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ほっとひと息、こころにビタミン vol.58

精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者の大野裕先生が「こころ」の健康についてわかりやすく解説します。

【コラム執筆】
日本認知療法・認知行動療法学会理事長
ストレスマネジメントネットワーク(株)代表
精神科医 大野 裕

周囲に合わせるか否か

新型コロナウイルスの感染拡大が続いており、感染の心配をしている人も少なくないと思います。そうした中、年末から年始にかけて会食の機会が増えた人もいると思います。感染の心配をしながらも、顧客対応や先輩の誘いを断れず、会合に出席して、断れない自分を情けないと考えている人もいるでしょう。

会合の食事の内容が決まっているコース料理であれば良いのですが、最近ではそれぞれの参加者が自分の希望で料理を選ぶこともあります。そうしたときに、自分が注文したい料理があっても、他の人から薦められた料理や他の人たちが選んだ料理に合わせて注文して、自己主張できない自分の主体性の無さを後悔することもあります。

だからといって、自分が食べたい料理を注文したとしても、他の人との調和を乱したような感じがして、スッキリしないこともあります。周りに合わせても、自己主張しても、スッキリしません。

それは、自分の行動に目が向き過ぎているからではないでしょうか。こうしたときには、どのように行動するかではなく、自分が何を大事にするかを考えてはどうでしょう。他の人との調和を大事にしたければ、他の人に合わせるのが良いでしょう。自分の気持ちや考えを大事にしたいのであれば、他の人の気持ちや行動は気にしないで、自分の希望を伝えれば良いのだと思います。

いずれにしてもスッキリと結論を出すことはできません。私自身は、そうした現実を受け入れて、自分にとって何が大事かを意識しながら判断するようにしたいと考えています。

大野 裕(ゆたか)

ストレスマネジメントネットワーク(株)代表。精神医療の現場で注目されている「認知行動療法」の日本における第一人者で、日本認知療法・認知行動療法学会理事長。著書に『マンガでわかる心の不安・モヤモヤを解消する方法』(池田書店)など。

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