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健保ニュース 2022年1月下旬号

中医協が4年度改定へ議論を整理
機能強化加算 診療実態踏まえ要件見直し
フォーミュラリの評価は再見送り

中央社会保険医療協議会(小塩隆士会長)は14日の総会で、令和4年度診療報酬改定の方向性を明示した「これまでの議論の整理」をまとめた。かかりつけ医機能の評価では、「機能強化加算」について、「診療実態を踏まえ要件を見直す」と明記。また、「リフィル処方箋」により処方を行った場合の「処方箋料」の要件や、湿布薬の処方枚数の上限を見直す対応も盛り込んだ。一方、支払側が訴えてきた「かかりつけ医関連の診療報酬体系の再構築」や「フォーミュラリの診療報酬上の評価」は見送られ、健保連の松本真人理事は、「次に向けた重要な宿題として残っている」と指摘した。

急性期入院の評価項目
入院料のあり方を見直し

中医協が14日にまとめた「令和4年度診療報酬改定にかかるこれまでの議論の整理」は、社会保障審議会の医療保険部会・医療部会が昨年12月10日に策定した「基本方針」に沿って現時点における個別項目の方向性を示した、4年度改定の「骨子」の位置づけとなる。

「議論の整理」をもとに中医協で2月上旬を目途に個別項目の改定論議を進め、必要な変更を加える。

他方、同日付で中医協に対し、昨年末の予算編成過程で決定された改定率と、「基本方針」にもとづき診療報酬点数の改定案を作成するよう後藤茂之厚生労働相から諮問が行われたことを受け、医療現場や国民の意見を踏まえる観点から1月21日まで「議論の整理」に対するパブリックコメントを募集する。

「議論の整理」は、「基本方針」の①新型コロナウイルス感染症等にも対応できる効率的・効果的で質の高い医療提供体制の構築②安心・安全で質の高い医療の実現のための医師等の働き方改革等の推進③患者・国民にとって身近であって、安心・安全で質の高い医療の実現④効率化・適正化を通じた制度の安定性・持続可能性の向上─の項目に即し作成。

重点課題に位置づけられた①のうち、入院医療は急性期の必要性に応じ適切な評価を行う観点から、一般病棟用の「重症度、医療・看護必要度」について、「必要度」の判定にかかる評価項目と入院料の評価のあり方を見直す。

また、「必要度」の測定にかかる負担軽減および測定の適正化をさらに推進する観点から、「必要度Ⅱ」を用いることを要件化する対象を「急性期一般入院料1」を算定する許可病床数200床(現行400床)以上の病棟まで拡大する。

他方、▽地域包括ケア病棟入院料の要件と評価▽回復期リハビリテーション病棟入院料の評価─のあり方に加え、療養病棟入院基本料の経過措置の取扱いを見直すと明記した。

外来医療は、外来機能の明確化および医療機関間の連携を推進する観点から、紹介状なしで受診した患者等から定額負担を徴収する責務がある医療機関の対象範囲と、対象患者の診療にかかる保険給付範囲・定額負担額を見直す。

医療資源を重点的に活用する外来を地域で基幹的に担う「紹介受診重点医療機関」で、入院機能の強化や勤務医の外来負担の軽減等が推進され入院医療の質が向上することを踏まえ、新たな評価を行うとした。

他方、地域で「かかりつけ医機能」を担う医療機関の体制について、診療実態も踏まえた適切な評価を行う観点から、「機能強化加算」の要件を見直す。支払側が訴えてきた「かかりつけ医関連の診療報酬体系の再構築」は盛り込まれなかった。

看護職員の処遇改善は
諮問・答申を別途実施

同じく重点課題とされた②は、地域医療の確保を図り、医師の働き方改革を実効的に進める観点から、令和2年度改定で新設した「地域医療体制確保加算」の対象医療機関を追加するとともに、要件と評価を見直す。

また、勤務医の働き方改革を推進し、質の高い医療を提供する観点から、「医師事務作業補助体制加算」の要件と評価を見直すとした。

4年10月以降、収入を3%程度(月額平均1万2000円相当)引き上げるための診療報酬上の仕組みを創設するとされている「看護職員の処遇改善」については、「別途、諮問・答申を行う」と明記。

厚労省は、今年2月から9月まで対応する補助金の状況も踏まえつつ、10月施行に間に合うようなスケジュールで改定論議を進めていく意向を示した。

③は、医療におけるICTの利活用・デジタル化への対応として、「オンライン診療の適切な実施に関する指針」の見直しを踏まえ、情報通信機器を用いた場合の初診を新たに評価。

また、新型コロナウイルス感染症にかかる特例的な措置における実態も踏まえ、情報通信機器を用いた場合の再診・医学管理の要件と評価を見直す。

他方、オンライン資格確認システムの活用により、診断および治療の質向上を図る観点から、新たな評価を行うと明記。

一般不妊治療、生殖補助医療、男性不妊治療にかかる医療技術等について新たな評価を行う対応も盛り込まれた。

救急医療の充実に向けては、「救急医療管理加算」について、対象患者の状態を見直すとともに、診療報酬明細書に記載を求める内容を見直す。

薬局・薬剤師業務の評価体系は、これまで「調剤料」として評価されていた薬剤調製や取り揃え監査、処方内容の薬学的分析、調剤設計にかかる業務の評価を新設する。

湿布処方上限やリフィル
処方箋料の要件を見直し

④は、後発医薬品のさらなる使用促進を図る観点から、後発品の調剤割合が低い薬局に対する減算の要件と評価を見直す。

医薬品の適正使用推進に向けては、薬剤給付適正化の観点から、「湿布薬を処方する場合に処方箋に理由を記載することなく処方ができる枚数」の上限(現行70枚超)を見直すと明記。

昨年末の財務・厚労大臣折衝で導入を合意した「リフィル処方箋」により処方を行った場合について、「処方箋料」の要件を見直す対応も盛り込んだ。

一方、一般的に「医療機関等で医学的妥当性や経済性等を踏まえて作成された医薬品の使用方針」を意味する「フォーミュラリ」の診療報酬上の評価については、2年度改定と同様、診療側等の反対により見送られた。

効率性に応じた薬局の評価は、「調剤基本料」について、同一グループ全体の処方箋受付回数が多い薬局と同一グループの店舗数が多い薬局の評価を見直す。また、いわゆる「敷地内薬局」に対する「特別調剤基本料」は、医薬品の備蓄の効率性等を考慮し評価を見直すとした。

健保連の松本真人理事は、「議論の整理」に明記されなかった▽かかりつけ医関連の診療報酬体系の再構築▽フォーミュラリ▽明細書の無料発行─について、「次に向けた重要な宿題として残っている」と指摘した。

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