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健康コラム

離れて暮らす親のケア vol.84

NPO法人パオッコ理事長の太田差惠子さんが、親と離れて暮らす子の介護に関する悩みや不安について、事例を交えながら親のケアを考えていきます。

【コラム執筆】
NPO法人パオッコ
~離れて暮らす親のケアを考える会~
理事長 太田差惠子

こんな人じゃなかったのに……

「親の性格はおおむね理解できている」と考えている人は多いのではないでしょうか。しかし、いざ介護の場面に直面すると「こんな人だっけ」といぶかしく思うことがあるかもしれません。

R子さん(40代)は今年の正月に帰省した際、母親(70代)から「仕事を辞めて、帰ってきてほしい」と言われたそうです。母親は1人暮らしで、足の骨折を機に「要介護1」の認定を受けています。「母は私の仕事をずっと応援してくれていました。あの母が離職を促すとは夢にも思いませんでした……」と。

R子さんの話を聞いていたS男さん(50代)は、大きくうなずきました。「うちの母も変わったなあと思うことがあります。昔は何でも前向きに取り組む人だったのに、今はことごとく否定します。病院に行こうと言っても行かない。介護保険の申請をすることも嫌がるし、ヘルパーさんのことも『他人が家に入ると疲れる』と却下。説得するのに、ほとほと疲れました」と話します。

からだが不自由になると心細くなり、環境の変化を受け入れられなくなることもあるのでしょう。だからと言って、親の意向を何でもかんでも受け止めようとすると、子の人生設計は音を立てて崩れかねません。冷たいようでも、時には「それはできない」とか、「ヘルパーを家に入れないからといって、僕が頻繁に来られるわけではない」と話すことも必要です。その上で、根気強く介護サービスの利用を勧めましょう。親にとっても、子が自身の介護で苦しむことは本意ではないはずです。

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