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健保ニュース 2021年3月下旬号

セルフメディケーション税制の対象
厚労省 追加候補に風邪など4症状群
有訴者数、医療費適正化に着眼

厚生労働省は10日に開かれた「セルフメディケーション推進に関する有識者検討会」(座長・菅原琢磨法政大学経済学部教授)で、腰痛や風邪の諸症状など4つの症状群に対応する市販薬をセルフメディケーション税制の対象に追加することを提案した。税制の対象範囲を拡大することと合わせて、医療費適正化効果が薄いと考えられるビタミン主薬製剤のメコバラビンなど現行税制の適用を受けている4成分を対象から除外する考えを示した。

新たに税制の対象とする症状群は、①腰痛、関節痛、肩こり②風邪の諸症状(熱・頭痛、咳や痰、喉の痛み等)③アレルギーの諸症状(鼻づまり・鼻汁、くしゃみ、かゆみ等)④胃腸の諸症状(胸やけ、胃痛、もたれむかつき、便秘等)。現行は医療用医薬品から転用されたスイッチОTCを税制の対象とするが、追加候補の①~④はスイッチОTC以外で、有訴者数の多さや医療費適正化効果が期待されるものとして取り上げられた。

また、今回の追加対象品は、消費者への分かりやすさの観点から、症状群単位で捉えたうえで、対応する複数の薬効群に紐づく有効成分を選定する方向だ。厚労省は今後、政府内の調整を経て、早ければ年度内に対象医薬品の成分を告示する予定。

セルフメディケーション税制は、スイッチOTC薬(要指導医薬品及び一般用医薬品のうち、医療用から転用された医薬品)の購入費うち、年10万円を限度に1万2000円を超える額を所得控除できる仕組み。

税制の適用は平成29年から令和3年末までの時限措置として実施されているが、昨年末の政府税制改正大綱で期限を4年1月から8年末まで5年延長し、税制のインセンティブ効果を強化するため、▽経過措置を講じたうえで、医療費適正化効果が薄いスイッチОTCを税制の対象から除外▽医療費適正化効果が高いものは、対象をスイッチОTC以外にも拡大(3薬効程度)─との方針が示された。

健保連の幸野庄司理事は、厚労省が提案した追加候補の4症状群を妥当としたうえで、「同じ症状であるにも関わらず、この薬効は認められるが、これと違うものは認められないとなると、余計に分かりにくくなる。安全性の観点から妥当でないものを対象から除くが、症状群に属する薬効群はすべて対象にしても良いのではないか」と指摘した。

一方、厚労省提案の対象から除外するものは、▽強心薬のユビデカレノン▽ビタミン主薬製剤のメコバラミン▽カルシウム主薬製剤のL─アスパラギン酸カルシウム▽歯科用剤(う蝕予防)のフッ化ナトリウム─の4成分。これら4成分の医薬品については、ОTC薬の品質保証期間(3年程度)と卸の流通在庫期間に鑑み、来年1月から7年末まで4年間、引き続き税制の対象とする経過措置期間を設ける。

また、厚労省は、4月以降の会合から議論する今後の検討事項の論点も提示した。論点は、医療費適正化効果の観点からのセルフメディケーション税制の効果検証と、税制以外の施策のあり方の2点。

幸野理事は、税制の効果検証について、税制適用の減税対象群と非対象群のレセプトを分析し、年間医療費を比較するなどの手法を提起した。

税制以外の施策では、スイッチОTCの拡大と合わせて、薬局、薬剤師の機能を高めることが重要と指摘し、ОTC薬の販売を調剤報酬の要件とすることも検討すべきと主張した。

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