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健保ニュース 2021年7月上旬号

佐野副会長が医療保険部会で意見
抜本改革へ総合的検討の早期開始を
附帯決議実現 健保組合財政支援を要望

社会保障審議会医療保険部会(部会長・田辺国昭国立社会保障・人口問題研究所所長)は6月25日、後期高齢者の2割自己負担導入を柱とする「全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律」(医療保険制度改革関連法)の成立や、今年の「骨太方針」「成長戦略実行計画」「規制改革実施計画」の政府3方針の閣議決定を受けて、意見交換した。被用者保険関係団体の代表委員は、改正法の成立を評価。健保連の佐野雅宏副会長は、財政状況が厳しい健保組合への財政支援の必要性などを指摘した参院厚生労働委員会での附帯決議に触れ、厚労省にその内容を尊重し、実現を図るよう強く要請した。また、将来世代が希望を持てる医療保険制度の抜本改革に向けて、改正法の附則に定められた総合的な検討を早期に開始すべきと主張した。

一定所得以上の後期高齢者の2割自己負担化や傷病手当金の支給期間の通算化、任意継続被保険者制度の見直しなどを内容とする医療保険制度改革関連法は、6月4日に原案どおり可決・成立、11日に公布された。改正の趣旨は、団塊世代が後期高齢者入りして拠出金負担が急増する2022年度を見据え、現役世代の負担増を緩和して全世代で広く安心を支えることを目的とする。

この日の医療保険部会では、健保連や経済界の代表委員が、来年度後半に実施する2割負担への引き上げについて、施行期日を政令で定めることとなっているが、後期高齢者支援金の負担増抑制の改正効果を十分に発揮させるためにも10月を念頭に早期導入の必要性を強調した。また、今回の改正を第一歩として、さらなる現役世代の負担軽減や医療保険制度の持続可能性の確保に向けて、次なる改革への早期検討を訴えた。

佐野副会長は、国会での法案審議を通じて、「既に限界にある現役世代の負担軽減の必要性、過重な拠出金負担に苦しむ健保組合の厳しい実情についての理解が進んできたことを実感している」との認識を示し、附帯決議に盛り込まれた高齢者医療制度の財源のあり方の検討や健保組合への財政支援などに取り組むとともに、医療保険制度の抜本改革に向けた総合的な検討に早期に着手すべきと主張した。

総合的な検討を進める際は、給付と負担のバランスや現役世代の負担上昇の抑制を図るという考え方にもとづき、▽現役並み所得の後期高齢者の対象拡大と公費投入のあり方の課題▽後期高齢者の保険料負担割合の見直し▽拠出金負担割合の上限設定▽前期高齢者納付金の不合理な調整方法の見直し─を検討すべきと提起した。

藤井隆太委員(日商社会保障専門委員会委員)は、次の改革に向けて、世代間の公平性の確保と現役世代の保険料負担の抑制を主眼に、後期高齢者の自己負担割合や対象基準の見直しを検討の俎上にのせるよう要望した。本多孝一委員(経団連社会保障委員会医療・介護改革部会長)は、増加し続ける現役世代の負担を適正化する必要性を強調した。

石上千博委員(連合副事務局長)は、2割負担導入について、年齢でなく支払能力に応じた負担への転換を進める観点から、「前向きに受け止めている」と評価する一方、受診抑制による健康悪化の可能性を懸念した。今後、自己負担引き上げの対象となる所得基準の妥当性や、外来受診の負担増を月最大3000円に抑える配慮措置(施行後3年間)の継続を検討すべきとした。

また、佐野副会長は、「骨太方針」に関連したテーマで「かかりつけ医機能」の推進を重視し、今回のコロナ禍の教訓も踏まえ、「国民が必要なときに必要な医療を受けられるためには、かかりつけ医をベースにした外来医療の機能分化・連携の強化が重要だ」と指摘。かかりつけ医に期待する役割として、「必要な時に専門医を紹介してくれる」「どんな病気もまずは診療してくれる」との声が保険者に多く寄せられているとして、国民が求める「かかりつけ医」の機能を明確にしたうえで、あるべき制度の枠組みを検討すべきと述べた。その際に、オンライン診療もかかりつけ医の機能のひとつに位置づけることを求めた。

新型コロナ患者の受け入れ医療機関の減収への経営上の支援については、「診療報酬や補助金・交付金による今後の対応のあり方を検討」との方向が「骨太方針」で示されたことに対して、診療報酬は診療行為の対価であるとの原則を踏まえ、「公費により対応すべき」と提案した。

さらに、保険給付範囲の見直しやフォーミュラリの推進、一定期間内に処方箋を反復利用できる方策(リフィル処方)にもしっかりと取り組むべきと強調した。

また、「出産費用の実態を踏まえた出産育児一時金の増額に向けた検討」では、「増額ありきの議論ではなく、データにもとづいた検討」の必要性を指摘した。

「生活保護受給者の国保および後期高齢者医療制度への加入を含めた医療扶助のあり方の検討」では、拠出金という形で被用者保険にも大きな影響を及ぼすテーマと位置づけ、「現役世代の負担がこれ以上増加することのないようにすべきだ」とクギを刺した。

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