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健保ニュース

健保ニュース 2022年2月中旬号

柔道整復療養費
施術の頻回が明らかに
月11回以上が1割

厚生労働省は、1月31日に開催された社会保障審議会・医療保険部会の柔道整復療養費検討専門委員会(座長・遠藤久夫学習院大学経済学部教授)に、柔整療養費などの施術内容を調査した「令和2年度療養費等頻度調査」の結果を提出した。それによると、施術が行われた1か月間の通院回数は、患者の約1割が11回以上になっていることが報告された。初検月から治癒までの施術月数も多数回施術の傾向を示しており、頻回・長期化した施術の現状が明らかとなった。

この調査は、柔道整復等の料金改定や適正支給の基礎資料とすることを目的に毎年実施しているもので、令和2年10月に支給決定した協会けんぽ、国保、後期高齢者医療の柔道整復療養費支給申請書などをもとに集計した。今回専門委員会に提出された資料では、支給月における後療(初回処置後に行われる療法)の回数と初検月から治癒・中止までの施術月数を負傷原因ごとに調べている。

支給月における後療回数では、打撲の場合、3回以下が全体の45.9%と全体の半数近くを占める。4~6回が27.0%、7~10回が15.8%と続き、週3回近く通院したと想定される11~15回が7.3%、月の半分以上通院したと想定される16~20回が2.7%、平日にほぼ毎日通院したと換算される21回以上が1.3%だった。

捻挫では打撲と同様に、3回以下が全体の45.6%と半数近くを占め、4~6回が26.7%、7~10回が15.7%と続き、11~15回が7.3%、16~20回が3.0%、21回以上が1.6%となった。

初検月から治癒・中止までの施術月数では、打撲の場合、3か月が全体の34.2%と最も多く、次いで1か月の27.5%、2か月の23.6%と続き、4か月が9.0%、5か月が3.8%、6か月以上が1.8%だった。捻挫でも、3か月が全体の35.0%と最も多く、次いで1か月の25.4%、2か月の21.2%と続き、4か月が10.3%、5か月が5.4%、6か月以上が2.7%となった。

この結果を厚生労働省から各保険者への通知(柔道整復師の施術の療養費の適正化への取組について(平成24年3月12日保医発0312第1号、保保発0312第1号、保国発0312第1号、保後発0312第1号))により、文書照会や聞き取りの対象となる事例として「施術回数が頻回傾向の申請書」として例示されている「施術回数が1月あたり10~15回以上」に単純にあてはめてみると、支給月における後療回数11回以上は打撲で11.3%、捻挫で11.9%となり、約1割にのぼる。

また同通知で事例としてあげられた「3ヶ月を超える長期継続(4ヶ月目以降)の申請書」に該当する初検月から治癒・中止までの施術月数4か月以上では、打撲で14.6%だが、捻挫では18.3%となっており、頻回・長期化した施術の現状が明らかとなっている。

明細書発行が義務化の方向へ
柔整専門委員会

また、柔道整復療養費検討専門委員会は同日の会合で、柔道整復療養費の明細書発行の義務化や問題のある患者を受領委任払いから償還払いへ変更する取り扱い、療養費を施術管理者に確実に支払うための仕組みなどについて議論した。議論に先立ち、患者を代表する立場の参考人として、日本労働組合総連合会(連合)の佐保昌一総合政策推進局長が、明細書無料発行を求める患者の意見(連合患者調査)をもとに、その重要性などについて意見陳述した。

この日はこれまでの議論を整理し、明細書発行の義務化にあたっての対応方針として、施術所の事務負担軽減に最大限配慮しつつ、施術に要する費用に係る明細書を患者に手交することは、業界の健全な発展のためにも必要であることから、明細書の発行を義務化する─との提案がなされた。

そのうえで、明細書の発行に際しては、①明細書発行機能があるレセコンを使用している施術所は、患者から一部負担金を受けるときは、正当な理由(患者本人から不要の申し出があった場合)がない限り、明細書を無償で患者に交付しなければならない②明細書発行機能がないレセコンを使用している施術所は、従前どおり、患者から明細書の発行を求められた場合には、明細書を患者に交付(有償可)しなければならない③レセコンを使用していない施術所は、従前どおり、患者から明細書の発行を求められた場合には、明細書を患者に交付(有償可)しなければならない─とされるとともに、施術所の負担軽減措置も示された。

また、議論が対立する発行のタイミングについては、「一部負担金の支払いを受けるごとに発行することとする」と提示された。施行時期については、年明け(令和4年1月)をメドとする方向で、昨年8月の同専門委員会で了承されていたが、明細書発行に関する療養費料金改定の議論と合わせて決定することとされた。激しい議論が重ねられてきたが、年度内の決着をめざし、大きな山場を迎える。

また、患者ごとに償還払いに変更できる仕組みの検討では、対象となる不適切な患者については、不正が「明らか」な患者に加え、不正の「疑い」が強い患者も対象とする。ただし、真に不適切な患者に対象を絞る観点から、「償還払いとする範囲」、「償還払いとするプロセス」について検討する─との方針案が示された。

不正の「疑い」が強い患者の例としては、複数の施術所で同じ部位の施術を重複して受けている患者、保険者が繰り返し患者照会しても回答しない患者、施術が非常に長期にわたり、かつ、非常に頻度が高い患者などが示された。このなかで、変更する際の手続きやプロセスについて議論の応酬があったが、規定を定め丁寧に進めることで一定の合意を得た。本件の議論も佳境を迎え、方向性の決着に向けて調整が進められる。

療養費を施術管理者に確実に支払うための仕組みについては、復委任団体の不正防止のみならず、柔整療養費における▽オンライン請求化による業務の効率化▽オンライン資格確認システムへの対応▽マイナンバーカードの保険証利用への対応─など、大きな問題が背景にあり、保険者側、施術者側とも前向きな姿勢を示している。

ただし、厚労省が示した「療養費を施術管理者に確実に支払うための仕組み」に関する検討事項(案)には多くの重要課題が残されており、先行きは不透明。保険者側からは現行と比較し、審査支払事務にかかる費用を超えないこと、審査内容が充実・効率化することなどが必須条件であり、あくまで参加は保険者裁量を求めている。引き続き2月以降、月に1回のペースで議論が進められる予定となっている。

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