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健保ニュース 2023年6月中旬号

政府が医療DX推進へ「工程表」
支払基金 抜本改組へ検討と措置
受益者負担の対象も課題に

政府の「医療DX推進本部(本部長・岸田文雄首相)」は2日、具体的な施策内容と到達点を明記した「医療DXの推進に関する工程表」を取りまとめた。

医療DXに関する施策の業務を担う主体を定め、その施策を推進することにより、令和12年度を目途に、▽国民のさらなる健康増進▽切れ目なくより質の高い医療等の効率的な提供▽医療機関等の業務効率化▽システム人材等の有効活用▽医療情報の二次利用の環境整備─の実現をめざす。

具体的な施策として、①マイナンバーカードと健康保険証の一体化の加速等②全国医療情報プラットフォームの構築③電子カルテ情報の標準化等④診療報酬改定DX⑤医療DXの実施主体─を掲げた。

このうち、⑤は、社会保険診療報酬支払基金を医療DXに関するシステム開発・運用主体の母体とし、抜本的に改組する方針を示した。

絶えず進歩するloT技術やシステムの変化に対応して一元的な意思決定が可能な仕組みとするとともに、既存の取り組みを効果的に取り入れられるよう体制を構築する。

厚生労働省は、新たな会議体を設置し、具体的な組織のあり方や人員体制、受益者負担の観点を踏まえた公的支援を含む運用資金のあり方について速やかに検討に着手。社会保障審議会医療保険部会・医療部会の議論も経た後、関連法案の改正など必要な措置を講じる構えだ。

他方、受益者負担について厚労省は、「今後の議論になるが、オンライン資格確認や電子処方箋と異なり、コストメリットが明確でないので、保険者だけが負担するものではないと考えている」との認識を示した。

④は、6年度に医療機関等の各システム間の共通言語となるマスタおよびそれを活用した電子点数表を改善し、提供する。

診療報酬の算定と患者の窓口負担金計算を行うための全国統一の共通的な電子計算プログラムである共通算定モジュールの開発を進め、7年度にモデル事業を実施したうえで8年度から本格的に提供する方向性を示した。

これらの取り組みで医療機関等の間接コストや作業負担の軽減を図るとともに、診療報酬改定の施行時期後ろ倒しについて、中央社会保険医療協議会の議論を踏まえつつ、実施年度と施行時期を検討するとした。

②は、電子処方箋について、7年3月までにオンライン資格確認を導入した概ねすべての医療機関・薬局への導入をめざし必要な支援を行う。

また、5年度内にリフィル処方の機能拡充を実施するほか、6年度以降、院内処方への機能拡充や重複投薬等チェックの精度向上などに取り組むとした。

他方、電子カルテ情報を医療機関・薬局の間で共有するための電子カルテ情報共有サービス(仮称)は、5年度中に仕様の確定と調達を行い、システム開発に着手するとともに、6年度中に電子カルテ情報の標準化を実現した医療機関等から順次運用を開始する。

また、③は、3文書6情報の共有、対象範囲の拡大と併せ、標準規格に準拠したクラウドベースの電子カルテ(標準型電子カルテ)の整備を行う。

6年度中に開発に着手し、一部の医療機関での試行的実施をめざす。運用開始の時期は、診療報酬改定DXにおける共通算定モジュールとの連携を視野に検討。遅くとも12年には概ねすべての医療機関で必要な患者の医療情報を共有するための電子カルテの導入をめざす方針だ。

このほか、①は、6年秋の健康保険証廃止に向け、生活保護(医療扶助)でのオンライン資格確認を5年度中に導入する工程を示した。

「医療DXの推進に関する工程表」は、医療DXに関する施策が確実に推進されるよう、医療DX推進本部または医療DX推進本部幹事会で、進捗状況を定期的に確認し、デジタル技術の進歩の状況なども踏まえつつ、必要に応じて柔軟な見直しを行う等のフォローアップを実施。

関係府省は、引き続き相互に緊密な連携を取りながら、施策の見直し・改善を行い、取り組みを継続的に充実・強化していくとした。

岸田文雄首相は、「医療DXは、医療分野でのデジタル・トランスフォーメーションを通じたサービスの効率化や質の向上により、国民の保健医療の向上を図るなど、わが国の医療の将来を大きく切り拓いていくもの」と言及。

本日、取りまとめた「工程表」に沿って、PDCAを回しながら、医療界や産業界と一丸となり、医療DXの実現に向けて、引き続きしっかりと取り組むよう、関係大臣に指示した。

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