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健保ニュース 2022年3月中旬号

4年度あはき療養費改定を議論
専門委員会 施術料の包括化検討へ

社会保障審議会医療保険部会のあん摩マッサージ指圧、はり・きゅう療養費検討専門委員会(座長・遠藤久夫学習院大学経済学部長)は2月22日、令和4年度のあはき療養費の改定について議論を開始した。このなかで、厚生労働省からあんまマッサージの施術料について包括化を進める提案があり、今後、議論を進めることになった。

マッサージおよび変形徒手矯正術の施術料については、「医師の同意書に基づき施術を行なった部位数に応じた報酬」となっているが、厚労省の調査によると、マッサージ(最大で5部位まで)では、全施術の50%以上が5部位の施術となっているほか、変形徒手矯正術(最大で4肢まで)でも、全施術の60%以上が4肢の施術となっている。

厚労省はこの日の専門委員会において「施術部位数に応じた報酬」によって施術部位数を多くする作用が働いている可能性と、患部の改善を目的に非麻痺側等の患部以外へも施術する場合もあることを理由に、医師の同意書は変更せず「施術部位数に応じた報酬」から必要な場合に患部とともに、非麻痺側の患部以外にも施術を行ないやすくする「包括料金」に移行することを提案。これにより療養費の適正化が図られるとともに、施術部位数によって患者負担が変わらないメリットがあると説明した。

この提案に対し、健保連の幸野庄司理事は、この日示された資料だけで判断することはできないと述べ、疾病別に分析するなどエビデンスにもとづいて、包括化の議論をすべきとの考えを示した。さらにあはき療養費の支給対象については、治療上必要として医師の同意書により指示された部位とすることが、厚労省の通知で規定されていることを踏まえ、包括化により同意書で指示されていない健康な部位までの施術を療養費に含め保険給付として支給することは、健康保険法の考えから逸脱しており、不適切な給付になると指摘した。

また厚労省が包括化のメリットとしてあげた療養費の適正化が図れるとした点についても、「支給基準にもとづき支給することで適正化が図れるのに、支給対象とならない部位まで含めた包括化が、療養費の適正化につながるのか」と疑問を呈し、包括化の導入については強く反対する姿勢を明らかにした。

このほか、①往療料の距離加算を廃止し、施術料等に振り替える②往療料の離島や中山間地等の地域に係る加算の創設、③同一日・同一建物での施術の場合の料金のあり方など─の論点が示され、施術料の包括化と合わせて検討することとなった。

治療用装具
既製品の基準価格が決定

またこの日、同部会の治療用装具療養費検討専門委員会が開催され、新たに加わる既製品装具を含めた既製品リスト・基準価格案が示され、了承された。

療養費の支給対象となる治療用装具はオーダーメイドが基本だが、疾病または負傷の状況により治療上必要なものと医師が判断した場合、既製品であっても保険者の判断により療養費を支給することが可能となっている。近年、既製品装具の申請が増加しているが、厚労省通知で定められた「購入基準」はオーダーメイドで装具を作製していることを前提に設定されているものであり、既製品装具の基準価格は設定されていない。そのため既製品装具の請求額はオーダーメイド装具の購入基準と同等となっている現状があり、既製品装具のリスト化とともに既製品装具の適正な基準価格の設定についても検討がされていた。

そのため厚労省では平成30年から専門委員会内に設置されたワーキンググループで既製品装具のリスト収載と基準価格の設定について検討を行っていた。その結果、今回、新たに既製品27製品が追加対象となる報告が行われ、これによりリスト化された既製品の治療用装具は47製品となった。また既製品の基準価格の設定案についても了承された。あわせて同委員会では治療用装具療養費の更なる適正化を図るため、今後、ワーキンググループにおいて治療用装具療養費留意事項等通知の案について検討を行い、専門委員会に報告する案が示され、これについても了承された。

健保連の幸野理事は、オーダーメイドの治療用装具についても高額な申請が行われている現状があるため今後、オーダーメイド装具の適正な作製価格について専門委員会で検討するよう要望した。

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