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健保ニュース 2023年12月中旬号

医療DXによる効率化・質向上等
全社会議が「改革工程」の素案
少子化財源も見据え3段階実施

全世代型社会保障構築会議(清家篤座長)は、「全世代型社会保障構築を目指す改革の道筋(改革工程)」の素案を取りまとめ、5日の経済財政諮問会議(議長・岸田文雄首相)に提出した。「改革工程」の素案は、①働き方に中立的な社会保障制度等の構築②医療・介護制度等の改革③地域共生社会の実現─の3分野を(1)2024年度(2)2028年度まで(3)2040年頃─の3段階に分け実施。②の(2)は医療DXによる効率化・質の向上など具体策を盛り込んだ。歳出効率化をはじめ、国民への最適な医療サービスや生産性の向上を見据える。諮問会議、与党との調整を経て、年内に閣議決定する。

経済財政諮問会議は5日、「社会保障改革」をテーマに議論した。
 政府は、次元の異なる少子化対策の実現に向けた「こども未来戦略方針」を今年の6月13日に閣議決定。

年間3兆円半ばの予算規模を見込む「こども・子育て支援加速化プラン」等を支える安定財源の確保に向けて、2024年度から2028年度までに徹底した歳出改革を行うことで得られる公費節減および社会保険負担軽減の効果を活用しながら、実質的に追加負担が生じない状況をめざす方向性を示している。

この日の会合では、全世代型社会保障構築会議が11月30日の検討を踏まえ取りまとめた「全世代型社会保障構築を目指す改革の道筋(改革工程)について(素案)」を提出。全社会議の構成員も参加のうえ議論を交わした。

「改革工程」の素案は、全世代型社会保障構築会議が昨年12月16日に取りまとめた「報告書」で明示した①働き方に中立的な社会保障制度等の構築②医療・介護制度等の改革③「地域共生社会」の実現─の3分野について、歳出改革の見直しに取り組む。

改革を進めるにあたり、(1)来年度(2024年度)に実施する取り組み(2)「こども・子育て支援加速化プラン」の実施が完了する2028年度までに実施について検討する取り組み(3)2040年頃を見据えた中長期的な課題に対して必要となる取り組み─の3つの時間軸に整理。

(2)については、2028年度までの各年度の予算編成過程で実施すべき施策の検討・決定を行い、全世代が安心できる制度を構築して、次世代に引き継ぐための取り組みを着実に進める必要があるとした。

①の(2)は、勤労者皆保険の実現に向けた取り組みとして、▽短時間労働者への被用者保険の適用に関する企業規模要件の撤廃▽常時5人以上を使用する個人事業所の非適用業種の解消▽週所定労働時間20時間未満の労働者、常時5人未満を使用する個人事業所への被用者保険の適用拡大─に対し、「2024年末の結論に向けて引き続き検討する」との工程を示した。

②の(1)は、法改正実施済みの「前期財政調整における報酬調整(1/3)の導入」や「後期高齢者負担率の見直し」を盛り込んだほか、「介護保険制度改革(利用者負担の範囲見直し等)」について、「本年末の予算編成過程において検討すべき」と明記。予算編成過程を踏まえ改めて追記する。

②の(2)は、▽医療DXによる効率化・質の向上▽医療提供体制改革の推進▽効率的で質の高いサービス提供体制の構築▽イノベーションの推進、安定供給の確保と薬剤保険給付のあり方の見直し▽医療・介護保険における金融資産等の取扱い▽医療・介護の3割負担(現役並み所得)の適切な判断基準設定▽高額療養費自己負担限度額の見直し─などを列挙した。

このうち、「医療DXによる効率化・質の向上」は、2026年度に共通算定モジュールを本格的に提供したうえで、医療機関等のシステムを抜本的に改革し、効率的で質の高い医療を実現。

また、社会保険診療報酬支払基金について、医療DXに関するシステムの開発・運用主体の母体とし、抜本的に改組する工程を示した。

「効率的で質の高いサービス提供体制の構築」は、保険者、都道府県、医師、薬剤師などの関係者・関係機関のさらなる対応により、リフィル処方箋のさらなる活用に向けて取り組むほか、多剤重複投薬や重複検査等の適正化へ、さらなる実効性ある仕組みを検討する。

「医療・介護の3割負担(現役並み所得)の適切な判断基準設定」は、「現役並み所得」の判断基準や基準額の見直しは現役世代の負担が増加することや、2022年10月に施行された後期高齢者医療制度における窓口負担割合の見直し(一定以上所得のある者への2割負担の導入)の施行状況等に留意するとした。

また、「高額療養費自己負担限度額の見直し」は、賃金の動向との整合性等の観点から、必要な見直しの検討を行う方向性を示した。

各分野の(2)に明記された取り組みについては、生産性の向上、効率的なサービス提供、質の向上等や、能力に応じた全世代の支え合い、高齢者の活躍促進、健康寿命の延伸等の着眼点に立ち、これまでに実施した事項も含め制度や事業等のあり方について幅広く検討を行う必要があるとした。

岸田首相は、全世代型社会保障改革の道筋を取りまとめ、「こども未来戦略方針」の「加速化プラン」を実施するための財源確保の前提となる「2028年度までの歳出改革」も含めた「改革工程」を示すよう新藤義孝内閣府特命担当大臣に指示。

また、年内に改革の道筋を反映して、「新経済・財政再生計画の改革工程表」を改定し、当面の取り組みの進捗を管理するよう要請した。

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