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ほっとひと息、こころにビタミン vol.16

精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者の大野裕先生が「こころ」の健康についてわかりやすく解説します。

【コラム執筆】
日本認知療法・認知行動療法学会理事長
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表
精神科医 大野 裕

人間関係のコツは微調整

自分の言動がまわりからズレているのではないかと悩んでいる人は少なくありません。日本は同調圧力の強い社会で、他の人とあまりズレないように発言したり行動したりすることが期待されます。

そのために、他の人の言動がどうしても気になりますし、人と話がかみ合わないことがあると、自分の言っていることがどこか間違っているのではないかと心配になります。その結果、自信をなくして自分の世界に閉じこもりがちになることもあります。そうするとますます人間関係がうまくいかなくなって、自分を追いつめることになるので注意しなくてはなりません。

しかし、そのような心配をしている人は、そんなに悩む必要はないと、私は考えています。心配になるということは、それだけまわりに対して気を配ることができているということでもあります。人間関係がうまくいかないのは、周囲とのズレに気付かないだけでなく、そもそも「自分がまわりとズレているのではないか」と気にすることもないような人の場合です。

ですから、そのようにまわりに気配りできる自分の力を信じるようにしてください。その上で、どのような場面でズレを感じたのか、そのときにどのようなことが起きていたのか、そこにどのような問題があるのかについて、具体的に考えてみてください。もし何か現実的な問題があれば、その問題を少しでも解決できるよう工夫してみてはいかがでしょうか。

そのように現実との関係を微調整できる余裕を持つことができれば、人間関係は自然に良くなってくるはずです。

大野 裕(ゆたか)

ストレスマネジメントネットワーク(株)代表。精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者で、日本認知療法・認知行動療法学会理事長。著書に『マンガでわかる心の不安・モヤモヤを解消する方法』(池田書店)など。

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