、先輩の意見に従うのが当然だろうと、自分の考えを強要すると人間関係がギクシャクしてきます。場合によっては、パワハラだと責められることになりかねません。

さて、こうした若い教師の対応は良くないのでしょうか。こうしたことがあると、「だから若い人間はダメだ」と若い人が責められる傾向があります。しかし、冷静に考えてみると、問題は問題として話し合って、楽しみはまた、楽しみとして時間を使おうという若い教師の提案は理にかなっているように思えます。

どちらが良い悪いではなく、それぞれに自分が良いと考えていることを提案しているのですから、お互いに一歩引いて、お互いの考えについて話し合うだけの余裕があると、良い関係が築けるようになるのではないでしょうか。

大野 裕(ゆたか)

ストレスマネジメントネットワーク(株)代表。精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者で、日本認知療法・認知行動療法学会理事長。著書に『マンガでわかる心の不安・モヤモヤを解消する方法』(池田書店)など。

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