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健保ニュース 2021年2月中旬号

セルフメディケーション推進検討会が初会合
税制対象薬品を年度内に決定
医療費適正化効果を重視

厚生労働省の「セルフメディケーション推進に関する有識者検討会」(座長・菅原琢磨法政大学経済学部経済学科教授)は3日、初会合を開いた。自主服薬を後押しするセルフメディケーション税制の延長に伴い、税制の適用を受ける新たな対象医薬品の範囲や医療費削減効果の検証方法などを議論する。同検討会は3月末までに税制の対象範囲を決定し、4月以降、医療費適正化の具体的な効果検証の方法や税制以外のセルフメディケーション施策などを検討する。対象医薬品については、医療費適正化効果の薄いものを現行の税制対象から除外する一方、スイッチOTC以外で医療費適正化効果が著しく高いと認められる3薬効程度を加える方針。除外するものについては、消費者への認知や商品入れ替えに要する期間を鑑み、5年未満の範囲内で経過措置期間を設けることとなっている。

初会合では、健保連の幸野庄司理事など複数の委員がセルフメディケーションを推進する観点から、税制の対象を薬効よりも、国民にとってわかりやすい風邪など症状に対応した分類で選定することを提案した。

同検討会は、昨年12月に閣議決定された政府税制改正大綱で、セルフメディケーション税制の延長と対象医薬品の見直しの方針を受けて発足した。税制の対象をより効果的なものに重点化して、令和3年末までとなっている現行の期限を8年末まで5年延長することとなった。具体的な範囲は、「専門的な知見を活用して決定するとともに、見直しによる効果の検証方法についても検討する」とされている。

セルフメディケーション税制の適用を受けた人数は令和元年で3万人。医療費控除かいずれか一方の適用が認められる選択制となっており、元年の医療費控除の適用数756万人に比べると、セルフメディケーション税制の活用が普及しているとは言い難いのが現状だ。

厚労省の迫井正深医政局長は、初会合の冒頭あいさつで、セルフメディケーションの意義について、限りある医療資源を有効に活用して健康の維持・増進を図るものであり、「少子高齢化が進展するわが国において、ますますこうした考え方が重要となってくる」と強調した。

幸野理事は、健保連が昨年9月に実施した新型コロナウイルス感染拡大に伴う国民の受療動向等調査結果を踏まえ、「セルフメディケーションの意識が芽生え始めている」と受け止め、こうしたなかでの同検討会の発足を「非常にいい機会である」と位置づけた。

税制で利用促進を図る領域については、安全性の観点を重視し、重症化や病気の急変の可能性が低い疾患を対象に症状の緩和を目的とするものに限定すべきと主張した。予防目的は相応しくないとの認識を示した。

医療費適正化の観点からは、受診に伴う医療用医薬品の処方を含む医療費とスイッチOTC薬の価格差が大きいものを対象とすべきと主張し、風邪や便秘、胃炎、頭痛薬が該当するとした。また、「消費者目線で見ると、薬効で括るのは非常にわかりにくいので、風邪薬、胃腸薬、消炎鎮痛剤というように症状別にわかりやすく分類する方法もひとつの考え方だと思う」と提起した。

中島誠委員(全国健康保険協会理事)は、薬剤給付を適正化する観点から、医療の質を担保しつつセルフメディケーションを推進する必要性に言及したうえで、現行の税制対象品目が限定的であると問題視し、こうした状況で「対象医薬品の範囲を拡大する方向性が打ち出されたことは評価できる。わかりやすく、より多くの人に利用してもらえるような形で対象範囲を見直すべきだ」と指摘した。

黒川達夫委員(日本OTC医薬品協会理事長)は、「今回は、将来にすべてのOTC薬を税制の対象とするための重要なステップと考えている」と捉え、生活者にとって使いやすい税制とするために市場の大きい薬効を選択すべきとした。具体的に風邪の諸症状、耳鼻・アレルギーの諸症状、胃腸の諸症状、肩・腰等の腫れ・痛み・湿疹・かゆみの症状を挙げて、症状で言い換えることを提案した。

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