健保ニュース
健保ニュース 2026年8月下旬号
医療関係職種の確保策
医療部会 養成校への財政支援求める声
厚労省が検討状況を報告
厚生労働省は7月24日の社会保障審議会医療部会(部会長・遠藤久夫学習院大学長)に、「医療関係職種の安定的な養成・確保に関する検討会」での検討状況を報告した。委員からは、養成校への財政支援や担い手の処遇改善などを求める意見が相次いだ。厚労省はこの日出た意見を検討会に共有し、今後の議論を深めるとしている。
検討会は、2040年に向けて高齢者数の増加と生産年齢人口の減少が一層見込まれる中、地域で必要な看護師や理学療法士など、医師を除く医療関係職種の安定的な確保策を検討することを目的に、5月に設置された。今後、冬頃に議論を取りまとめ、医療部会に報告する。
同月の経済財政諮問会議でも、2040年に向けた社会保障の担い手確保が「目指すべき姿」として示されており、デジタル・AI時代の変化に対応した人材の確保や養成、将来需要を見据えた次世代型インフラの構築について、こども家庭庁、文部科学省と来年度から集中的に取り組むとしている。
検討会はこれまで計3回開催され、①医療関係職種を取り巻く現状②地域の養成・確保体制③専修学校の現状、学校養成所の運営・養成課程など──を議論した。
①は人口の推移などで地域に求められる医療提供体制がそれぞれ異なる中、▽近年、医療関係職種の養成を担う大学や専門学校の定員充足率が低下傾向▽看護職は実習先の確保が困難──といった課題を検討会内で共有した。
こうした課題認識に基づき、医療関係職種の養成・確保に向けて「養成体制の整備」「現場へのつなぎ支援」「働く環境の整備」「地域における推進体制の整備」の4つを柱に議論した。
②は地域で必要な医療が持続的に提供される体制を整備するため、▽都道府県ごとに各養成校の教育・運営状況などを密に把握すること▽医療人材の需要・供給の把握により必要な「成り手」の確保策や、養成体制の連携・再編などの方策を定め、計画的に実施すること──などを論点とした。
③は養成校が教育の質の確保のため、専任教員の配置や施設設備について一定の基準を設けているが、教員の負担や入学者の減少など運営上の課題があるとした。
その上で、教育の質を維持・向上しつつ、教員の負担を軽減するため、養成校間の連携や、サテライト形態での運営を進めることなどを議論した。また、意欲のある多様な人材が参入しやすい養成課程にしていく必要性・課題などを整理した。
厚労省は検討会のこれまでの議論を踏まえ、この日の部会に「地域における養成・確保体制の構築のイメージ」を提示した。例えば、安定的な養成体制の構築策として▽人口規模に応じ養成校の規模や体制を縮小・再編▽遠隔授業やサテライト校の活用によって、演習などへ参加できる機会を確保──することなどを挙げた。
健保連の伊藤悦郎常務理事は検討会の議論の方向性に賛同する一方で、具体的な取り組みを進めるにあたっては、体制整備や、養成校のカリキュラムの見直しなどの中長期的な課題と、働く環境の好事例を横展開するといった短期的な課題に整理し、実施できるものから速やかに対応するよう求めた。
また、養成校の定員充足率は職種によって差が生じていることや、養成校は人口規模の大きい県に集中しており、小規模県との間で大きな差がみられると指摘。より効率的に人材の養成や確保を進めるため職種別、地域別にどの程度人材が必要かを見通して議論することが重要だと主張した。
長島公之委員(日本医師会常任理事)は、看護師をはじめ医療関係職種の養成校の廃校が増加していることは非常事態だと訴えた。経営上の理由などで廃校を予定している養成校に対し、国が財政支援するよう要請した。
また、医療人材の確保策については、処遇改善が最も重要だとし、高い専門性や責任に見合った処遇でなければ、担い手を安定的に確保することは困難だと述べた。
このほか、医療人材の人員配置基準の緩和や医療職の魅力向上、潜在人材の活用などを求める意見が目立った。
健保連・伊藤常務
骨太方針の方向性を評価
厚労省はこの日の医療部会に、7月21日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」や「日本成長戦略」などの医療分野に関する事項について概要を報告した。
健保連の伊藤常務理事は骨太の方針に「現役世代の保険料率を引き下げていくとの方向性が明確に示された。健保組合の立場として前向きに受け止める」と評価した。
一方で、今後、規制の見直しや制度改正が検討されるが、政策によって一定のコストがかかるとし、検討項目に応じて「税制上の措置」「公費による補助」「診療報酬」で対応するものを明確に分け、財源の考え方を整理するよう求めた。
骨太の方針には「社会保障関係費について現役世代の保険料率の上昇を止め、引き下げていく」や、「27年度の社会保障負担率(国民所得に占める保険料の割合)が25年度と比較して上昇しないよう取り組む」などの文言が明記されている。
出席した委員からは医療機関の老朽化対策や、医療人材の確保・処遇改善、医師偏在対策など、骨太の方針に明記された施策の着実な実施を求める意見も出た。