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健保ニュース 2022年10月下旬号

健保組合の保険者機能発揮へ提言
自民党皆保険議連 制度改革や財政支援を要望
予算、改正論議へ近く政府に申し入れ

自民党の「国民皆保険を守る国会議員連盟」(鈴木俊一会長)は17日、参議院議員会館で第6回総会を開き、議連として提言する「全世代型社会保障の構築ならびに予算編成に対する要望(案)」を議論し、一部修正を一任し了承した。提言は、この日の総会で健保連の佐野雅宏副会長が説明した健保組合・健保連の重点要望を踏まえた内容。持続可能な社会保障制度の実現に向けて、制度の中核を担う健保組合における保険者機能の発揮が不可欠とし、①医療制度改革②全世代で取り組む少子化対策③医療DXの推進④健康保険組合が保険者機能を十分に発揮するための財政支援─の4点を柱としている。全世代型社会保障の構築へ、高齢者支援金の負担割合の見直しや現役並み所得者の給付費への公費投入などを求めている。また、令和4年度補正予算・5年度政府予算への反映を視野に、医療費の想定外の伸びや拠出金の急増で財政悪化が懸念される健保組合への財政支援を講ずるよう訴えた。総会における意見を盛り込んだ提言を近く取りまとめ、政府に申し入れる方針だ。

衆議院予算委員会の開催により欠席した鈴木会長を代行し、会合の冒頭あいさつした丸川珠代幹事長は、「今回の総会で第6回目を迎えるが、日本が世界に誇る国民皆保険を今後も守り抜いていくため、現役世代の意見を社会保障制度改革に反映すべく健保組合の皆さんと議論を進めてきた」と言及した。

円安や物価高など厳しい経済状況が続いているなかで、先日公表された健保組合の令和3年度決算見込は、経常収支差引額が▲825億円と8年ぶりの赤字となり、5年度には約1700億円という大幅な赤字が見込まれていると問題提起。

国民皆保険を未来の世代に引き継いでいくためには、高齢者のみならず、現役世代が安心できる全世代型社会保障について、健保組合・健保連が代弁している現役世代の声を反映することにより構築する必要があると強調した。

続いて、説明に立った佐野副会長は、健保組合・健保連の重点要望として、(1)医療制度改革関係(2)少子化対策関係(3)オンライン資格確認等システムを基盤とした医療DX(4)予算への要望(令和4年度補正予算・5年度政府予算)─を説明した。

このうち、(1)は、▽後期高齢者医療制度の保険料賦課限度額の引き上げ▽保険料負担率の見直し▽後期高齢者の現役並み所得者分給付費への公費投入・自己負担の見直し▽被用者保険者間の格差是正の方策等への対応─の4項目について要望。

また、(2)は、出産育児一時金の大幅な引き上げを行う政府・与党の方向性に対し、少子化対策の実施を支持する一方、「少子化対策は現役世代が支払う保険料だけを原資とする仕組みではなく、全世代で支えていくことが必要」と指摘した。

他方、(3)は、医療DXについて、「医療の質の向上と効率化に資するため基本的に賛成」との考えを示したうえで、「これまで累計260億円もの負担をしているが、医療機関の導入率が低くメリットが感じられない」ことを課題に位置づけ、「一定の効果がでるまでは公費負担とすべき」と訴えた。

さらに、(4)は、▽コロナの影響により特定の業態の健保組合は、2年度から3年度にかけてさらに財政が悪化▽保険給付費の大きな伸びによる負担増▽5年度以降、高齢者拠出金が増加する見込みで、さらなる財政悪化が不可避─の状況を踏まえ、(Ⅰ)3年度保険者機能強化推進交付金の継続・拡充(Ⅱ)保険給付費の急増に対する支援(Ⅲ)高齢者医療運営円滑化等補助金の拡充─を強く要望した。

その後の質疑応答・意見交換を経て、議連としての提言の取りまとめが提案された。
 提言は、「全世代型社会保障の構築ならびに予算編成に対する要望」で、①医療制度改革②全世代で取り組む少子化対策③医療DXの推進④健康保険組合が保険者機能を十分に発揮するための財政支援─を柱とする。

①は、現役世代の負担が相対的に大きくなる現行の高齢者支援金の負担割合の早急な見直しや、現役並み所得者の給付費への公費投入の実現に向けた検討に着手するよう要望。

また、政府が検討課題に位置づけた「被用者保険者間の格差是正の方策等」について、保険者機能の発揮を阻害しないよう配慮するとともに、各保険者における影響を勘案するなど慎重な検討を求めた。

②は、出産育児一時金増額などの施策は現役世代の負担軽減も見据え、全世代で支え合う仕組みとする必要があるとした。

③は、現在検討が進められている健康保険証のマイナンバーカードへの一体化も含め、医療DXをより効果的なものとしていくため不断に検討を進めるとともに、導入時から運用期間を通じ、必要な財政支援を含め、政府が責任をもって運用するよう提起。

さらに、④は、国民皆保険制度の中核を担う健保組合の財政は、新型コロナウイルス感染症の影響をぬぐえない状況が続いているほか、医療費の想定外の伸びや拠出金の急増も懸念されるとし、保険者機能発揮の阻害要因とならないよう、必要な財政支援を講ずるべきとした。

提言に対し、出席議員からは、「医療DXは現場の声も踏まえるべき」、「医療費の効率化も重要」、「必要な財政支援は、具体的な項目を追記しても良い」などの意見があり、文言等の修正を一任したうえで了承を得た。
 近く、提言を取りまとめ、政府に申し入れる。

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