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健保ニュース 2026年6月中旬号

OTC類似薬の保険給付見直しなど
改正健保法が成立
衆参附帯決議 現役世代の保険料負担に配慮

OTC類似薬の保険給付の見直しなどを柱とする「健康保険法等の一部を改正する法律」が5月29日の参院本会議で、与党と国民民主党、参政党などの賛成多数で可決、成立した。立憲民主、公明、共産などの各党は反対した。前日に同法案を可決した参院厚生労働委員会は、19項目の附帯決議を採択した。衆院厚労委の附帯決議と同様、後期高齢者医療制度について、現役並み所得者の給付費に公費が投入されていないことも踏まえ、高齢者の窓口負担割合を検討する中で、「現役世代の保険料負担への配慮も含めた制度のあり方を検討し、所要の措置を講ずる」よう求めた。衆参両院の意思として、政府に必要な対策の検討を促す同じ文言が盛り込まれた。

健保法等改正案をめぐる国会審議では、今後の医療保険制度改革に向け、後期高齢者医療制度のあり方を問う発言も目立った。

窓口負担が3割となる現役並み所得者の医療給付費の財源は、後期高齢者の保険料1割、現役世代が負担する後期高齢者支援金9割の構成で賄われている。

仮に現行の仕組みのまま、現役並み所得者の範囲を拡大すると、現役世代の負担がかえって増大し、負担軽減につながらないといった指摘が与野党議員から上がった。

現役世代の保険料負担に配慮した制度設計の検討を促す今回の附帯決議は、こうした課題認識を反映したものとなっている。

自民、維新両党は昨年10月の連立政権合意書を踏まえた社会保障改革を協議中で、令和8年度中に具体的な制度設計を行うこととなっている。

医療保険制度改革では高齢者の窓口負担割合のあり方が主要な論点となる見込みで、その際、附帯決議の文言にあるよう、現役世代の負担軽減も視野に入れた検討が深まるのか注目される。

29日に成立した改正健保法の主な内容は、▽OTC類似薬の保険給付の見直し▽後期高齢者の保険料算定と窓口負担割合の判定への金融所得の反映▽妊娠・出産に対する支援の強化▽高額療養費制度の考慮事項の明確化▽業務効率化、勤務環境改善に取り組む医療機関への支援▽協会けんぽへの国庫補助の特例減額措置の時限的な控除額の拡大──など。

OTC類似薬の保険給付の見直しは、一部保険外療養の仕組みを創設して対象医薬品に追加の自己負担(特別料金)を求める。特別料金は薬剤費の4分の1とする方向で、9年3月1日からの施行を目指す。

一部保険外療養の対象となるOTC類似薬は、77成分・約1100品目が予定されているが、子ども、がんや難病の患者、低所得者、入院患者、医師が対象医薬品の長期使用を医療上必要と考える患者については、「配慮が必要な者」として特別料金を求めないこととする。

厚労省は法案審議の過程で、追加負担を求めない子どもの範囲を「高校生年代まで」とする考えを示している。

また、医師の判断に基づき追加負担を求めない具体例として、抗がん剤の副作用への保湿剤の利用や、年間を通じて治療が必要なアトピー性皮膚炎などを挙げている。

要配慮者の具体的な範囲は、今後、有識者の検討会で詳細を詰め、その後、社会保障審議会医療保険部会や中央社会保険医療協議会の議論を経て決定する。

後期高齢者医療制度における金融所得の勘案は、上場株式の配当金などを保険料算定と窓口負担割合の判定に反映させる。

現在、株式の配当金などの金融所得は、確定申告をすると保険料と窓口負担割合の判定に反映されるが、源泉徴収のみで確定申告をしない場合は反映されず、確定申告の有無で負担が変わるケースがある。

こうした不公平を是正するため、金融機関などに対し、配当金などが記載された法定調書を後期高齢者医療広域連合へオンライン提出することを義務づける。法定調書は、金融所得を計算するための「法定調書データベース」(仮称)を介して、広域連合に提出される。

保険料と窓口負担割合への金融所得の反映は、改正法の公布後、4~5年程度かかると見込まれている。

実施までのスケジュールは、まず法定調書データベースの構築に2~3年程度の期間を要し、構築されてから金融機関が1~12月分の法定調書を提出。その翌年6月に市町村で所得を確定し、8月から保険料算定と窓口負担割合の判定に反映させる。

