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健保ニュース 2022年10月中旬号

中医協が5年度薬価改定の検討に着手
算定ルールや調整幅など論点

中央社会保険医療協議会(小塩隆士会長)の薬価専門部会は5日、令和5年度の毎年薬価改定に向けた検討に着手した。

毎年薬価改定は、平成28年12月20日の4大臣合意で決定した「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」で、「価格乖離の大きな品目について薬価改定を行う」こととされた。

初の毎年薬価改定となった令和3年度は、国民負担軽減の観点からできる限り対象を広くすることが適当である状況のもと、平均乖離率8%の0.625倍(乖離率5%)を超える1万2180品目(全品目の69%)を対象とした。

一方、「新型コロナウイルス感染症特例」として、薬価の削減幅を0.8%分緩和。3年度薬価改定に伴う医療費への影響は▲4300億円だった。

算定ルールは、既収載品のルールのうち、実勢価改定と連動し、その影響を補正するルールを適用した。新薬創出等加算は「加算」を適用する反面、「累積額控除」は不適用。また、後発品への置換え率に応じて引き下げる「長期収載品の薬価改定」も適用しなかった。

3年度薬価改定の「骨子」では、今後の薬価改定に向け、「国民皆保険の持続可能性」と「イノベーションの推進」を両立し、「国民負担の軽減」と「医療の質の向上」を実現する観点から、「既収載品目にかかる算定ルールの適用の可否等も含め検討を行う」とされている。

厚労省は、こういった経緯を踏まえ、5年度薬価改定の考え方を論点として提案。また、今後の検討に当たり、3年度薬価改定の影響も含め、関係業界等からの意見聴取も行いつつ、「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」における検討結果も踏まえ、議論を深めることを論点として示した。

健保連の松本真人理事は、「3年度薬価改定のルールをベースに、市場実勢価格にもとづく改定を粛々と行うべき」との認識を示す一方、3年度薬価改定で設定した0.8%の特例は、「4年度改定で廃止されており、当然、5年度も必要ない」と言及。

対象範囲については、国民負担を軽減する観点から、「3年度と同程度の品目を想定すべき」との考えを示した。

さらに、3年度薬価改定で、実勢価格と連動しない算定ルールに整理された「新薬創出等加算の累積額控除」と「長期収載品の薬価改定」について、実勢価格と連動する要素があると指摘し、算定ルールとして適用するよう改めて強く訴えた。

市場実勢価格の過重平均値に一定率を上乗せする「調整幅」は、「特段の議論もなく、長年にわたり一律2%で固定され、妥当性に欠く」と述べ、早急にあり方を議論するためのデータを準備するよう要望した。

診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、「調整幅は流通経費にかかるコストを調整する位置づけのものとなっている」と主張し、「コストの部分だけを切り出して調整した場合、均衡がとれている自由な市場取引のバランスが崩れる」と懸念。安易な結論を出すものではないとの認識を示した。

さらに、「5年度薬価改定で得られた財源の一部を診療報酬との密接な関係のなかで捉えることが重要」と強調。こういった観点から、「医療の質向上」につなげていく前提の議論を積み重ねていく必要があるとした。

これに対し、松本理事は、「5年度薬価改定の財源を診療報酬に充当するという趣旨の発言であれば、明確に反対する」と応じた。

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