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健保ニュース 2023年3月中旬号

新型コロナ5類感染症移行へ
中医協が特例報酬のあり方議論
松本理事 廃止視野に限定対応を

中央社会保険医療協議会(小塩隆士会長)は1日、新型コロナウイルス感染症の診療報酬上の取扱いを議論した。5月8日から新型コロナウイルス感染症を5類に移行する政府方針を踏まえた対応で、現行の外来医療や入院医療に関する診療報酬上の特例措置のあり方を見直す。診療側は、現行の診療報酬の特例措置を継続するよう強く要望。健保連の松本真人理事は、「極めて限定的な対応とし、最終的に完全廃止をめざすべき」と言及した。政府は、3月上旬を目途に、診療報酬上の特例措置などの具体的な方針を示すこととしている。

政府の新型コロナウイルス感染症対策本部は令和5年1月27日、新型コロナウイルス感染症を5月8日から5類感染症に位置づける「新型コロナウイルス感染症法上の位置づけの変更等に関する対応方針」を決定した。

新型コロナウイルス感染症の2類感染症から5類感染症への移行に伴い、広く一般的な医療機関による対応への移行、外来や入院に関する診療報酬上の特例措置など各種対策・措置の段階的見直しについて、3月上旬を目途に具体的な方針を示すこととした。

診療報酬上の特例措置のうち外来は、▽感染予防策を講じたうえでのコロナ疑い患者に対する診療(院内トリアージ実施料300点)▽発熱外来における疑い患者への診療(初診時の上乗せ147点。5年3月まで)▽コロナ確定患者への対応(救急医療管理加算950点)▽重症化リスク高い患者への電話等初診料(147点。5年3月まで)─など。

入院は、▽重症患者への対応【特定集中治療室管理料等の3倍(8448~3万2634点)】▽中等症患者への対応【救急医療管理加算の4~6倍(3800~5700点)】▽感染予防を講じたうえでの診療【二類感染症患者入院診療加算1~4倍(250~1000点)】▽コロナ回復患者の転院受入の評価【二類感染症患者入院診療加算750点、30日目まではさらに1900点、その後90日目までは950点】─などの特例措置を講じている。

厚生労働省は、5年1月24日~2月3日に12病院と8診療所に実施した「コロナ診療の実態に関するヒアリング」から、外来医療について、「発熱外来の設備整備や発生届の簡略化により一部の業務が効率化している一方、空間分離または時間分離など必要な感染対策は継続し、そのための人員確保やPPEの使用を行っている」と整理。

また、「入院医療」についても、「重症化率低下や経験の蓄積、看護補助者による介入でコロナ発生当初から業務・人員配置が効率化される一方、入院患者の高齢化に伴い、介護・リハビリや退院支援に関する業務が増大している」とした。

他方、2年4月~4年6月診療分のDPCデータによると、新型コロナウイルス感染症で入院する患者は、4年1月以降、介護施設・福祉施設から入院する患者や65歳以上の患者が増加傾向となっていた。

また、新型コロナウイルス感染症の入院患者の多くが急性期一般病棟に入院。急性期一般病棟、地域一般病棟・療養病棟のいずれも、介護施設・福祉施設からの入院患者は在院日数が長く、同施設の入所者や高齢者は入棟時ADLスコアが低い傾向がみられた。

こうした現状を踏まえ、厚労省は、今後の診療報酬上の特例措置のあり方を論点として提案した。

診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、「今回、新型コロナウイルス感染症の類型が5類に変更されるが、感染対策の必要性は変わるものではないということを中医協の共通認識とすべき」と強調した。

そのうえで、今回調査の実態も参考に診療報酬上の適切な評価を行うよう要望。現在の診療報酬上の特例措置を継続するよう訴えた。

さらに、「これまで保健所や地方自治体が対応してきた入院調整や陽性患者のフォローアップ、療養指導は医療機関が担うこととなる」と述べ、新たな業務が発生する場合の財政支援も重視したほか、介護保険施設等における医療支援の充実や、中小病院が陽性患者の入院を引き受けられるような対策を講じる必要もあるとした。

健保連の松本真人理事は、「5類感染症への移行を1つの節目として、診療報酬上の特例措置についても平時の姿に戻していくことが中医協に求められている」との考えを示し、「一部の特例措置を残すとしても、極めて限定的な対応とし、最終的に完全廃止をめざすべき」と言及した。

5類感染症への類型見直しに伴い生じる担当患者への療養指導や入院調整は「医療機関の本来業務である」と応じ、軽症患者の増加も踏まえ、外来医療における「救急医療管理加算」の特例も見直すべきと主張。

入院医療におけるコロナ回復患者の転院受入の評価については、「既に感染力のない患者を受け入れていることを考えると、5類感染症への類型変更後は確実に縮小すべき」と述べ、算定点数・日数は極力減らすべきとの認識を示した。

このほか、初診からの電話や通信情報機器を用いた診療の特例措置は、「医療の質の観点で極めて問題がある」と指摘し、オンライン診療・服薬指導の健全な普及に向けて、即時廃止を求めた。

支払側の安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)は、松本理事の意見に賛同したうえで、「直近のデータにもとづく議論を積み重ねることにより、ウィズコロナに向けた診療報酬体系への移行を進めていくべき」との見解を示した。

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