妊娠・出産に対する支援の強化は、出産育児一時金に代わる給付方式を導入し、国が正常分娩に係る費用について、全国一律の基本単価を設定する。保険者が基本単価の費用を分娩施設に直接支給(現物給付化)し、妊産婦に負担が生じないようにする。

正常分娩は公的保険が適用されず、現在、自由価格となっており、出産育児一時金(原則50万円)で賄えないケースもあるなど、施設によって妊産婦の負担が異なる。

正常分娩の基本単価は全国一律とするが、これに上乗せする形で、施設の体制や役割などを評価するための加算を設定する。

これとは別に、全ての妊産婦を対象に定額の現金給付を「出産時一時金」として支給する仕組みも設け、帝王切開など保険診療に伴う一部負担金などに充当することで、出産時の費用負担の軽減を図る。

基本単価の設定、現金給付の導入を含む妊娠・出産に対する支援強化は、改正法の公布後2年以内に施行し、基本単価は告示、出産時一時金の額は政令で定める。

これら出産に関する新たな給付方式の導入後も当面は、施設の選択により、現行の出産育児一時金の適用を受けることも認める。

高額療養費制度の考慮事項の明確化は、高額療養費の支給要件などを政令で定めるにあたって、特に長期療養者の家計への影響を考慮する規定を条文に追加した。

業務効率化、勤務環境改善に取り組む医療機関への支援は、都道府県の地域医療介護総合確保基金の対象に業務効率化、勤務環境改善を支援する新たな事業を設ける。

業務効率化、勤務環境改善に積極的かつ計画的に取り組む病院を厚生労働相が認定できる仕組みも設ける。

協会けんぽへの国庫補助の特例減額措置の時限的な控除額の拡大は、現在、準備金が新たに積み上がると、積み上がった分の国庫補助相当額(16.4%)を翌年度の国庫補助から減額する特例減額を実施しているが、これに加え、特例減額の控除額を8~10年度までの各年度約500億円拡大する。

協会けんぽの財政運営が健全に推移していることを踏まえた措置で、剰余金がプラスとなった平成22年度の翌23年度から26年度の間、現行の特例減額が行われていたと仮定して、追加の控除額1500億円を算出した。

「意義ある法律が成立」
上野厚労相

上野厚労相は29日、改正健保法の成立を受け、厚労省内で記者団の取材に応じた。

改正健保法について、▽必要な保険給付を適切に行う▽世代間や世代内の負担の公平を図る▽限られた財源、医療資源を効率的に活用する──ことが目的だとし、「医療制度は国民にとって大変重要な制度であり、これを持続可能なものとしていく観点からも意義ある法律が成立した」と述べた。

参院厚労委
高齢者の自己負担見直し「実施方法を含めて検討」
高市首相

高市首相は28日、健保法等改正案の採決に先立ち参院厚労委に出席した。

首相は、高齢者の窓口負担割合のあり方について、「個人の負担が過大なものとならないよう留意しながら、公平性にも配慮し、実施方法を含めて検討したい」と述べた。維新の猪瀬直樹氏への答弁。

猪瀬氏は、高額療養費制度に今年8月から年間上限の仕組みが新たに導入されることで、「高齢者の窓口負担を3割に引き上げる大きな支障がなくなった」との認識を示した。

その上で、平成26年4月以降新たに70歳に到達した人の窓口負担を2割とし、30年度まで段階的に70~74歳の人を原則2割とした過去の改正を引き合いに、新たに70歳の到達者から順次3割、75歳の到達者から順次2割を適用し、この1歳刻みの引き上げを続けることで75歳以上を3割とする「学年方式を経過措置として導入してはどうか」と提起した。

首相は、「個人単位で見ると窓口負担割合は増加しないというメリットがあるが、施行時に70歳に達しているかどうかという面に留意する必要がある」と指摘。これは、70歳到達者から順次3割を適用する場合、施行時点に70歳以上の人と負担割合が異なる状態が続くことを念頭に置いた発言とみられる。

健保法等改正案に対する参院審議は、13日に本会議で趣旨説明と質疑が行われ、14日に厚労委で審議入りし、19日に参考人の意見陳述、21日、26日、28日と対政府質疑が行われた。

この間、立憲民主、公明の両党は26日の参院厚労委に高額療養費制度の見直しを柱とする修正案を提出した。28日の質疑終局後に行われた採決は、政府提出の健保法等改正案を与野党の賛成多数で可決。立憲民主、公明両党提出の修正案を反対多数で否決した。附帯決議は共産、れいわ新選組を除く与野党の賛成多数で採択された。

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