健保ニュース
健保ニュース 2026年9月中旬号
電カル情報共有サービス
今冬の全国運用を目標
医療部会 厚労省が今後の対応方針
厚生労働省は8月27日の社会保障審議会医療部会(部会長・遠藤久夫学習院大学長)に、電子カルテ情報共有サービスの今後の対応方針を提示した。今年冬頃に全国での運用開始を目指す。現在は技術解説書(システムの仕様書)の改訂やモデル事業による検証を進めている。
厚労省は普及促進に向けて、まずは地域医療連携の中核を担う地域医療支援病院を中心に利用体制の整備を進めるとした。医療介護総合確保法で同病院に対し、体制整備を努力義務として課している。
今夏に国が策定する普及計画の効果などを踏まえながら、同病院以外の医療機関への努力義務の対象拡大についても検討する。医療と介護の連携に関する情報など、全国医療等情報プラットフォームで取り扱う情報も拡充するとした。
また、厚労省は全国10地域で実施しているモデル事業で得られた課題とその対応策を説明した。例えば感染症情報については、医師が患者に説明する前に検査結果が共有されることが懸念されており、医療機関向けと患者向けで情報共有のタイミングを整理する方針を示した。
食品アレルギー情報については、医療機関ごとに異なるコード体系が用いられていることから、正確な情報共有に向けてコードの対応関係(マッピング)の整理を進めるとしている。
このほか、医療従事者向けの利用指針の策定や医療機関で活用する資材の整備、国民への広報など、本格運用に向けた環境整備を進めていると説明した。
健保連の伊藤悦郎常務理事は、電子カルテ情報共有サービスについて、運用開始時に地域医療支援病院を中心に普及させていく方針に対し「特定機能病院や災害拠点病院も情報連携が重要な医療機関だ」と述べ、これらの医療機関への早期導入を求めた。また、近く策定される普及計画でも、多くの医療機関で速やかな導入が進むよう実効性のある施策を盛り込むべきだと訴えた。
長島公之委員(日本医師会常任理事)は、モデル事業で様々な課題が示されていることを踏まえ、全国一律の普及を急ぐのではなく、安全性を確保しつつ段階的に進めるべきだと主張した。また、地域医療支援病院に利用体制整備を求めるならば、環境整備や費用面の支援をセットで行う必要があると強調した。
このほかの委員からは、電子カルテ情報共有サービスの推進に理解を示す声が目立った。一方で、導入にあたってはベンダーによる電子カルテの改修作業が追い付いていないとの懸念や、医療現場や患者が十分にメリットを享受できる仕組みとなるよう求める意見があった。
医療情報化推進方針案
歯科医療DXの目標も報告
この日の医療部会で厚労省は医療情報化推進方針案と歯科における医療DXの目標や工程表案も示した。
医療情報化推進方針案について、委員からは方向性におおむね理解を示す声が目立った。
一方で、方針案に掲げられている全国医療等情報プラットフォームの構築にあたっては、「システムの整備や運用に必要な財源と負担のあり方について議論すべき」「精神科病院など電子カルテが普及していない医療機関へ導入に必要な財政支援を求める」などの意見が出た。
伊藤常務理事は、保険者が健診結果報告書をオンラインで受け取れる仕組みについて、加入者の健康増進や保険者業務の効率化につながると期待を示した。一方で方針案からはオンラインで健診結果報告書を受け取ることができる仕組みの整備について十分に読み取れないと指摘し、どのように位置づけられているのか説明を求めた。
これに対し厚労省は、健診結果報告書は電子カルテ情報共有サービスで共有する「三文書」に含まれており、運用に向けてシステム開発などの準備を進めていると答えた。
歯科における医療DXについて、内堀典保委員(日本歯科医師会副会長)は、歯科医療機関の多くは電子カルテではなく、カルテ作成を支援するレセプトコンピュータを利用している実態を踏まえ、導入時期や経済的負担に配慮しながら無理なく移行できる仕組みとするよう要望した。
また、歯科分野のレセコンでは多数の中小ベンダーが独自のシステムを提供していると説明した。レセコン改修の対応ができないために事業者が淘汰されれば、既存システムを利用する歯科医療機関にも影響が及びかねないとして、地域医療への影響に十分配慮しながら慎重に進めるよう求めた。