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健保ニュース 2019年4月下旬号

自民党厚労部会のPTが提言・中間報告
新時代の改革方針を描く

自民党の厚生労働部会(小泉進次郎部会長)は18日、鴨下一郎社会保障制度調査会長を座長とする「全世代型社会保障改革ビジョン検討プロジェクトチーム」の政策提言と、田村憲久元厚労相を座長とする「厚生労働行政の効率化に関する国民起点プロジェクトチーム」の中間報告を了承した。政策提言は、「令和時代の7つの改革」として▽勤労者皆社会保険▽人生100年型年金制度▽雇用制度改革▽医療・介護の提供体制改革▽健康づくりの抜本強化▽子育て支援▽厚労行政改革─を打ち出した。党内の人生100年時代戦略本部に報告し、政府が夏に決定する今年の骨太方針への反映をめざす。厚労行政に関する中間報告には、特定健診・保健指導やがん検診の受診率を向上させる施策などを盛り込んだ。

個人の選択を支える仕組み構築

政策提言は「新時代の社会保障改革ビジョン」と題し、長寿化と人口減少を踏まえた基本的な考え方として、「給付削減(第1の道)か、負担拡大(第2の道)かという発想とともに、社会保障改革の第3の道(リバランス)を進めるという発想が必要」と指摘した。就労を阻害するあらゆる要因を撤廃し、「働いても損をしない仕組み」へと転換することで経済社会の担い手を増やして、「支える側」と「支えられる側」の均衡を回復しながら、「受益と負担のバランスを着実に正していくことで、社会保障制度、さらには経済社会全体の持続可能性を高めることを目指す」と宣言した。

改革の視点には、「発想、年齢、制度の3つの壁の打破」を掲げた。このうち発想の壁は、60歳定年の後に80歳まで生きる昭和の標準と言える「20年学び、40年働き、20年の老後」を代表とする概念だ。「社会保障制度も、こうしたモデルを前提に、国民皆保険・皆年金を整備してきた」とし、これが戦後日本では経済発展の原動力となったが、経済社会環境の構造的な変化や個人の生き方・働き方が多様化するなかで、「社会保障制度もその変化に対応し、進化する必要がある」と論じた。

年齢の壁は、現役世代や高齢者などの区分けを指し、「年齢を基準として社会保障の給付・負担等を決める制度が多く、その結果、高齢者の就労意欲が削がれ、活躍の幅を狭めることにもつながっている」と問題提起した。今後は「エイジフリーで活躍できる環境」と「現役世代の抱える様々な課題を適切にカバーする仕組み」を念頭に、「年齢ではなく負担能力(所得と資産)によって負担割合を決める範囲を拡大すべきである」と表明した。

制度の壁は、戦後日本で一般的だった「1本道のレールを走り抜く生き方」を想定して設計された社会保障で、これが維持されている現状を「財政の持続可能性に影響するだけでなく、1人ひとりの多様化した生き方からもズレが生じている」と分析した。そこで、「レールからの解放」によって「選択を支える社会保障」をめざす。多くの制度が縦割りで乱立する弊害にも着目し、「政策分野の壁を越えた、1人1人の国民のニーズに寄り添う身近なコンシェルジュ的な機能や、より複合的なサービス提供体制の整備も検討すべきである」とした。

賃金労働者は全員社会保険

柱となる改革には、まず「勤労者皆社会保険の実現」を位置づけた。被用者保険制度について、現行は「主に正規雇用向けのセーフティーネットとして設計されており、短時間労働や兼業・副業、フリーランスなど、多様な働き方に対して十分に対応できていない」とし、企業で働く者が雇用形態を問わず社会保険に加入できる仕組みを求めた。

留意点として「例えば、所得の低い勤労者の保険料を軽減しつつ、事業主負担を維持する制度を導入することで、就職氷河期世代を中心に、働く現役世代に対するセーフティーネットを強化すべき」とした。中小企業などの事業主負担の増大に配慮し、「経営に悪影響が生じることのないよう、激変緩和措置を検討すべき」とも注文した。

医療・介護の提供体制については、これまで「ともすると供給者目線・内輪の論理に陥りがちであった」とし、「国民目線で徹底的に効率化を進め、無駄を削減する」との認識を示した。

医療提供体制の見直しでは、病床の機能分化・連携、かかりつけ薬剤師・薬局、個人が自らのデータをもとに健康管理するデータヘルス、重複診療・多剤投与・残薬の削減、地域包括ケアシステムや地域共生社会の構築などを課題にあげた。かかりつけ医の普及が医師偏在問題への対応だけでなく、国民起点の医療や福祉として重要であることも指摘した。高額薬剤による医療費増加を抑制する観点からは、薬価制度改革を進めるとともに、小さなリスクには自助で対応して一般用医薬品が拡大するように、薬事、保険、税の政策全般にわたる本格的な取り組みを提案した。

健康づくりに関しては、「人生100年時代の安心の基盤」と捉えて支援を抜本的に強化する方向性を提示した。個人の自由な行動を前提として、やむを得ないリスクを支え合うために、健康的な活動を強制することにならいように気を配り、社会全体で予防・健康インセンティブの強化が必要なことを丁寧に説明することを重視した。個人のインセンティブでは、「ヘルスケア・ポイント制度」の導入を全国に広げるなどして、公的保険制度の枠内外で個人の自助努力を評価する。予防・健康づくりサービスや個人の健康投資に対する支援も進める。

保険者向けでは、「企業健保については、後期高齢者支援金の加減算制度を強化すべき」と明記し、「その際、生活習慣病リスク保有者の割合の増減等のアウトカム指標も勘案するととに、加減算の対象となる健保数を拡大すべき」とした。

企業に対しては、「健診100%社会の実現」に向けて、「保険者による健診等の実施率の公表や、健康スコアリング・レポートによる健診等の見える化を通じて、保険者や事業者による健診実施を促進すべき」とした。将来的には「事業主や保険者に従業員の健診実施をより厳しく求めるなど、事業主の健康管理を強化することを検討すべきである」とも主張した。

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