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健保ニュース 2024年1月下旬号

中医協が医療等職員の賃上げ議論
40歳未満勤務医等 評価手法に意見二分
実績報告のあり方も論点に

中医協総会は10日、令和6年度の次期診療報酬改定に向けて、「医療機関等における職員の賃上げ」をテーマに議論した。

昨年末の大臣折衝で診療報酬本体改定率0.28%程度を充当した40歳未満の勤務医師等の賃上げに向けて、厚生労働省は広く算定されている診療報酬項目で評価する対応を提案。加算による評価を主張する支払側に対し、診療側は初再診料や入院基本料の引き上げを強く求めた。

社会保障審議会医療保険部会および医療部会が昨年12月11日に決定した「令和6年度診療報酬改定の基本方針」は、「現下の雇用情勢も踏まえた人材確保・働き方改革の推進」を重点課題に位置づけ、医療従事者の人材確保や賃上げに向けた取り組みについて明記。

昨年12月20日の6年度政府予算編成の重要事項にかかる財務、厚労両大臣の折衝では、①40歳未満の勤務医師・勤務歯科医師・薬局の勤務薬剤師、事務職員、歯科技工所等で従事する者の賃上げに資する措置分0.28%程度②看護職員、病院薬剤師その他の医療関係職種(①を除く)について、6年度にベア2.5%、7年度にベア2.0%を実施していくための特例的な対応0.61%─を決定した。

このうち、②については、入院・外来医療等の調査・評価分科会で、シミュレーションも含めて技術的な検討を行い、委員から、▽外来については簡素な制度設計が必要▽診療所について、初再診料による収益が多くない施設には対応が必要▽病院について、一律に設定することで十分な補填ができない施設があるなら、きめ細やかな対応が必要─などと指摘された。

こういった現状と課題を踏まえ、厚労省は、(1)分科会における技術的な検討も踏まえ、看護職員、病院薬剤師その他の医療関係職種の賃上げに向けた対応(2)勤務形態等が多様である40歳未満の勤務医師、薬局の勤務薬剤師、事務職員の賃上げに向けた評価は、広く算定されている診療報酬の項目で評価を行う対応(3)賃上げに向けた対応を行う場合に、実績としてどのような報告を求めるか。40歳未満の医師や事務職員等の賃上げについても一定の報告を求める対応─を論点として示した。

論点(1)について、診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、「外来や在宅は、患者の自己負担額に大きな影響を与えるため、できるだけシンプルな制度設計にすることを基本軸とすべき」と言及したうえで、「医科診療所は一律の評価とすることが、医療機関、患者にとって一番理解しやすい」と主張。その場合でも、初再診料の算定が少ない等の事情により、賃金増率が目標とされる2.3%に届かない医科診療所に対しては、各診療所が自院の状況も踏まえて不足額の補てんを申請できるような追加的な仕組みとすることが不可欠と訴えた。

論点(2)について、健保連の松本真人理事は、「初再診料や入院基本料に溶け込ませることは、一律的な基本診療料の底上げという極めて重要な案件であり、医療経済実態調査で明らかになった病院と診療所の経営状況の格差や職員配置の違いを反映することが困難になる」と指摘。

さらに、「そもそも患者が受けたサービスの対価である最も基礎的な部分のあり方について、データにもとづき時間をかけて議論を尽くす必要がある」との認識を示したうえで、「基本診療料への上乗せで対応するとしても、何らかの条件をつけた加算や別途評価を検討すべき」と強く求めた。

支払側の佐保昌一委員(日本労働組合総連合会総合政策推進局長)も、「別建ての加算評価とし、実績報告を求め、きちんと検証できるようにした方が良い」との考えを示した。

一方、長島委員は、「40歳未満の勤務医師は、常勤で勤務する病院と非常勤で勤務する病院を組み合わせた勤務形態や、専門性を追求するために医療機関を移動することも多い点などもある」と述べ、「1つの医療機関で継続して勤務することを想定した賃上げモデルが当てはまらない場合も多々あることが想定される」と問題提起した。

また、「事務職員についても、派遣や委託等の雇用形態により、医療機関ではベースアップを担保できないことも考えられる」として、「こうした実態を踏まえれば、賃上げにあたり、初再診料や入院基本料を引き上げることが唯一の方法だ」と主張。

配分の方法は、雇用している医療従事者の属性や構成に応じ、ある程度、各医療機関の裁量で決定できることが現実的との見方を示した。

診療側の太田圭洋委員(日本医療法人協会副会長)は、「ただでさえ複雑な診療報酬体系のうえに新たな加算を階段の上に積んでいく形は好ましくない」と言及し、0.28%分は入院基本料に上乗せするよう希望した。

論点(3)について、健保連の松本真人理事は、「どのような形で評価に上乗せするとしても、計画と実績の報告は不可欠だ」と強調し、期中に職員数や患者数が一定程度変化した場合の対応も予め検討しておく必要があるとした。

長島委員は、「報告で重要なことは、賃上げにかかる評価の効果を把握することだが、40歳未満の勤務医師等は、勤務形態などから極めて困難なところもある」と指摘し、「賃上げにかかる評価による収入と賃上げにかかる支出の総額が把握できれば十分だ」と主張した。

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