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健保ニュース 2021年4月上旬号

審査支払機能のあり方で「報告書」
改革の方向性と工程を明示
河本常務理事 真の効率化を推進

厚生労働省の「審査支払機能の在り方に関する検討会」(菊池馨実座長)は3月29日、社会保険診療報酬支払基金と国民健康保険中央会、国民健康保険団体連合会の審査支払機能の整合的かつ効率的なあり方について方向性を明示した「報告書」と、その実現に向けた「工程表」を取りまとめた。令和2年度中に具体的工程を明らかにすることとされた「審査結果の不合理な差異の解消」と「システムの整合的かつ効率的な在り方」のほか、「オンライン請求の促進」について、医療保険事務全体の効率化を図るため、紙レセプトを極力減少させていく必要があると提言し、保険者や医療機関等の取り組みとスケジュールを示した。健保連の河本滋史常務理事は、「報告書」の方向性を確実に具体化し、医療保険全体の真の効率化を進めることで、国民の利益となることを期待した。

厚労省の「審査支払機能の在り方に関する検討会」は、令和2年3月に厚労省、支払基金、国保中央会が策定した「審査支払機関改革における今後の取組」と政府が2年7月に閣議決定した「規制改革実施計画」にもとづき2年9月に初会合を開催した。

支払基金と国保中央会、国保連の審査支払機能の整合的かつ効率的な在り方について、会合を重ね、具体的な方針・工程などの議論を行ってきた。

検討会では、「規制改革実施計画」で2年度中に具体的工程を明らかにすることとされている「審査結果の不合理な差異の解消」と「システムの整合的かつ効率的な在り方」に焦点を当て、支払基金と国保中央会・国保連による改革の検討を一体的に進めた。

医学的な判断としての「審査結果の不合理な差異の解消」に向けては、支払基金で約3万3000、国保連で約1万8000にのぼる都道府県の審査基準を、4年10月までに重複や整合性を整理し、6年4月までに審査基準を全国統一するための検討を一巡。統一完了までに要する期間は、4年10月までに改めて確定する方向性を示した。

支払基金で今年9月に導入予定の審査結果の差異を「見える化」する自動レポーティング機能は、コンピュータチェックで付せんが付かないレセプトも、保険者からの再審査請求や指摘のあった支部間差異などについて、優先順位を付けレポーティングの対象とし、差異の見える化を図る。

自動レポーティング機能で「見える化」された差異は、速やかにすべての差異の情報公開を行うとともに、差異解消のためのPDCAの状況や原因究明した結果を公表することとした。

さらに、支払基金と国保連間で整合的なコンピュータチェックを実現するため、支払基金が全国統一を行う3年9月から6年4月までの過程で、順次、両機関のチェックを統一する。

一方、「システムの整合的かつ効率的な在り方」については、より安価で高品質なシステムの共同利用を推進する必要があるとし、費用面も勘案しつつ、政府全体のデジタル化の推進とも歩調を合わせて取り組む方向性を示した。

システムの共同利用は、審査領域が8年4月、支払領域はデジタル庁との連携のもと、早急に費用対効果を含めた検証を行ったうえで、結論を出すと明記した。

「報告書」には、その他の重要事項として、▽オンライン請求の促進▽レセプト原本データの一元管理▽診療データの審査における活用▽在宅審査▽審査支払業務の平準化等─の5項目を盛り込んだ。

このうち、「オンライン請求の促進」は、社会全体としてデジタル化を進めているなかで、医療保険事務全体の効率化を図るためにも、紙レセプトを極力減少させていく必要があると提言。

医療機関等からの返戻再請求は、レセプト振替・分割サービスの開始時期に合わせ、3年10月からオンラインによる返戻のみとし、4年度中には、紙媒体で返戻されたレセプトにかかる再請求を除き、オンラインによるものとする。

保険者による再審査申出は、紙媒体で請求されたレセプトにかかる再審査申出を除き、3年10月から大規模保険者についてオンラインによるものとし、4年度中に全保険者に拡大するスケジュールとした。

他方、保険者や医療機関等の事務に混乱が生じることがないよう、4年度の早い段階でレセプト振替開始による資格過誤減少の状況やシステムへの影響を把握したうえで、4年度中の対応の実施時期や方法を判断する方向性を示した。

このほか、「レセプト原本データの一元管理」については、厚労省、支払基金、被用者保険の保険者による協議のなかで継続して検討を行うべきとした。

今後の対応は、同検討会が取りまとめた改革の方向性を踏まえ、厚労省、支払基金、国保中央会で速やかに工程表を策定し、改革の進捗をフォローアップしていく必要があると明記。進捗管理のフォローアップは政府の規制改革推進会議で行う。

さらに、国民の将来的なコスト負担軽減の観点からも、医療保険制度を取り巻く環境の変化や共同開発の進捗状況、最新の技術動向も踏まえ、「審査支払機能の不断の見直しを行うべき」と提言した。

健保連の河本滋史常務理事は、「報告書」の方向性を確実に具体化し、医療保険全体の真の効率化を進めることで、保険者、医療機関、審査支払機関はもとより、国民、患者の利益となることを強く期待した。

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