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健保ニュース 2023年12月中旬号

「あしたの健保組合を考える大会」
宮永会長 さらなる改革が必要
先頭に立って取り組む

健保連大阪連合会(久保俊裕会長)は6日に大阪市内で「あしたの健保組合を考える大会PART7」を開催し、大阪府内および近畿地区の健保組合関係者220名が参加した。

健保連の宮永俊一会長は、閉会のあいさつに立ち、今臨時国会で令和5年度の補正予算が成立し、6年度の政府予算の議論が本格化するなか、特に政府が最重要課題に位置づける少子化・子育て対策は財源確保のための新たな支援金制度の検討が大詰めを迎えると指摘。

少子化対策は国の重要課題とする一方で、「財源は全世代で支えるべきで、現役世代の理解や納得を得ながら丁寧に進める必要がある」と主張した。

また、6年に1度の診療報酬・介護報酬のダブル改定について、現在の賃金・物価の動向を考慮しつつも、「医療費の増加基調と医療保険制度の持続可能性を考慮すれば、安易に引き上げる環境にはない」との考えを示した。他方、看護・介護従事者の処遇改善などを考慮し、総合的にメリハリの利いた改定とすべきと訴えた。

負担を将来世代に先送りせず、国民皆保険制度を持続可能でより良い制度として将来世代に引き継いでいくためには、全世代型の社会保障制度を構築するさらなる改革の実現と質が高く効果的・効率的な医療を提供するための医療DXの推進が必要と言及。健保組合が保険者機能を一層発揮し、誰もが健康で生き生きと活躍できる社会の創出に貢献していくため、先頭に立って取り組む決意を表明した。

少子化財源テーマに講演
西沢氏 支援金制度は安易な財政調整

6日に開催された健保連大阪連合会「あしたの健保組合を考える大会PART7」では、「どうする?健康保険組合~財政危機・少子化対策財源問題~」をテーマに日本総合研究所理事の西沢和彦氏が講演した。

西沢氏は、政府が検討する少子化対策財源の「支援金制度(仮称)」は安易な財政調整の延長だと問題提起。理論的に正当化できないとし、保険者に納得性のある対応を求めた。

西沢氏は、社会保険は社会保障という目的を実現する方法のひとつで、自立した個人の負担に給付が対応する仕組みであり、「自助と共助のミックスで成り立つ、守っていくべき美しい概念で、推進は担い手である皆さんの役割」と強調した。

そうした社会保険に「止むことのない逆風がある」と言及。その1つに高齢者医療への支出の増大をあげた。社会保険料を用いた財政調整は、1979年の一般消費税導入が頓挫したことによる「増税なき財政再建」を背景に、1982年の老人保健制度から導入されたと説明。

健保組合の高齢者医療支援金は年々増加し、2021年度には3.7兆円に達したことを示し、「理由は高齢者の増加だけではない」と指摘した。前期高齢者納付金の導入や後期高齢者支援金の総報酬割導入・拡大など、国の一般会計予算の制約の下で、再配分の仕組みが人為的に利用されていると説明し、「税から目を背け、40年間、安易な財政調整が繰り返されてきた結果」と危機感を露わにした。

そのうえで、政府が示す少子化対策の「支援金制度(仮称)」も安易な財政調整の延長だと問題提起。▽社会保険自治の侵害▽出生率引き上げはリスク発生への備えである社会保険に不適合▽高所得者・資産家・年金受給者優遇▽逆進的負担▽正規雇用の抑制▽負担と給付の対応が存在しない▽社会保険財政を圧迫▽制度複雑化─の観点から理論的に正当化できないと言及。

議論が続くのであれば、保険者に納得性があるよう、①保険者は「賦課・徴収ルート」を国に貸し、「支援金」ではなく国による「賦課金」などにする②あくまでも債権者は国③租税を前提とした時限措置─を明確化するよう提言した。

他方、西沢氏は、「民主的な意思決定に向け多くの人が各地で議論し、医療改革に知恵を発揮すべき」との考えを示し、レカネマブのような高額薬にどこまで保険給付できるか、国の審議会ではできない率直な議論が健保組合では可能と述べた。

また、新型コロナ禍で発生した診療拒否を例に「いざという時に現物給付が受けられないと、保険料を支払う意義が問われかねない」と述べ、医療提供体制を変える必要性を指摘し、健保組合に変革のリード役を期待。特にプライマリケアの制度整備を最重要課題とした。

保険者としてビジョンを持ちながら逆風に抗って進んでほしいと述べ、講演を締め括った。

西沢氏の講演後、実施された質疑応答では、大阪港湾健保組合の佃博常務理事が健保組合の財政と施策について質した。西沢氏は、「支援金の負担減は強く主張すべき」と応じるとともに、医療機関の評価など、被保険者にとって有意義な情報を提供し、健保組合の価値向上を図ることを提案した。

久保大阪連合会会長
現状課題を打開し本来機能発揮を

健保連大阪連合会の久保俊裕会長は、「あしたの健保組合を考える大会PART7」の冒頭あいさつで、進行する少子高齢化の影響による労働人口の減少を危惧。一方、6月13日に政府が閣議決定した「こども未来戦略方針」に盛り込まれた少子化対策では、財源の具体策を示さずに年末までに結論を先送りしたと言及した。

「少子化対策の財源は国民すべての世代で支え合い、徹底した歳出改革を前提に現役世代の実質的な負担増とならない仕組みを講じること」を健保組合全国大会や自民党の「国民皆保険を守る国会議員連盟」の活動を通して主張してきたと説明。

国民皆保険制度を維持し、将来世代につないでいくためには、「後期高齢者現役並み所得者の給付費への公費投入や医療・介護における保険給付範囲や自己負担の見直しなど、歳出改革の徹底を強く訴求しなければならない」との考えを示した。

今大会を機に、財政危機や少子化対策の財源論など健保組合を取り巻く現状を打開し、健保組合が本来機能を発揮するために何をすべきかを皆さんと考えていきたいと強調した。

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