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健康コラム

離れて暮らす親のケア vol.61

NPO法人パオッコ理事長の太田差惠子さんが、親と離れて暮らす子の介護に関する悩みや不安について、事例を交えながら親のケアを考えていきます。

【コラム執筆】
NPO法人パオッコ
~離れて暮らす親のケアを考える会~
理事長 太田差惠子

どんなときに「施設」を決断?

在宅か施設か……、と離れて暮らす親の介護方法に頭を痛めている子は多いようです。しかし、本来、親の人生ですから施設に入るかどうかは、親本人が決めることだといえます。とはいえ、在宅に限界があるのも事実です。

Tさんの実家では、70代後半の父親と母親が暮らしていました。骨粗鬆症から、母親は骨折を繰り返し、ほぼ寝たきりの生活で、父親が介護していました。Tさんは育児と仕事があり、そうそう実家に行くことはできなかったといいます。正月に帰省した際、父親が苛立ちながら母親を怒鳴りつける様子を何度も見ました。母親の腕には殴られたような大きなあざも……。父親を問いただすと、「お母さんがいうことを聞かないんだ……」と泣くのでした。Tさんは正月明けを待ち、母親の担当ケアマネジャーに会いました。さらに、役所にも相談。父親の行為は「虐待」とみなされ、母親は、緊急枠で特別養護老人ホームに入れることになりました。「もっと早く、父の苦しみに気づくべきでした」とTさんは悔いています。

在宅の限界のひとつは、介護者が疲れから病気になったり、虐待に走ったりするときだといえるでしょう。一方、一人暮らしの場合は、食事をとらない、火の始末ができないなど命の危険があるとき。

限界を超えると、親も子も悲しみを負うことになります。帰省できなくても、電話などでのコミュニケーションを深め、もう少し早い段階で親の異変に気づきたいものです。限界を迎える前に、在宅サービスを増やすか、施設入居を検討するなど手立てを講じましょう。

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