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健保ニュース 2021年4月中旬号

後期2割導入など全世代対応型
健保法等改正案が衆院審議入り
菅首相 現役世代の負担上昇を抑制

全世代型社会保障改革の一環と位置づける「健康保険法等の一部改正案」(全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案)が8日、衆院本会議で田村憲久厚生労働相から趣旨説明を聴取、各党代表者が質問し審議入りした。政府提出の重要広範議案とされ、菅義偉首相出席のもと議論した。同改正案は、後期高齢者の患者窓口負担について現行の1割、3割に加え、新たに2割負担の区分を設け、現役世代の高齢者医療費に対する支援金の伸びを抑えることなどを柱としている。菅首相は、団塊の世代が後期高齢者に移行する来年以降を見据え、「すべての世代が安心できる社会保障制度の構築は待ったなしだ」としたうえで、改正案に盛り込んだ後期高齢者2割負担は、一定所得以上の後期高齢者に相応の応能負担を求めると同時に、現役世代の過重な負担を抑制するものとし、理解を求めた。また、今回の改正にとどまらず、引き続き持続可能な社会保障制度の確立を図るため、総合的な検討を進める考えも示した。

同改正案は、▽傷病手当金の支給期間の通算化▽任意継続被保険者制度の見直し▽育児休業中の社会保険料免除要件の見直し▽保健事業における健診情報等の活用促進─などを盛り込んでいる。

2割負担の導入時期は、令和4年10月1日~5年3月1日までの間、政令で定める日としている。対象は課税所得28万円以上かつ年収200万円以上(複数世帯は後期高齢者の年収合計320万円以上)の後期高齢者を予定し、所得基準も政令で定める。

この日の本会議を経て、同改正案は衆院厚生労働委員会に付託。厚労委は9日に田村厚労相から趣旨説明を聴取し、14日から実質的な審議に入った。なお、立憲民主党はコロナ禍においては後期高齢者の1割負担を維持し、高所得の高齢者の保険料負担の引き上げなどを求める対案を提出。厚労委は両案を並行し審議する。

8日の本会議では、趣旨説明の聴取に続き、自民党の武井俊輔氏、公明党の伊佐進一氏ら6氏が代表質問に立った。

武井氏は「人生100年時代を見据えた全世代型社会保障制度に向けて、給付は高齢者中心、負担は現役世代中心とする構造を見直す必要がある」「令和4年から団塊世代が75歳以上になっていくことにより、支援金の負担はさらに重くなることが予測される。若者の理解を得るためにも一定の所得のある後期高齢者の窓口負担を引き上げる必要がある」などと主張した。

伊佐氏は、今回の改正に続き、団塊世代のジュニアが高齢期を迎える2040年問題、さらに人口減少と高齢化が深刻化する2065年においても社会保障制度を持続可能なものとするよう、中長期の観点から抜本的な対応に取り組むことを求めた。

一方、立憲民主党の中島克仁氏は、政府案の2割負担導入に対し、「コロナ禍においては、これ以上、受診抑制を引き起こすような改正を実施すべきでない」と反論した。

菅首相は、団塊の世代が後期高齢者入りする局面を迎え、上昇を続けている現役世代の負担を抑制し、少しでも制度を支える側として活躍するよう負担能力のある高齢者には負担してもらう方向で改革を進める基本構想に言及。

また、将来にわたり希望の持てる日本とすることがわれわれの責務だと強調し、「世界に冠たる社会保障制度を引き継ぐための検討に取り組んでいく」と応答した。

2割負担が適用される所得基準については、40年間平均的な収入で厚生年金保険料を納めた人の年金支給額を超える水準で設定したと指摘。また、令和4年度後半を予定している2割負担導入と合わせて、施行後3年間は外来受診の自己負担増を最大月3000円に抑える配慮措置を講じる方針を示した。

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