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健保ニュース 2019年4月下旬号

健保連大阪連合会
あしたの健保組合考える大会
自民・とかしき氏交えシンポジウム

健保連大阪連合会(小笹定典会長)は15日、大阪市のホテルモントレ大阪で、「あしたの健保組合を考える大会PART4」を開催し、有識者の基調講演に続き、自民党元厚生労働部会長のとかしきなおみ衆院議員と健保連の河本滋史常務理事によるシンポジウムを実施した。大阪をはじめ近畿地区の健保組合関係者約240人が参集した。

小笹会長は冒頭のあいさつで、高齢者医療拠出金の増大に伴う健保組合財政の窮状に触れ、「現役世代の負担にも限界がある」と指摘。こうした状況を打開するため、「高齢者医療費の負担構造改革を実現すべく私たちの主張を広く一般の方々に粘り強く訴えていかなければならない」と述べたうえで、健保組合の意思結集を図り、健保連本部と連携して主張実現活動を強化していく必要性を強調した。

シンポジウムは、日本総合研究所主席研究員の西沢和彦氏が司会進行を務め、健保組合の置かれている現状や制度改革に向けた展望などをテーマに討議した。

河本常務理事は、健保組合の取り巻く状況について、団塊の世代が後期高齢者入りする2022年から拠出金負担が急増し、健保組合財政の危機が深刻化すると指摘し、目前に迫る「2022年危機」を回避するために高齢者医療費の負担構造改革を急ぐべきと主張した。

健保連の直近の試算で、義務的経費に占める拠出金負担割合が50%以上の組合は2019年度で全組合の17.4%だが、2022年度に52.7%と半数超に増大する状態を示し、「公的保険制度は給付と負担のバランスが極めて重要と考えるが、(拠出金負担割合が)50%を超える状態は本当に保険と言えるのか」と強い疑問を呈した。

高齢者数がピークを迎える2040年を展望した改革の必要性を厚生労働省などは強調するが、「健保組合の立場で言えば、そこ(2040年)までもつ健保組合がどれくらいあるのかという強い危機感を抱いている」との認識を示し、来年6月に策定される政府の骨太方針2020に負担構造改革が反映されるよう、健保連の組織を挙げて全力で対応する考えを示した。

とかしき氏は、人生100年時代に対応する社会保障制度を構築する必要性を指摘し、党内で改革の提言を検討中と説明した。

改革の方向性については、これまでの手法の給付減、負担拡大のみでは「国民のなかから閉塞感が出てくる」とし、就労を阻害している要因を取り除くなどして、支える側と支えられる側のバランスを回復する、「リバランス」に着目した制度設計を基本とする考えを示した。近く提言をまとめ、今年の骨太方針2019に反映させ、具体化していくと述べた。

医療保険制度の具体的な課題は後期高齢者の窓口負担のあり方、外来受診時の定額負担や薬剤自己負担の導入などを指摘した。

社会保障財源を賄うための消費税率については、「10%では足りない。これから上がる可能性はある」との認識を示し、将来世代に負担を先送りしないよう、「私たち政治家は消費税をきちんと上げていくことに対し勇気をもって説明する心構えが問われている」と述べた。

会場から意見
健保組合は存続の危機
「2022年危機」訴える

その後、会場から健保組合関係者が意見を述べた。

政府・与党が標榜する全世代型社会保障への改革、2040年問題を見据えた改革のいずれも「健保組合が存続し続けていることを前提に絵を描いているように思われる」と訝り、「健保組合は拠出金の負担増で存続の危機に直面している。まだまだ大丈夫だと思われているうちに、健保組合が存続できない状態になりかねない。悠長なことは言っていられないので、われわれは『2022年危機』を訴えている」と主張した。

とかしき氏は「われわれは全世代型社会保障改革に積極的に取り組もうとしている。2022年以降、団塊世代が75歳に入ってくるので、それまでの間にある程度の方向性を決めないと大変なことになるという認識の下、党として急いで議論している」と応答した。

このほかの意見では、高齢者医療費が増大するなかで「終末期の医療費も私たち現役世代とは切り離せない問題となっている」と指摘した。

河本常務理事は、健保連としても終末期医療のあり方を重視しているとし、▽生前に自身、家族が望む終末期医療について合意形成できる体制を構築する▽終末期医療への意思表示を書面に示すリビング・ウィルを徹底する─などを推進する必要があると述べた。

なお、シンポジウムに参加予定だった自民党の長尾敬衆院議員は国会対応のため急きょ出席できなくなり、大会にメッセージを寄せた。長尾氏は「平素より大阪府民の健康と命を守る最前線での取り組み、細やかな情報共有でのより良き制度実現に向けての提言」など健保組合関係者の取り組みに敬意を表した。

西沢氏が基調講演
ポスト一体改革へ
保険料流用避けるべき

シンポジウムに先立ち、日本総合研究所主席研究員の西沢氏が「消費増税後の社会保障はどうなる!その時、健保組合は?」をテーマに基調講演した。

消費税率10%への引き上げ後のポスト社会保障・税一体改革を展望し、高齢化に伴う社会保障費の増大を考慮すると、消費税率を欧州並みの20%程度に引き上げる必要性を指摘した。

ポスト一体改革に向けては、「保険者の復権」を掲げる必要があると述べた。10%時の一体改革の社会保障財源をめぐる政府部内の認識について、「社会保険料、健康保険料を第2の税のように捉えている」としたうえで、「こうしたことは次の一体改革で絶対ストップしなければいけない」と述べた。

具体例として、30年度からの国保の都道府県化に伴う財政基盤強化策3400億円のうち、半額分の財源は後期高齢者支援金の全面総報酬割で不要となる国費を充てることになったと指摘。総報酬割を導入して、協会けんぽの国庫補助を削減し、その分を健保組合等の保険料負担に肩代わりさせたと説明し、背景に痛税感のある税よりも健康保険料から財源を調達する方が政府としてやり易い手法とみた。

こうした経緯を踏まえ、「社会保険料は負担と受益の対応を旨とする財源だったが、これが崩れてしまった」とし、「ポスト一体改革を見据えると、税の代替として社会保険料を流用することは避けなければならない」と強調した。

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