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健保ニュース 2021年12月中旬号

医療保険部会で薬剤給付を議論
佐野副会長 市販品類似薬の給付範囲見直しを

社会保障審議会医療保険部会は1日、薬剤給付の適正化に向けた取り組みについて議論した。

令和3年度に、薬剤自己負担の引き上げを検討し必要な措置を講じることとし、保険者における上手な医療のかかり方とセルフメディケーションの推進策を検討すると盛り込んだ政府の「新経済・財政再生計画改革工程表2020」を踏まえた対応。

薬剤自己負担の引き上げについては、財務省が11月8日の財政制度等審議会財政制度分科会(分科会長・榊原定征東レ社友)に提示した内容を紹介。見直しの方法として、医薬品を保険給付対象から除外、医薬品を保険収載したまま保険給付範囲を縮小の2つの手法を説明した。

保険者における上手な医療のかかり方とセルフメディケーションの推進策については、厚生労働省が健保組合に対する成果連動型民間委託方式による保健事業への補助事業について報告した。

健保組合が事業者と成果連動型支払い契約を締結し、加入者への保健事業を委託する事業スキームの構築費を補助する。政府の「成果連動型民間委託契約方式(PFS)アクションプラン(令和2~4年度)」を踏まえた内容で、公募から選定した健保組合の成果の横展開を図るとともに、「第3期データヘルス計画」や「第4期医療費適正化計画(国)」策定の検討材料とする。

なお、PFSアクションプランは、令和元年6月に閣議決定された「成長戦略実行計画」にもとづき、民間セクターのノウハウを活用するPFSの普及促進を強力に推し進めていくことを打ち出している。①医療・健康②介護③再犯防止─を重点3分野に設定しており、①と②については、3年9月に先行事例も盛り込んだ手引きが公開されている。国および地方公共団体におけるPFS事業の実施件数は、2年度末時点で76件で、そのうち医療・健康分野が32件と4割を占めた。

健保連の佐野雅宏副会長は、皆保険制度を維持していくため、市販品類似薬の給付範囲見直しが「重要な課題」との認識を示し、4年度診療報酬改定における対応に留まることなく、継続して検討するよう要請した。

安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)は、薬剤給付の適正化を図るためには、市販品類似薬の除外や、保険償還率変更を含めた薬剤自己負担の見直しが最も効果がある手段だと言及。

菅原琢磨委員(法政大学経済学部教授)も、支え手が減少していくことを踏まえ、これまで通り薬剤を全て給付範囲とすることは難しいと主張した。

一方、松原謙二委員(日本医師会副会長)は、市販品類似薬を自己負担とする考え方に対し「暴論」と強く反対した。

三菱商事健保組合の事業
PFS事例として紹介

この日の医療保険部会では、PFS事業の事例として、補助事業のなかから三菱商事健保組合の「医療費適正化に繋がるセルフメディケーション推進事業」が紹介された。

取り組みは①普及啓発活動②実践支援─の2段階による仕組みを構築している。①は、セミナー開催や組合ポータルサイトを活用した広報活動を実施するとともに、レセプトからスイッチOTCの活用可能性がある患者を抽出し、リーフレットを自宅に郵送。②は、薬剤師に薬選びを相談できる機会とECサイト(電子商取引を行う事業者)で使用できるヘルスケアポイントを提供する。

取組終了後には、「対象疾患に係る受診の減少数」、「薬剤師への相談件数」を指標に、委託事業者への成果連動分の支払額を算定する(予定)。それらの指標は意識調査アンケート結果などとともに効果検証し、次年度以降の取り組みに反映する。

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