健保ニュース
健保ニュース 2026年8月下旬号
給付付き控除の基本方針を閣議決定
食料品消費税 来年度から1%に引き下げ
首相「社会保障に影響出さない」
政府は5日の臨時閣議で、「給付付き税額控除の制度導入の基本方針」を決定した。7月29日の第2回社会保障国民会議での中間取りまとめを踏まえ、中低所得者の税・社会保険料の負担を軽減するため、「所得に連動したきめ細かな給付」を令和11年度に導入する。導入までの「つなぎ」として、9年4月から2年間限定で、飲食料品の消費税率を現在の8%から1%に引き下げるとともに、残る1%分の所得連動給付を9年度に先行導入することで、飲食料品の消費税率を「実質ゼロ」にする。必要な財源は明示されていないが、臨時閣議後に記者会見した高市首相は、「消費税が貴重な財源である社会保障にも影響が出ないように、しっかりと対応する」と述べた。関連法案を秋の臨時国会に提出し、早期成立を目指す考えだ。
政府は今後、給付付き税額控除の制度導入に向け、この基本方針に沿って対応する。
高市首相は閣議後の記者会見で、租税特別措置や補助金の見直しを徹底することで、所得連動給付とつなぎについて、「必要な財政需要に十分に対応できる」と自信を見せた。
また、7年度補正予算と8年度予算で、国債の新規発行額を抑制したことから、「財政の持続可能性と市場の信認確保にも十分配慮した財政運営を行ってきた」と強調。こうした取り組みにより、消費税を減税しても社会保障に影響を出さないようにするとした。
所得連動給付の対象は、諸外国と比較して純負担率((税・社会保険料負担-給付)÷世帯収入)の改善が必要な中低所得の現役勤労者。就労し純負担が現役並みの中低所得の高齢者も含める。
中低所得者の税と社会保険料の負担軽減を通じ、所得に応じて手取りが一層増えるようにするとともに、年収の壁による働き控えを緩和することで就労促進につなげることを目指す。
給付は個人単位とし、勤労性の所得に応じて給付額を段階的に増やす。所得が一定額を超えた場合は、総所得に応じて段階的に減らす。具体的な給付額や所得水準は、純負担の国際比較などを参照しつつ、年末の予算編成に向け、恒久財源の確保と併せて検討する。
加えて、就労促進の観点から、年収の壁を越えた人への一定の加算を設ける。子育て世帯への配慮として、18歳以下の子どもの人数に応じた加算を用意する。
一方で、公平性の観点から、高所得の配偶者がいる場合の例外も設ける。
給付の執行にあたっては、国と地方が協力して運営し、「オールジャパンの事務負担を最小化していく」ことを基本に、役割分担する。システム面など全国一律とした方が効率的なインフラ整備は国が担い、住民との接点は自治体が対応する方向で検討し、両者で丁寧な協議を行うとした(8月10日初会合)。
制度導入までのつなぎは、実務者会議の議長案として示された食料品の消費税率の1%への引き下げと、所得連動給付の先行実施を組み合わせて実施する。
消費税率の変更に柔軟に対応できるシステムの普及促進と、減税から所得連動給付への円滑な接続のための措置を講じることも盛り込んだ。
給付の財源は、補助金や租税特別措置の見直しなど「歳出・歳入のあらゆる見直しを通じて確保する」とし、今後の予算編成改革の具体化の状況を踏まえ、早期に結論を得る。
つなぎの財源も同様の方針で、9年度予算の編成過程で検討する。
いずれも、財源の確保にあたっては、市場の信認を損なわないよう、特例公債(赤字国債)には頼らない。また、「地方の財政運営に支障が生じないよう、適切に対応する」とした。
11年度に導入する所得連動給付は、「本格的な給付付き税額控除を導入する第一歩」だとして、将来像についての検討を継続する。
また、デジタル技術を活用して事務負担の軽減に取り組みつつ、実務面の環境整備に合わせて段階的に精緻化するとした。
