健保ニュース
健保ニュース 2026年9月中旬号
厚労省 9年度概算要求
過去最大 一般会計総額36.5兆円
社会保障の自然増3400億円
厚生労働省は8月26日、令和9年度予算の概算要求を公表した。一般会計総額は前年度比1兆5370億円増の36兆5803億円で過去最大を更新した。医療や年金などの社会保障費は、高齢化などによる自然増を踏まえて同3397億円増の33兆6872億円となった。
高市内閣が掲げる予算要求に上限を設けない「強く豊かな日本」投資枠には、創薬・先端医療分野などで1兆337億円を計上した。
社会保障費の自然増は政府全体で3900億円と見込み、このうち厚労省分の3397億円の内訳は、医療が約2000億円、障害福祉や年金などで約1400億円となっている。
政府が7月30日に閣議了解した概算要求基準では、年末までの予算編成過程で、「高齢化による増加分に相当する伸びに、経済物価動向などを踏まえた対応に相当する増加分を加算」すると明記されている。厚労省の概算要求には、金額を示さない「事項要求」も多く盛り込まれており、総額はさらに膨らむ可能性がある。
各省庁の重要政策に充てる裁量的経費は昨年と同様、20%増まで要求できるが、投資枠の活用や事項要求も認められており、前年度から1兆1125億円増の1兆8426億円を計上した。人件費などの義務的経費は、848億円増の1兆506億円と見積もった。
厚労省は9年度の概算要求で、(1)戦略分野を中心とした官民連携の国内投資の徹底(2)賃上げ環境整備・労働市場改革などの分野横断的な課題への対応(3)持続可能な社会保障制度の構築、安全・安心の確保、包摂的な地域共生社会の実現など──の三つを重点要求の柱に据え、(1)と(2)は投資枠を積極的に活用するとした。
(3)は①地域医療・介護の提供体制の確保②攻めの予防医療と疾病対策など③安定的で持続可能な医療保険制度・介護保険制度の運営確保──などに取り組む。薬価改定や経済・物価の動向が8年度診療報酬改定時の見通しから大きく変わり、医療機関の経営状況に支障が生じた場合の診療報酬の調整などについては、予算編成過程で検討する。
①は2040年に向けた地域医療構想や勤務医の労働時間短縮、在宅医療、業務効率化などを推進するための地域医療介護総合確保基金による支援といった、将来の医療需要に対応した医療提供体制の整備・強化に868億円(前年度比49億円増)などを盛り込んだ。
②は投資枠を活用した「国民皆歯科健診」の推進や、データヘルスを基盤とした「AI予防医療モデル」の構築など、攻めの予防医療の重点施策に493億円(うち投資枠176億円)を要求した。AI予防医療モデルの構築は50億円(全額投資枠)を計上し、基盤整備を進めるとともに、保健事業の成果を創出するため、保険者へのインセンティブを通じて実績データなどを集約する。
③は各医療保険制度などに関する医療費国庫負担に10兆7141億円(前年度比1575億円増)。国民健康保険と被用者保険への財政支援にそれぞれ前年度と同じ3071億円、1453億円を計上した。
医療費国庫負担の制度別内訳は、協会けんぽが1兆2692億円(同596億円増)、国保が3兆1002億円(同36億円減)、後期高齢者医療が6兆3446億円(同1015億円増)。公費負担医療の1兆9886億円(同446億円増)を合わせると12兆7026億円(同2021億円増)に上る。
被用者保険への財政支援の内訳は、高齢者医療特別負担調整交付金が200億円、高齢者医療運営円滑化等補助金が950.4億円、健康保険組合連合会交付金交付事業費負担金が300億円、被用者保険の適用拡大に係る健保組合への支援が2.5億円で、いずれも前年度と同額となっている。
投資枠活用し創薬強化
スタートアップ支援など
(1)は今回の概算要求の目玉として、成長戦略で重視する17分野のうち、創薬・先端医療やデジタル・サイバーセキュリティーなどに関する施策を並べた。国内投資を起点に成長軌道への復帰を目指す。
創薬・先端医療分野は、計1969億円(+事項要求)(うち投資枠1883億円)を計上し、欧米で承認された医薬品が日本では使えない「ドラッグロス」の解消など患者アクセスの改善に向け、創薬力を強化する。
スタートアップ(新興企業)支援・人材育成に355億円、国際水準の治験・臨床試験を実施できる環境整備に155億円、創薬・薬事審査のためのAI利活用の環境整備に541億円(+事項要求)を見込む。
デジタル・サイバーセキュリティー分野では、医療DXを推進するため、国の認証を受けたクラウドネイティブ型電子カルテの普及支援や医療機関のサイバーセキュリティー対策の強化、全国的なデータ連携基盤の整備などに計934億円(+事項要求)(うち投資枠928億円)を要求する。
(2)は医療従事者の安定的な養成体制の確保など、医療や介護、福祉などの現場を担うエッセンシャルワーカーの確保に138億円(全額投資枠)を計上した。
医療設備の特別償却
適用拡充と延長を要望
9年度の税制改正要望では、医療提供体制の確保につながる設備の特別償却制度について、適用要件を見直して拡充し、期限を延長するよう求めた。適用要件の見直しは今後、財務省と協議しながら具体的な検討を進める。
特別償却は通常の減価償却より多額を経費として計上することを認め、税負担を軽くする措置。現状、同制度の対象は▽医師・医療従事者の労働時間短縮のための設備(特別償却割合:取得価格の15%)▽地域医療構想の実現のため、民間病院が病床再編で取得する建物(同8%)▽500万円以上の高額な医療用機器(同12%)──の三つで、いずれも今年度末で期限を迎える。
このほか、家事支援サービスやベビーシッターの利用者に税制上の優遇措置を講じ、子育てや介護などによる離職やキャリアの中断を防ぎ、仕事と子育て・介護の両立を後押しする。