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健保ニュース 2023年11月下旬号

医保部会が薬剤自己負担を議論
長期収載品 保険給付のあり方を見直し
使用を選定療養に位置づけ

社会保障審議会医療保険部会(田辺国明会長)は9日、政府の「骨太方針2023」に記載された「薬剤自己負担の見直し」をテーマに議論した。同テーマの議論は、9月29日以来、2度目となる。

前回会合では、厚生労働省が、「薬剤自己負担の見直し」に関する主な項目として、①薬剤定額一部負担②薬剤の種類に応じた自己負担の設定③市販品類似の医薬品の保険給付のあり方の見直し④長期収載品の保険給付のあり方の見直し─の4案を提示し、議論した。

この日の会合では、前回会合の議論を踏まえ、厚労省が項目④を中心として検討を進める対応を提案。研究開発型のビジネスモデルへの転換を促すとともに、後発医薬品のある「長期収載品」から後発品へのさらなる置換えを従来とは異なるアプローチで推進する観点から、長期収載品等の保険給付のあり方などを見直す方向性を示した。

具体的な論点として、(1)長期収載品の使用について選定療養として位置付け(2)医療上の必要性(薬剤変更リスク等を踏まえた医師による処方)(3)保険給付と選定療養の負担にかかる範囲(4)長期収載品にかかる現行の薬価上の措置(G1、G2、Z2)との関係(5)後発医薬品の安定供給との関係─を提示。

このうち、(3)は、後発品の薬価を超える部分は一律、全額自己負担となる、いわゆる「参照価格制度」との関係も論点とした。

健保連の佐野雅宏副会長は、「イノベーションと持続可能性の両立のために、長期収載品等の自己負担を含む保険給付のあり方の見直しは必要だ」と指摘したうえで、「持続可能性の観点から、市販品類似薬の保険給付のあり方の見直しも重要」と強調。項目③についても引き続き検討するよう求めた。

具体的な論点に対しては、「医師が先発品を指定する場合の理由として、患者の希望が最も多いことから、選定療養として位置づけることは妥当」との認識を示す一方、医療上の必要性に一定の配慮を求める観点から、「選定療養の除外要件を設定することは考えられる」と言及。

保険給付と選定療養の負担にかかる範囲については、「中医協で議論すべき事項」としたうえで、「必ずしも、後発品の薬価を超える部分を一律、全額自己負担とする必要はない」と発言した。

他方、現行の長期収載品における薬価引き下げルールは、今般の見直しに関わらず維持すべきと要求。

患者負担の見直しによる財源は、イノベーションと持続可能性の両方の観点から配分を考える必要があるとした。

横本美津子委員(日本経済団体連合会社会保障委員会医療・介護改革部会長)は、「薬剤自己負担のあり方について、今回の検討にとどまることなく、国民皆保険の持続可能性の確保とイノベーションの推進の両立を図る観点から、項目①~③に関しても、議論のテーブルに載せて見直していく必要がある」と要望した。

北川博康委員(全国健康保険協会理事長)は、項目④の検討を進めていくにあたって、「選定療養を活用することが現実的だと考える」と発言。対象となる医薬品については、「患者負担に配慮しながら、幅広くあてはめる方向で検討を進めていくべき」との見解を示した。

藤井隆太委員(日本商工会議所社会保障専門委員会委員)は、限りある医療資源を有効活用する観点から、セルフメディケーションの推進は不可欠だと強調。医師が患者への薬剤処方の内容を検討する際、OTC医薬品で代替できる場合は、処方薬でなくOTC薬を活用するよう医師から患者にアドバイスすることが重要と訴えた。

猪口雄二委員(日本医師会副会長)は、「医師の判断で患者に必要な医薬品が適切に選択できる仕組みとするなど、参照価格制度とは異なるものである必要があり、精緻な議論が求められる」と言及した。

中村さやか委員(上智大学経済学部教授)は、「患者が十分に理解したうえで、参照価格制度を進めていく対応が長期的なルールとして望ましい」と述べた。

厚労省は、年末の結論に向け、長期収載品における対象範囲や保険給付範囲の設定などの議論を進めていく意向を示した。

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