具体的には、▽医療保険制度での取り組みを踏まえた金融所得の勘案への対応▽預金の利子所得の勘案に向けた検討▽資産保有による経済力の勘案の検討──を挙げた。
給付付き税額控除の検討過程で明らかになった社会保障制度の課題には、年金制度や生活保護など既存の制度との関係の整理や、第3号被保険者制度の見直し、被用者保険の適用拡大のさらなる加速などを挙げた。12年の次期年金法改正までに結論を得る。
また、純負担率の引き下げや応能負担の徹底、所得再分配機能の強化などの観点から、「医療・介護制度改革をはじめとする社会保障・雇用の各制度見直しについて、ロードマップを描きながら継続的に議論する」とした。
国民会議の中間まとめ
減税は各党賛否分かれる
7月29日に開かれた国民会議では、高市首相(自民党総裁)ら8党の党首らが官邸に集まり、実務者会議の小野寺五典議長(自民党税制調査会長)が示した中間とりまとめ案について意見を表明した。所得連動給付には賛成の意見が多かったが、導入までのつなぎに位置づける消費税減税は賛否が分かれた。
日本維新の会の藤田文武共同代表は、所得連動給付とつなぎの消費税減税の両方に賛成した。所得連動給付に対しては、「日本の再分配の適正化という意味で非常に意義深い」と評価する一方で、将来的には税額控除と給付を適切に組み合わせた制度設計にするよう注文を付けた。
国民民主党の玉木雄一郎代表は、所得連動給付に賛成、減税に反対した。給付については、藤田氏と同様に、「給付と控除の組み合わせとなるよう、引き続き検討すべき」とした。また、地方の事務負担に配慮し、マイナポイントでの配付を提案した。
減税に対しては、「2年後に実質増税になる時の緩和策も考えないと、かえって中間層に大きなダメージになる」などと課題を指摘し、代替案として住民税の控除額引き上げによる減税と中低所得の勤労者への先行給付を示した。
中道改革連合の小川淳也代表も、所得連動給付に賛成、減税に反対した。所得連動給付について、対象となる勤労者の範囲を拡大するため、「勤労性所得の最低ラインは、雇用保険の適用となる収入約53万円超で検討してほしい」と要望した。また、病気などで働きたくても働けない人への給付と就労支援の一体的な実施を求めた。
実施までのつなぎは、「来年4月を待たず、速やかに定額給付を行うという考え方もあっていいのではないか」と提案した。
立憲民主党の水岡俊一代表は所得連動給付と減税ともに反対した。給付対象に勤労性の所得が無い人が含まれないことを問題視した。
つなぎについては、消費税減税にこだわらず、「これまでに執行実績のある住民税非課税世帯などを対象とした給付など、速やかに実施できる給付を年内に行うべきだ」とした。
公明党の竹谷とし子代表は明確な賛否を示さなかった。所得連動給付の実施に向けては、所得把握の精度向上や、働くことが困難な人への支援について、不断の検討が不可欠だとした。
食料品の消費税率の引き下げは、財源を確保した上で、恒久的に実施すべきと主張。所得連動給付と食料品の消費税減税は、役割と政策目的が異なることから、「両者を相互に補完し合う施策として検討すべき」とした。
チームみらいの安野貴博党首は、所得連動給付に賛成、減税に反対した。
日本保守党の百田尚樹代表は、所得連動給付に反対、減税に容認の姿勢を示した。
各党党首の意見を受けた高市首相は、特につなぎの対応に賛否があるものの、「税、社会保険料負担や物価高に苦しむ国民に十分な負担軽減を早期に実現する必要があるという問題意識は各党とも共通する」として、早急に政府・与党としての方針をまとめる考えを示した。
また、社会保障制度の課題については、「今後、国民が納得できる給付と負担のあり方を、党派を超えて実現したい」と述べ、協力を求めた。