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健保ニュース 2021年7月中旬号

協会けんぽ令和2年度決算見込
黒字額は過去最大の6183億円
準備金4兆円、法定水準の5か月分

全国健康保険協会(安藤伸樹理事長)は2日、協会けんぽの令和2年度決算見込を発表した。収入総額は10兆7650億円(前年度比1.0%減)、支出総額は10兆1467億円(同1.8%減)で、収支差は6183億円の単年度黒字を計上し黒字額としては過去最高となった。準備金残高も4兆103億円で過去最高を更新した。

前年度と比べ、収入は減少となったが、それを超えて支出が減少したため、結果として収支差が784億円増加し、11年連続の黒字を計上した。準備金残高は4兆103億円に拡大し、この金額は保険給付費や拠出金の支出に備えて積み立てなければならない法定水準(義務的経費1か月分)の5.0か月分に相当する。

全国健康保険協会は、2年度決算について、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を受け「協会けんぽの通常の年度の決算とは趣を異にする」と説明。今後の収入については、経済状況が不透明なことから保険料収入の見通しも不透明な一方で、支出面では医療給付費が徐々にコロナ禍前の水準にまで戻りつつあることや、4年度以降、後期高齢者支援金が増加することを見込んでいる。さらに、医療費の伸びが賃金の伸びを上回る赤字構造は変わっておらず、「協会けんぽの財政は引き続き楽観を許さない状況である」と総括している。

コロナウイルスの影響で収入が1047億円減

収入は、保険料収入9兆4618億円、国庫補助等1兆2739億円など総額10兆7650億円で、前年度と比べ1047億円の減収となった。収入が減少した要因として、被保険者数の伸びの急激な鈍化や、標準報酬月額が例年であれば定時決定(9月)後に増加するが、2年は緩やかに減少し、9月以降は対前年同月比でマイナスとなったこと、賞与が減少したことなどが影響した。また、新型コロナウイルス感染症等に対応するための臨時特例措置により、保険料の納付が猶予されたことも減収の一因とみられる。猶予額は2年度末で1930億円程度にのぼっている。

被保険者数は、平成29年度(9月)をピークに鈍化傾向が続いており、令和2年度は、被保険者数が2488万人(同0.9%増)となった。

平均標準報酬月額は29万516円で、8月まで対前年同月比で伸び率はプラスで推移していたが、コロナの影響による経済状況の悪化等によって、9月の定時決定後、マイナスに転じたため、元年度からは微減(前年度は29万592円)となった。

国庫補助等は、保険給付費の実績は減少しているものの、2年度予算案の保険給付費(総額)を基準としているため、626億円増額となった。

患者の受診控えにより支出が1813億円減

支出は、保険給付費6兆1870億円、拠出金等3兆6622億円の総額10兆1467億円で前年度から1831億円の減少となった。

支出の減少は、協会けんぽ発足以来、初めてのことで、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う患者の受診控えや、感染症予防によるインフルエンザ等の呼吸器系の疾患の減少などが影響したと分析している。

加入者は4031万人(同0.1%増)、扶養率は0.620%(同0.013ポイント減)となった。加入者1人当たり保険給付費は15万3487円(同2.9減)で、このうち現金給付を除く医療給付費が13万8280円(同3.5%減)。1人当たり医療給付費は例年、1%代後半から3%程度伸びているが、2年度は新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う患者の受診控え等の影響によって前年度から3.5%の減少となった。

拠出金等は、前期高齢者納付金が1兆5302億円、後期高齢者支援金が2兆1320億円、退職者給付金が1億円の全体で3兆6622億円(同1.0%増)、前年度から376億円の増加となった。

全国健康保険協会は、拠出金が小幅な増加にとどまった要因について、人口の年齢構成の影響により、後期高齢者の人数の伸びが一時的に鈍化するため、後期高齢者医療費の伸びも鈍化したと分析。後期高齢者支援金については、団塊の世代が後期高齢者に突入する4年度以降、大幅に増加することを見込んでおり、7年度には2年度と比較して約3500億円程度の支援金の増加を見込んでいる。

全国保険協会2年度決算
介護保険分を含めた収支差は6432億円

全国健康保険協会は介護保険分を含めた令和2年度決算報告書の概要も公表した。
 収入は、保険料等交付金10兆4114億円、任意継続被保険者保険料748億円、国庫補助金等1兆2739億円、その他256億円の総額11兆7857億円で、このうち介護分が保険料等交付金1兆339億円、任継保険料47億円の計1兆386億円を占めた。

支出は、保険給付費6兆1870億円、拠出金等3兆6622億円、介護納付金1兆303億円、業務経費・一般管理費1778億円、その他852億円の総額11兆1425億円で、このうち介護分が介護納付金1兆303億円、その他21億円の計1兆324億円だった。

その結果、単年度収支差は医療分が6370億円の黒字、介護分が63億円の黒字で、全体として6432億円の黒字となった。医療分の収支差が協会けんぽ決算と異なるのは、国に留保されている保険料の交付が年度をまたぐことが理由。前年度の未交付分303億円が2年度に交付され、2年度分の未交付117億円が翌年に交付されることになる。

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