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健保ニュース 2022年9月上旬号

健保組合の生活習慣病動向調査
医療費全体 入院1割、外来2割
コロナ禍で1人当たりが大幅減

健保連はこのほど、「令和2年度生活習慣関連疾患の動向に関する調査」結果を公表した。
 それによると、調査対象の医療費全体に占める生活習慣関連疾患の割合は、「医科入院」で1割、「医科入院外」で2割だった。前年度に比べ、加入者1人当たり医療費が大幅に減少した疾患がみられたが、医療費の3要素のうち受診率(千人当たり件数)が前年度に比べ大きく減少。調査対象年度は新型コロナウイルスの感染拡大時期と重なり、受診率に少なからず影響を及ぼしたことが考えられる。

調査は、1250組合の医科・調剤のレセプト(2億1728万187件)をもとに、生活習慣関連疾患の1人当たり医療費や受診率などの医療費関連指標にもとづき動向をとりまとめた。調査対象となった生活習慣関連疾患は、疾病19分類上の「内分泌・栄養・代謝系疾患」と「循環器系疾患」で、このうち、①糖尿病②脳血管障害③虚血性心疾患④動脈閉塞⑤高血圧症⑥高尿酸血症⑦高脂血症⑧肝機能障害⑨高血圧性腎臓障害⑩人工透析─の10疾患を生活習慣関連疾患として集計した。

なお、疾病分類別医療費および受診者数は、医科レセプトおよび医科レセプトに紐づいた調剤レセプトの診療行為や薬剤点数を、疾病名ごとに振り分けた推計値となっている。伸び率は、令和2年度と元年度の両年度にわたりデータ提供があった1219組合のレセプトデータを比較した。

疾患別の医療費構成割合
外来は糖尿病が3割で最多

「医科入院」(7786億円)について、疾病分類別医療費(3兆491億円)に占める割合は、10疾患医療費全体(492億円)で6.3%だった。10疾患医療費の構成割合は、脳血管障害が39.0%(192億円)と最も高く、次いで、虚血性心疾患が26.8%(132億円)、糖尿病が12.5%(62億円)と続く。

対前年度の伸び率は、高血圧性腎臓障害が13.2%と大幅に増加したが、残りの9疾患はマイナスの伸びとなった。なかでも動脈閉塞(28.6%減)、虚血性心疾患(11.8%減)、高脂血症(11.4%減)、高血圧症(10.1%減)、肝機能障害(10.0%減)は、1割以上減少した。

一方、「医科入院外」(2兆2705億円)について、疾病分類別医療費に占める割合は、10疾患医療費全体(3561億円)で15.7%だった。10疾患医療費の構成割合は、糖尿病が33.1%(1179億円)と最も高く、次いで、高血圧症24.7%(879億円)、高脂血症17.8%(633億円)と続く。

対前年度の伸び率は、脳血管障害(9.2%減)、虚血性心疾患(6.6%減)、高血圧性腎臓障害(2.1%減)などが減少。逆に、糖尿病(5.1%増)、動脈閉塞(4.5%増)、人工透析(2.0%増)が増加した。

1人当たり医療費
糖尿病が入院外来とも上位

「医科入院」の加入者1人当たり医療費は、▽脳血管障害764円▽虚血性心疾患525円▽糖尿病245円▽人工透析186円▽高血圧症174円─の順で高い。

「医科入院」の3要素をみると、受診率は高血圧症(6.4件)が最も高く、次いで、糖尿病(5.3件)、高脂血症(3.7件)の順。1件当たり日数は、脳血管障害(17.6日)が最も長く、次いで、動脈閉塞(17.4日)、人工透析(14.6日)の順。1日当たり医療費は、人工透析(3万2697円)が最も高く、次いで、虚血性心疾患(3万1518円)、脳血管障害(2万6179円)の順となっている。

一方、「医科入院外」の加入者1人当たり医療費は、▽糖尿病4696円▽高血圧症3502円▽高脂血症2522円▽人工透析2354円▽高尿酸血症435円─の順で高かった。

「医科入院外」の3要素をみると、受診率は、高血圧症(639.6件)が最も高く、次いで、高脂血症(622.1件)、糖尿病(452.7件)の順。1件当たり日数は、人工透析(12.6日)が最も長く、次いで、虚血性心疾患および動脈閉塞(1.6日)の順。1日当たり医療費は、人工透析(3万66円)が最も高く、次いで、糖尿病(8092円)、脳血管障害(5667円)の順となっている。

医療費3要素の伸び率
受診率が大幅減

対前年度の伸び率をみると、「医科入院」の加入者1人当たり医療費は、高血圧症が12.5%減、虚血性心疾患が10.2%減、糖尿病が9.1%減とそれぞれ大幅に減少。これらの疾患の3要素をみると、高血圧症が▽受診率5.8%減▽1件当たり日数0.4%減▽1日当たり医療費3.9%減─。虚血性心疾患が▽同8.9%減▽同0.9%増▽同3.7%減─。糖尿病が▽同4.8%減▽同0.2%減▽同0.6%減─となっており、いずれの疾患でも受診率が大幅に減少したほか、1日当たり医療費も減少している。

一方、「医科入院外」の加入者1人当たり医療費は、脳血管障害が8.7%減、虚血性心疾患が6.7%減と大幅に減少した一方、糖尿病が5.4%増と大きく増加した。これらの疾患の3要素をみると、脳血管障害が▽受診率5.7%減▽1件当たり日数0.7%減▽1日当たり医療費2.5%減─。虚血性心疾患が▽同2.7%減▽同0.6%減▽同2.9%減─。糖尿病が▽同2.4%増▽同1.5%減▽同4.4%増─だった。脳血管障害および虚血性心疾患は、受診率が大幅に減少したうえ、1日当たり医療費も減少した。一方、糖尿病では1日当たり医療費が大きく増加し、受診率も増加した。

年齢階層別医療費
55~59歳が最高額

年齢階層別医療費をみると、「医科入院」、「医科入院外」とも上位は同じ傾向で▽55~59歳(「医科入院」98.5億円、「医科入院外」773.8億)▽60~64歳(同88.5億円、同660.7億円)▽50~54歳(同81.6億円、同650.9億円)─の順で高い。10疾患医療費全体に占める割合は、▽55~59歳が「医科入院」20%、「医科入院外」22%▽60~64歳が同18%、同19%▽50~54歳が同17%、同18%─となっており、これら50~64歳で全体の過半数を占める。

年齢階層別医療費構成割合の上位疾患をみると、「医科入院」は、▽0~19歳が脳血管障害59.3%、高血圧症15.0%、糖尿病13.5%▽20~39歳が脳血管障害42.2%、糖尿病23.6%、高血圧症12.3%▽40~59歳が脳血管障害42.0%、虚血性心疾患26.0%、糖尿病12.0%▽60~74歳が脳血管障害33.2%、虚血性心疾患31.5%、人工透析11.9%─となっており、脳血管障害は全年齢階層で最も割合が高い。虚血性心疾患は40歳以降で割合が高くなっている。

一方、「医科入院外」は▽0~19歳が糖尿病40.9%、脳血管障害16.4%、高脂血症14.7%▽20~39歳が糖尿病37.9%、高脂血症18.5%、人工透析14.0%▽40~59歳が糖尿病32.7%、高血圧症24.8%、高脂血症17.6%▽60~74歳が糖尿病32.9%、高血圧症26.4%、高脂血症18.0%─となっており、糖尿病は全年齢階層で最も割合が高い。高血圧症は40歳以降で割合が高くなっている。

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