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健保ニュース 2021年新年号

後期医療2割負担の対象は所得上位30%
最終報告 令和4年度後半に導入
関連法案を3年通常国会に提出

政府は12月14日、全世代型社会保障検討会議(議長・菅義偉首相)を首相官邸で開き、最終報告をまとめ、15日に閣議決定した。次期医療保険制度改革に向けて最大の論点の後期高齢者の自己負担引き上げについては、75歳以上の単身世帯で課税所得28万円以上(所得上位30%)かつ年収200万円以上の人を現行1割負担から2割負担とする方針を示した。75歳以上の夫婦など複数世帯のケースは、世帯内に課税所得28万円以上の後期高齢者がいることを前提に、後期高齢者の年収合計が320万円以上だと、ともに2割負担となる。

2割負担への引き上げの施行時期は、2022年度後半(22年10月~23年3月)の間の各月初日を想定し、政令で定めるとした。後期高齢者の自己負担引き上げなどを内容とする医療保険制度改革関連法案は、2021年の通常国会に提出する。

菅首相は、最終報告を取りまとめた検討会議の席上、「少子高齢化が急速に進むなかにあって、現役世代の負担上昇を抑えながら、すべての世代の方々が安心できる社会保障制度を構築し、次の世代に引き継いでいくことが、われわれの世代の責任である」と述べた。

後期高齢者の自己負担は、現在、後期高齢者の7%(130万人)を占める現役並み所得の該当者が3割負担で、このほか、52%(945万人)の一般と41%(740万人)の低所得は1割負担となっている。

これに対し、2割負担に引き上がる所得基準は、平均的な年金収入額を上回る水準に設定し、厚生労働省が提示した5つの所得基準の選択肢(本人課税所得64万円以上・年収240万円以上~同35万円超・同155万円以上)のうち、真ん中の3番目に当たる。

具体的には、後期高齢者の所得上位30%(現役並み所得を除いて23%)までの一般に該当する本人課税所得28万円以上・年収200万円以上を基準として、約370万人が2割負担の対象となる見込み。

2割負担が適用される後期高齢者の外来の自己負担については、施行から3年間、1か月の負担増を最大で3000円に収まるよう配慮措置を講じる。

この措置は、長期外来受診に伴う急激な負担増を抑制するための経過措置として実施し、外来患者の約8割が該当すると見込んでいる。対象は、現に1割負担で施行後に2割負担に引き上がる75歳以上の後期高齢者に加え、74歳時の2割負担が継続される75歳到達者にも適用する予定。

2割負担の所得基準、施行日、配慮措置については、政府・与党が協議して確認し、これを踏まえ、14日の全世代型社会保障検討会議で最終報告をまとめた。

それまでの間、公明党は厚労省の5つの選択肢のうち、2割負担の対象者が最も少ない上位20%(現役並み所得を除いて13%。対象者約200万人)の本人年収240万円以上に範囲を絞るべきと主張、菅首相は対象者が2番目に多い上位38%(同31%。対象者約520万人)の170万円以上とする意向を示し、政府・与党間の調整は難航した。最終的に双方譲り合う形で課税所得28万円以上・年収200万円以上とすることで決着した。

2割引き上げの施行期日は、元年末の検討会議の中間報告では、団塊の世代が後期高齢者入りする2022年度初めまでに実施する方針を示していたが、当初計画を変更し、最終報告では「施行に要する準備期間を考慮」して、2022年度後半に後ろ倒しした。

外来受診の自己負担増を緩和する配慮措置も厚労省案を変更した。当初は2割負担の施行日から2年間、自己負担を月最大で4500円増に抑える案だったが、最終報告では月最大3000円増へと1500円軽減し、実施期間も施行後3年とする方針に転換した。

2割負担となる後期高齢者1人当たりの自己負担は、入院・外来合わせて年平均11.5万円と試算。1割負担の年平均8.1万円から3.4万円増加するが、負担増を抑える経過措置の間、年平均10.6万円となり、増加額が0.8万円軽減される。

最終報告は、少子化対策と医療を柱に構成されており、医療分野では、後期高齢者の自己負担2割への引き上げのほか、受診時定額負担の拡大、医療提供体制の改革を盛り込んだ。

受診時定額負担の拡大は、大病院への患者集中を是正しかかりつけ医機能を強化するために実施し、対象病院と額を増やす。

現在、特定機能病院と一般病床200床以上の地域医療支援病院に紹介状なしで外来受診した患者から初診で5000円以上(再診2500円以上)の定額負担の徴収を義務化しているが、対象病院を広げて「紹介患者への外来を基本とする医療機関」のうち一般病床200床以上の病院も加える。

さらに、外来機能分化の実効性がより上がるよう、これら定額負担徴収義務化の病院の初・再診に際し保険給付の範囲から一定額(初診で2000円程度)を控除し、これと同額以上の新たな定額負担を追加して患者負担に上乗せする。追加の定額負担の導入は、現行の定額負担の仕組みと同様に選定療養の枠組みを活用する。

医療提供体制の改革は、かかりつけ医機能の強化とともに、外来機能の明確化・連携を図る観点から、「医療資源を多く活用する外来」に着目して、医療機関が都道府県に外来機能を報告する制度を創設する。そのなかで、地域の実情に応じて、紹介患者への外来を基本とする医療機関を明確にするとした。

少子化対策については、不妊治療について2022年度当初から保険適用を開始する方針を示した。

最終報告の結びでは、現役世代への給付が少なく、給付は高齢者中心、負担は現役世代中心というこれまでの社会保障の構造を見直し、「全ての世代が公平に支え合う全世代型社会保障の考え方は、今後とも社会保障改革の基本であるべき」との認識を示し、さらなる改革を推進するとした。

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