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健保ニュース 2023年3月中旬号

医療保険部会が保険証一体化を議論
佐野副会長 課題、工程の整理を要請
健保の事務・費用負担に配慮を

社会保障審議会医療保険部会(部会長・田辺国昭国立社会保障・人口問題研究所所長)は2月24日、▽マイナンバーカードと健康保険証の一体化▽今通常国会に提出された健保法等改正案─について議論した。健保連の佐野雅宏副会長は、マイナンバーカードと保険証の一体化に向け、国民・患者が医療の質向上を実感できるための検討や、課題とスケジュールの整理を要請。健保組合の事務・費用負担への配慮も求めた。他方、法案に盛り込まれた「かかりつけ医機能が発揮される制度整備」については、多くの国民・患者が「かかりつけ医」を選択、利用できる環境が整うことに期待を表明した。

マイナ・保険証一体化へ
資格確認書など議論

社保審医療保険部会では、厚生労働省から、政府の「マイナンバーカードと健康保険証の一体化に関する検討会」が2月17日に公表した「中間とりまとめ」を聴取した。

「中間とりまとめ」の概要は、▽マイナンバーカードによるオンライン資格確認を受けることができない場合の資格確認書の提供▽保険者の資格確認情報入力のタイムラグ等への対応▽マイナンバーカードの特急発行・交付の仕組みの創設─など。

また、「中間とりまとめ」と合わせ、法令改正が予定される事項を含む制度整備の概要案が、厚労省から提示された。

それによると、資格確認書は、医療保険者がマイナンバーカードによりオンライン資格確認を受けることができない状況にある加入者からの求めに応じ、書面または電磁的方法により提供。保険者が必要と認める時は本人からの申請によらず資格確認書を交付できる経過措置も設けた。有効期間は、1年を限度に保険者が設定し、様式は国が定める。

発行済の保険証の有効期間は令和6年秋の保険証廃止後、▽廃止日から1年目の前日(7年秋)▽発行済保険証の有効期間─のいずれか先に到来する期日まで有効とみなす、最長1年間の経過措置を設ける。厚労省は、資格確認書の仕組みを整備するため、健康保険法など医療保険各法の改正を行う意向を示した。

佐野副会長は、マイナンバーカードと保険証を一体化することで、国民、患者が医療の質の向上を感じ取れるようなあり方の検討と、課題およびスケジュールの整理を要請した。

さらに、マイナンバーカードと保険証の一体化の円滑な実施には①国民がマイナンバーカードを取得する②事業主が加入者のマイナンバーを迅速かつ正確に届け出る③保険者が届出を迅速かつ正確に登録する─流れをきちんと組み立てることがポイントだと指摘した。

健保組合だけでなく、加入者および事業主を含めた関係者が連携して周到な準備を行う必要性に言及し、事業主における届け出の外部委託、健保組合における事務負担や費用負担に配慮を求め、「いかに実務を回すかが極めて重要」と強調した。

藤井隆太委員(日本商工会議所社会保障専門委員会委員)は、医療機関等における顔認証付きカードリーダーの申し込み数(2月19日現在21万施設)とオンライン資格確認システムの運用開始施設数(同11万施設)との乖離が依然として大きいことに懸念を示し、▽マイナンバーカードの取得と保険証との一体化▽オンライン資格確認システムの現場実装─の両輪が加速するよう取り組みの強化を求めた。

井深陽子委員(慶應義塾大学経済学部教授)は、保険証の廃止後、マイナンバーカードで受診することが基本になることを踏まえ、資格確認書の発行、運用にかかる事務負担やコストの軽減を訴えた。

健保法等改正案
概要を聴取

また、この日の会合では、政府が2月10日に閣議決定し即日国会へ提出した「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案」について、厚労省から報告があった。

同法案は▽出産育児一時金にかかる後期高齢者医療制度からの支援金の導入▽後期高齢者医療制度における後期高齢者負担率の見直し▽前期高齢者財政調整制度における報酬調整の部分的導入▽かかりつけ医機能が発揮される制度整備─などの改正を内容とする。施行期日は、一部を除き令和6年4月。

佐野副会長は、法案が「全世代型社会保障の構築に向けた第1歩」との認識を示し、現役世代の負担軽減に向けた確実な実施を要請した。

さらに、法案に盛り込まれた「かかりつけ医機能が発揮される制度整備」について、高齢者だけでなく、可能な限り多くの国民、患者がそれぞれの希望やニーズに応じて、かかりつけ医機能を有する医療機関を選択し、利用できる環境が整うことへの期待を表明した。

新たに構築するかかりつけ医機能報告制度で、医療機関から報告を受け、情報提供を行う役割を担う都道府県に対しては、かかりつけ医機能の確認を確実に行い、国民、患者から信頼が得られる仕組みとするよう求めた。

そのうえで、「かかりつけ医の認定、登録の具体的な設計や合理的な診療報酬、負担のあり方といった課題がまだまだ残されている」と主張し、医療の最適化、効率化や国民の健康増進、疾病予防に役立つ制度の実現に向けて、さらなる検討、取り組みを早期に進めるよう要請した。

また、村上陽子委員(日本労働組合総連合会副事務局長)の代理で出席した小林司参考人(日本労働組合総連合会総合政策局生活福祉局長)は、前期高齢者給付費の報酬調整について、「問題点の根本は高齢者医療制度のあり方にある」と指摘し、制度の抜本改革を議論する必要性を強調した。

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