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健保ニュース 2023年4月上旬号

総価取引や調整幅2%規定
有識者検討会 薬価制度・薬価差の課題に

厚生労働省の「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」(座長・遠藤久夫学習院大学経済学部教授)は3月17日、会合を開き、医薬品の安定供給をテーマに議論した。

厚労省は、薬価制度や薬価差を起因とする課題として、医薬品の不合理な総価取引や一律に調整幅を2%に規定する薬価改定ルール等を論点として提示した。

医薬品は、薬価基準では診療報酬の一部として購入価格を公定する一方、自由な市場取引▽メーカーおよび卸売業者間の競争▽医療機関・薬局等のバイイングパワーの強さ─等によって公定価格よりも安く売買され、薬価差が生じる。

厚労省の調査では、医薬分業の進展に伴い、取り引き先が病院・診療所から薬局へ移行する過程で、薬局では薬価の平均乖離率が大きくなる一方、病院・診療所では低くなっていた。販売先別の薬価差の比較でも、薬局が占める割合が6割を超えている。さらに、後発品や長期収載品だけではなく、医療上の必要性が高い医薬品(最低薬価や安定確保医薬品)でも乖離率が大きいことがわかった。

厚労省は、複数の品目をまとめて一括価格で契約する「総価取引」により、医療上の必要性が高い医薬品についても、値引きの調整弁として利用されていると考察。背景には、大手薬局チェーンの増加、価格交渉代行を通した値引きが行われている実態がある。これらを踏まえ、メーカーや卸売業者の経営に悪影響を及ぼす要因となる過度な薬価差・不合理な取り引きに対する改善策を論点として示した。

あわせて、市場実勢価格と公定価格との乖離を埋めるために導入されている、品目ごとに加重平均した市場実勢価格に「調整幅(現行2%)」を上乗せした額を新たな公定価格とする薬価改定ルールのあり方について問題提起。

本来、調整幅は「配送効率の地域差等による価格のバラつきの調整機能」として位置づけられているが、近年、医薬品によって▽希少疾病用など配送場所が限定される▽汎用性が高く全国配送される▽グループ店舗の本部が一括購入する─等、制度導入時とは異なり、状況が多様化していると指摘。一律に調整幅を2%に規定する意義を論点として示した。

構成員からは、安定供給を基本とした抜本的な制度設計や薬局への対応の必要性が指摘された。香取照幸構成員(上智大学総合人間学部社会福祉学科教授)は、「本来は医薬品ごとにニーズも取引条件も異なる」と指摘し、「カテゴリー別の薬価基準や流通ルールを規定できれば、総価取引は起こらない」と述べた。

菅原琢磨構成員(法政大学経済学部教授)は、「地域差は把握可能なのに、調整幅の一律規定は妥当ではない」と言及し、「実態に合わせるべき」と主張した。

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