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健保ニュース 2021年8月下旬号

柔道整復療養費
来年1月から明細書発行が義務化
不適切な患者は償還払いに変更可

厚生労働省は、6日に開催された社会保障審議会医療保険部会の柔道整復療養費検討専門委員会(座長・遠藤久夫学習院大学経済学部教授)に、柔道整復療養費の明細書発行の義務化を来年1月から導入する方針を示し、了承された。また複数の施術所で同じ部位の施術を受けている患者や患者照会しても回答しない患者など、不正が「疑われる」患者に対し受領委任払いから償還払いへ変更する方向性についても承認された。専門委員会の委員を務める健保連の幸野庄司理事は、今回承認された内容を見極めたうえで、今後の対応を決めたいと述べた。幸野理事は昨年4月の同専門委員会で、遅々として進まない受領委任制度における不正対策について、これ以上放置できないとの立場から、保険者裁量で償還払いを希望した健保組合を健保連として容認する方針を明らかにしていた。

今回、柔道整復療養費の適正化への取り組みとして、厚労省からは、①明細書の義務化②不適切な患者の償還払い③療養費を施術管理者に確実に支払うための仕組み─の3つが提案された。

①については、現在、受領委任規程において患者から求められた場合にのみ、施術費用の内訳が明記された明細書が発行されている。厚労省として明細書を患者に手交することは、施術業界の健全な発展のために必要であるとの考えを示し、来年からの明細書発行の義務化を求めた。

その一方で、施術所の事務負担に配慮し、明細書発行機能がない請求システムを導入している場合は、これまで通り患者の求めに応じて発行することとし、さらに請求システム自体を導入していない場合は、明細書の発行義務はないとするなど、医療機関における明細書発行の配慮措置と平仄を合わせる取り扱いとする。

②については、不適切な患者を「不正が明らかな患者」と「不正が疑われる患者」と位置づけ、自己施術や自家施術による請求のほか、「複数の施術所で同じ部位の施術を重複して受けている患者」、「保険者から繰り返し患者照会しても回答しない患者」、「施術が非常に長期にわたり、かつ、非常に頻度が高い患者」などを対象に償還払いの取り扱いに変更する方針。

あはき療養費については、令和3年7月から、長期・頻回患者に対する受領委任払いを償還払いに変更できる仕組みがすでに構築されている。今回、柔道整復療養費についても、償還払いとする患者の範囲や、受領委任払いから償還払いへ変更する事務手続きなどについて検討を進め、年明けからの実施をめざす。

③については、不正防止や事務の効率化・合理化の観点から、公的な関与の下に請求・審査・支払いが行われる仕組みを検討するとともに、オンライン請求、オンライン資格確認につながる仕組みの導入についても検討する。次期療養費改定が予定される令和4年6月までに方向性を定め、6年度中の導入をめざす。

現在、柔道整復療養費の受領委任払いは、施術師団体との協定によるものと個人の施術管理者との契約の2つに分かれている。このうち、個人の施術管理者から柔道整復療養費の請求を受託した業者・団体が請求金額を使い込み、施術管理者に振り込まれない事件が近年散見されている。このため、地方厚生局などの公的機関によるチェック機能を働かせ、こうした事態を防止する。

柔整償還払いへの変更
今後の取り組み状況によって対応を検討
健保連・幸野理事

柔道整復療養費については、受領委任払い制度を悪用した水増し請求や架空請求など不正行為は一向に収まらず、部位転がしによる長期頻回受療など問題のある患者も常態化していた。そのうえ、行政による指導監督が機能せず、不正対策を検討するための専門検討委員会は料金改定のためにしか開催されない状況が続いていた。

こうした状況を鑑み、健保連の幸野理事は、昨年4月22日の厚労省の検討専門委員会で、組合会の決議を経たうえで柔道整復療養費の受領委任協定への委任を解除し、償還払いに変更していくことを希望する健保組合が現れた場合、健保連としてはこれを容認し必要な手続を行っていくと通告していた。

この日の専門委員会で幸野理事は、今回決定された内容をもって、昨年4月の方針を降ろすまでには至っていないとしたものの、受領委任制度の改善案が提案されたことについては評価した。

そのうえで厚労省に対し、引き続き受領委任制度の抜本的改革について取り組むよう求めるとともに、健保連としては、今回決定された明細書の義務化や不適切な患者への償還払いの取り組み、さらには来年6月までに描かれる新たな受領委任制度の仕組みを見極めたうえで、対応するとの方針を改めて強調した。

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